丁度可知差異は,超難読です。
ちょうどかちさい
と読みます。
光や音などの刺激,重さなどの違いを感じ取ることができる最小の違いが,丁度可知差異といいます。
厳密に言えば異なるのかもしれませんが,弁別閾(べんべついき)とも言います。
例えば,紙の重さで,100グラムの紙の束に1枚加えても重さの違いを感じませんが,2枚,3枚と重ねていき,5枚加えたところで重さの違いを感じ取ることができたとします。1枚1グラムだとすれば,100グラムに対して,5グラムが丁度可知差異となります。
ところで,100グラムの場合,5グラムが丁度可知差異だとしたら,1キログラムの紙の場合の丁度可知差異は何グラムになると思いますか。
「重さと丁度可知差異は比例する」と考える「ヴェーバーの法則」によると,1キログラムの場合の丁度可知差異は,50グラムになります。
このヴェーバーは,社会学のM.ヴェーバーとは別人です。「ヴェーバーの法則」は社会福祉士の国家試験で出題されたことがありません。
さて,それでは今日の問題です。
第22回・問題8 感覚・知覚に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 口を閉じた状態で,眼球を軽く圧迫すると明るさの変化を感じるのは,眼球圧迫が視覚に対する適刺激だからである。
2 2つの刺激の明るさや大きさなどの物理的特性の違いを区別することができる最小差異を,刺激閾という。
3 朝,暗い部屋で目覚めたときに,カーテンを開けると非常にまぶしいが,しばらく経つと普通に見えるようになるのは,暗順応の働きである。
4 滝をじっと見つめていて,その後に他の風景に目を向けると上方向に動いていように見えるのは,視覚の体制化とよばれる現象である。
5 映画のフィルムは1コマごとの静止画像なのに,連続して提示すると動いて見るのは,仮現運動によるものである。
さすがにもう慣れてきたのではないでしょうか。
正解は,選択肢5です。
5 映画のフィルムは1コマごとの静止画像なのに,連続して提示すると動いて見るのは,仮現運動によるものである。
仮現運動は,この問題でわかるように,映画の原理です。
パソコンで映像のエンコードをしている人はなじみがあると思いますが,デジタルの映像データも実は仮現運動を応用したものです。
フレームレートと呼ばれる1秒間に何コマの画像で構成するかの単位があります。
コマ数が少なければ,動きがカクカクした映像になり,コマ数が多くなれば,動きがスムーズな映像になります。
コマ数が多くなれば,データが大きくなります。
デジタルの世界でも仮現運動が活用されているのがすごいと思います。
仮現運動ではありませんが,デジタルの世界では,MP3という音楽データも心理学を活用してデータを小さくしています。
それでは,ほかの選択肢の解説です。
2 2つの刺激の明るさや大きさなどの物理的特性の違いを区別することができる最小差異を,刺激閾という。
2つの刺激の明るさや大きさなどの物理的特性の違いを区別することができる最小差異は,今日のテーマである丁度可知差異であることがわかると思います。
それでは,刺激閾とは何だと思いますか。
刺激閾は,刺激を感じ取ることができる最小値です。
音の場合は,無音から徐々に音を大きくしていって,音を感じることができる値が刺激閾となります。
光の場合も,真っ暗の状態から光を徐々に強くしていって,光を感じることができる値が刺激閾となります。
丁度可知差異は,もともと刺激を感じていて,その刺激の変化を感じることができる最小値です。
丁度可知差異と刺激閾の違いがわかりましたか。
3 朝,暗い部屋で目覚めたときに,カーテンを開けると非常にまぶしいが,しばらく経つと普通に見えるようになるのは,暗順応の働きである。
まぶしいのに目が慣れるのは,明順応です。暗順応は暗さに目が慣れることです。
4 滝をじっと見つめていて,その後に他の風景に目を向けると上方向に動いていように見えるのは,視覚の体制化とよばれる現象である。
滝をじっと見つめていて,その後に他の風景に目を向けると上方向に動いていように見えるのは,運動残効の代表例である「滝の錯視」と呼ばれるものです。