心理学で脳を学ぶのは不思議な感じがするかもしれませんが,脳科学の研究はものすごく進化していて,今日では,さまざまな症状の原因が明らかになってきています。
社会福祉士の国家試験では出題されたことはまだありませんが,ニューロンなど脳の働きを学ぶのも心理学の領域に含まれます。
医学の領域にとても近いです。
今日の問題もそんなタイプです。
第29回・問題8 次の記述のうち,大脳の前頭葉の説明として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 計画,判断,評価,創造などの高次精神活動に関係する。
2 身体位置の空間的認識に関係する。
3 聞こえた音を識別する聴覚機能に関係する。
4 視覚と眼球運動に関係する。
5 情動調節や記憶形成に関係する。
大脳の構造は,医学概論でも出題されるので,確実に覚えておきたいです。
解答テクニック的なことを先に述べると,この問題は,医学概論ではなく,心理学理論で出題されています。
それを考えると,心理に関連するものを正解にするだろうということが予測されます。
この問題の中で,心理と直接的に関連すると考えられるのは,選択肢1と選択肢5でしょう。そうなると,選択肢2・3・4は,消去できそうです。
こういった目星をつけるのは高度かもしれませんが,国試当日に意識することができれば,得点力は確実に上がります。
それでは,解説です。
1 計画,判断,評価,創造などの高次精神活動に関係する。
前頭葉は,計画,判断,評価,創造などの高次精神活動に関係しています。
判断の中には理性も含まれ,前頭葉が障害されると人格変化を生じるのはそのためです。
2 身体位置の空間的認識に関係する。
身体位置の空間的認識に関係するのは,頭頂葉です。
今もあるかどうかは知りませんが,自動車の車庫入れなどの運転をサポートしてくれるシステムに,自動車を上から映し出すようなものがあります。
頭頂葉は,そのシステムに似ているように思います。
上から見ると,体全体のバランスをとりやすいというイメージです。
3 聞こえた音を識別する聴覚機能に関係する。
聴覚機能に関連するのは,側頭葉です。言語などにも関係しています。
前頭側頭型認知症では,前頭葉の障害によって,人格変化を生じ,側頭葉の障害によって,言語障害を生じます。
4 視覚と眼球運動に関係する。
視覚と眼球運動に関係するのは,後頭葉です。
これを見るたびに思うのは,目がプロジェクター,後頭葉がスクリーン,に似ていることです。
目に入ってきた情報をプロジェクターのように映像の情報を後頭葉に送り,後頭葉がスクリーンとなって映像を映し出すというイメージです。
目と正対しているのは後頭葉です。だから視覚に関係するのは後頭葉なのではないのかと思うのです。
側頭葉や頭頂葉に映像を映すとその映像はゆがんでしまいます。
5 情動調節や記憶形成に関係する。
情動調節や記憶形成に関係するのは,大脳辺縁系です。
大脳辺縁系にある偏桃体が情動調節に関係し,海馬が記憶に関係しています。
ちなみに情動は激しい感情のことです。