心理学が難しいと感じる人は多いようです。
その理由は,心理学という一つの学問にまとめられていますが,その領域は多岐にわたることもあるのかもしれません。
今回は,そのうちの社会心理学です。出題される内容はかなり限定的です。
広げると難しくなるためでしょう。
まずは,1問目です。
第22回・問題9 社会的な行動に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 緊急の援助を必要としている人がいる場面で,目撃者が多数いることによって援助の手が差し伸べられにくくなる現象をピグマリオン効果という。
2 教師が生徒に対して成績向上の期待をもつことによって,実際にその生徒の成績が向上していく現象を傍観者効果という。
3 周囲で見ている人がいると作業が早くなるなど,個人の作業成績が向上する現象を同調という。
4 集団の成員の多くが個人の利益を追求することで,集団全体として大きな不利の結果が生じることを社会的ジレンマという。
5 集団の多数派の意見や期待に影響されて,同じ意見や行動をとることを社会的促進という。
正解は,選択肢4です。
4 集団の成員の多くが個人の利益を追求することで,集団全体として大きな不利の結果が生じることを社会的ジレンマという。
さすがは,第22回国試問題だと思います。社会的ジレンマはこの後に幾度も出題されてきていますが,この出題によって今後の方向性を示したものとなっています。
社会的ジレンマの例としては
フリーライダー
共有地の悲劇
囚人のジレンマ
が出題されています。これらはまた別の機会に詳しく紹介したいと思います。
そのほかも解説します。
1 緊急の援助を必要としている人がいる場面で,目撃者が多数いることによって援助の手が差し伸べられにくくなる現象をピグマリオン効果という。
これは。傍観者効果のことを述べたものです。
2 教師が生徒に対して成績向上の期待をもつことによって,実際にその生徒の成績が向上していく現象を傍観者効果という。
これは,ピグマリオン効果のことを述べたものです。
3 周囲で見ている人がいると作業が早くなるなど,個人の作業成績が向上する現象を同調という。
これは,社会的促進のことを述べたものです。
作業の内容は,単純で慣れたものなら,より促進します。
5 集団の多数派の意見や期待に影響されて,同じ意見や行動をとることを社会的促進という。
これは,同調のことを述べたものです。
それでは2問目です。
第33回・問題10 社会的関係において生じる現象に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 初対面の人の職業によって,一定のイメージを抱いてしまうことを,同調という。
2 相手に能力があると期待すると,実際に期待どおりになっていくことを,ハロー効果という。
3 頻繁に接触する人に対して,好意を持ちやすくなることを,単純接触効果という。
4 外見が良いことによって,能力や性格など他の特性も高評価を下しやすくなることを,ピグマリオン効果という。
5 集団の多数の人が同じ意見を主張すると,自分の意見を多数派の意見に合わせて変えてしまうことを,ステレオタイプという。
正解は,選択肢3です。
3 頻繁に接触する人に対して,好意を持ちやすくなることを,単純接触効果という。
単純接触効果が出題されたのは,第20回以来です。
一般的な過去問では,うかがい知ることができないものです。
3年間の過去問を3回やれば合格できると豪語する人がいますが,近年の国家試験はそんなようにはつくられていません。
そんな勉強で合格できるなら,90点以上取れる人が3割程度に収まるということはないはずです。
それでは,このほかの選択肢も解説します。
1 初対面の人の職業によって,一定のイメージを抱いてしまうことを,同調という。
これは,ステレオタイプのことを述べたものです。
2 相手に能力があると期待すると,実際に期待どおりになっていくことを,ハロー効果という。
これは,ピグマリオン効果のことを述べたものです。
4 外見が良いことによって,能力や性格など他の特性も高評価を下しやすくなることを,ピグマリオン効果という。
これは,ハロー効果のことを述べたものです。
5 集団の多数の人が同じ意見を主張すると,自分の意見を多数派の意見に合わせて変えてしまうことを,ステレオタイプという。
これは,同調のことを述べたものです。
〈今日の一言〉
今日の問題でわかるかもしれませんが,この科目は,入れ替え問題が多い傾向にあります。
これらのようにすべてが入れ替えになっていれば,答えがわからなくても,どこか一か所でも攻めどころがあれば,正解にたどり着く可能性が高まります。
どれがどれに対応しているのかを追っていくと,どんどん消去できるからです。
入れ替えに気づく人と気づかない人では,おのずと確実性が変わります。