バーンアウト(燃え尽き症候群)は,1970年代にフロイデンバーガーによって提唱されました。
その後,マスラックが症状を測定する尺度(MBI)を開発しました。
それによると,バーンアウトの主症状は
情緒的消耗感(仕事を通じて,情緒的に力を出し尽くし,消耗してしまった状態)
個人的達成感の低下(「ヒューマンサービスの職務に関わる有能感,達成感が低下してしまった状態)
脱人格化(「クライエントに対する無情で,非人間的な対応)
だとされます。
バーンアウトの要因には,個人的要因と環境的要因があることが指摘されています。
個人的要因には,クライエントによりかかわろうとする姿勢があります。
ヒューマンサービスは,成果が見えづらいこともあるのかもしれません。
環境的要因には,過重労働などがあります。そのため,バーンアウトの防止には,組織ぐるみで取り組むことが求められます。
それでは,今日の問題です。
第32回・問題13 ストレス反応の1つであるバーンアウトの症状に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 理解と発話の両面での失語症状が生じる。
2 人を人と思わなくなる気持ちが生じる。
3 近時記憶の著しい低下が生じる。
4 視覚的な幻覚が頻繁に生じる。
5 他者との関係を強めようとする傾向が生じる。
ちょっと不思議な問題ですが,落ち着いて考えると,答えは見えます。
こういった問題は,レアケースを考えると訳がわからなくなります。
バーンアウトの症状が問われているわけですから,
「情緒的消耗感」(仕事を通じて,情緒的に力を出し尽くし,消耗してしまった状態)
「個人的達成感の低下」(「ヒューマンサービスの職務に関わる有能感,達成感が低下してしまった状態)
「脱人格化」(「クライエントに対する無情で,非人間的な対応)
にあたるものはどれかを考えることが必要です。
この3つのいずれかに当てはまりそうなのは,
2 人を人と思わなくなる気持ちが生じる。
です。これは脱人格化の症状です。
もう一問です。
第30回・問題13 バーンアウト(燃え尽き症候群)に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 対人援助職に生じることは少ない。
2 援助対象者一人ひとりの感情に配慮した行動をとりやすくなる。
3 極度の身体的疲労は示すが,情緒的問題は少ない。
4 個人の能力やスキル不足が主な原因であり,職場環境の影響は小さい。
5 仕事に対する個人的達成感の低下が生じる。
この問題は,第32回から比べると,問題のつくり方が下手すぎです。
バーンアウトの症状を詳しく知らなくても,答えを選べてしまうからです。
正解は,選択肢5です。
5 仕事に対する個人的達成感の低下が生じる。
個人的達成感の低下は,主症状の一つです。
ほかの選択肢は以下のとおりです。
1 対人援助職に生じることは少ない。
ヒューマンサービスにかかわる人がバーンアウトを生じやすいと言われています。
2 援助対象者一人ひとりの感情に配慮した行動をとりやすくなる。
バーンアウトでは,脱人格化を生じます。つまり援助対象者に配慮した行動ができなくなります。人を物のように感じるようになるからです。
3 極度の身体的疲労は示すが,情緒的問題は少ない。
バーンアウトでは,情緒的問題が起きます。
4 個人の能力やスキル不足が主な原因であり,職場環境の影響は小さい。
職場環境の影響が,環境的要因のことです。