精神疾患の診断基準には,DSMとICDがありますが,社会福祉士の国家試験の出題基準で示されているのは,DSMです。
アメリカ精神医学会が作成したDSMは,これまでに何度も改訂され,現在は第5版であるDSM-5が用いられています。
DSM-5では,「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」というように表記されていますが,スラッシュの前後は,同じものです。
現場では,どちらかを使います。
疾患はたくさんあって,ここ5年をみてもバラバラの出題であることもあり,何を勉強したらよいのかと思う人も多いように思います。
必ず覚えておきたいのは,
・統合失調症
・うつ病
・双極性障害
の3つです。
それでは,今日の問題です。
第27回・問題6 精神疾患の診断・統計マニュアルDSM-IVに基づく統合失調症の診断に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 妄想や幻覚は,陰性症状である。
2 まとまりのない会話あるいは発語は,症状の一つである。
3 症状は,発症から2週間で消失する。
4 仕事,対人関係,自己管理などの面での機能が低下することはない。
5 原因として,乱用薬物の摂取がある。
この問題は,まだDSM-5が出る前のDSM-Ⅳですが,過去問としてまだ使えます。
統合失調症は,次の症状が2つ以上あり,少なくともその症状が6か月以上持続していることで診断されます。
〈統合失調症の診断基準〉
・妄想 ・幻覚 ・まとまりのない発語 ・ひどくまとまりのない,または緊張病性の行動 ・陰性症状 |
正解は,選択肢2です。
2 まとまりのない会話あるいは発語は,症状の一つである。
それでは,これ以外を解説します。
1 妄想や幻覚は,陰性症状である。
統合失調症には,陽性症状と陰性症状があり,妄想や幻覚などは陽性症状です。
陰性症状は,意欲欠如などです。
3 症状は,発症から2週間で消失する。
統合失調症は,6か月以上症状が続くことで診断されます。
2週間で症状が消失することがないのは,勉強せずともおおよそわかるのではないでしょうか。
4 仕事,対人関係,自己管理などの面での機能が低下することはない。
これも勉強せずともおおよそわかるのではないでしょうか。
妄想などの陽性症状,意欲欠如などの陰性症状ともに社会面などにも影響します。
5 原因として,乱用薬物の摂取がある。
これも勉強せずともおおよそわかるのではないでしょうか。
乱用薬物の摂取でも幻覚を生じますが,それはまた別の精神疾患です。
もう1問です。
第30回・問題6 精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)において,「統合失調症」と診断するための5つの症状に含まれているものはどれか。正しいものを1つ選びなさい。
1 まとまりのない発語
2 観念奔逸
3 強迫行為
4 抑うつ気分
5 不眠または過眠
第27回の問題で出題されているように,正解は,選択肢1の「まとまりのない発語」です。
そのほかのものを整理します。
症状 |
主な疾患名 |
観念奔逸 |
双極性障害 |
強迫行為 |
強迫性障害 |
抑うつ気分 |
うつ病,双極性障害のうつ病エピソード |
不眠または過眠 |
うつ病,双極性障害のうつ病エピソード |
強迫行為とは,本人はその行為がムダだとわかっていてもやめられない症状です。
たとえば,手を洗い続ける,カギを閉めたか何度も確認することなどがあります。
治療には,薬剤に加えて,認知行動療法などが用いられます。