今回は,明順応と暗順応を取り上げます。
明順応は,目が明るさに慣れることをいいます。
暗いところから明るいところに行くと最初はまぶしくて何も見えませんが,徐々に目が慣れて見えてくるようになります。これが明順応です。
暗順応は,目が暗さに慣れることをいいます。
明るいところから暗いところに行くと最初は暗くて何も見えませんが,徐々に目が慣れて見えてくるようになります。これが暗順応です。
それでは,今日の問題です。
第24回・問題8 次の記述のうち,知覚の恒常性を説明する日常における事例として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 映画やテレビの動画,ネオンサインのように,視覚刺激の提示時間間隔に適度な時間差がある場合,両刺激は連続し動いているように見える。
2 左側に+,右側に黒色で塗りつぶした円の記号が措かれた用紙を,左目を閉じて右目で+の記号を見つめ,用紙を前後に動かすと,あるところで黒円が消失する。
3 暗闇で過ごす時間が長くなるにつれて瞳孔が拡大し,見える範囲が次第に狭まって,初め見えなかったものが見えるようになる。
4 渦巻き模様を右方向に回転すると模様全体が拡大するように見えるが,しばらく観察した後で渦巻きの回転を止めると,今までとは逆の方向の回転が見られる。
5 斜め上からコーヒーカップのふちを見たとき,その人の網膜像は楕円であるにもかかわらず,その人は「そのコーヒーカップのふちは円形をしている」と見る。
知覚の恒常性は,前回取り上げました。
知覚の恒常性には,いくつかの種類がありますが,社会福祉士の国家試験に出題されているのは,大きさの恒常性と形の恒常性です。
大きさの恒常性は,網膜に映るものの大きさが異なっても同じ大きさに知覚する現象です。
形の恒常性は,網膜に映る形が変わっても同じ形のものとして認知することです。
つまり正解は,選択肢5です。
5 斜め上からコーヒーカップのふちを見たとき,その人の網膜像は楕円であるにもかかわらず,その人は「そのコーヒーカップのふちは円形をしている」と見る。
これは,知覚の恒常性のうちの形の恒常性です。
それでは,ほかのものも解説します。
1 映画やテレビの動画,ネオンサインのように,視覚刺激の提示時間間隔に適度な時間差がある場合,両刺激は連続し動いているように見える。
本来は止まっているものが,動いて見えるのは,仮現運動です。
2 左側に+,右側に黒色で塗りつぶした円の記号が措かれた用紙を,左目を閉じて右目で+の記号を見つめ,用紙を前後に動かすと,あるところで黒円が消失する。
これは,この時しか出題されたことはありません。何のことを言っていると思いますか?
実は盲点のことです。国家試験は,このように勉強したことがないものを含めて出題します。
この時慌てて答えを出すと間違えることとなるので,ほかの選択肢に正解がないか,慎重に考えてみるようにすることが大切です。
3 暗闇で過ごす時間が長くなるにつれて瞳孔が拡大し,見える範囲が次第に狭まって,初め見えなかったものが見えるようになる。
これが今日のテーマの一つである「暗順応」です。
この出題でわかるように,明順応と暗順応が起こるのは,光の量によって瞳孔が開いたり閉じたりして調節しているためです。
4 渦巻き模様を右方向に回転すると模様全体が拡大するように見えるが,しばらく観察した後で渦巻きの回転を止めると,今までとは逆の方向の回転が見られる。
これは,運動残効といいます。運動残効の例として有名な「渦巻効果」と呼ばれるものです。
国家試験では,運動残効の例として,以下のようものが出題されています。
・滝をじっと見つめていて,その後に他の風景に目を向けると上方向に動いていように見える。
これは,運動残効の中でも「滝の錯視」と呼ばれる有名な現象です。