前回に引き続き,双極性障害の躁病エピソードです。
エピソードは症状の意味です。
躁状態になるとどんなことが起きるのかのイメージは何となくでもできるかもしれませんが,精神病の症状を表わす用語はなじみがないこともあり難しく感じる人もいるかもしれません。
躁病エピソードの用語では,観念奔逸がわかりにくいです。
さまざまな考えが次々と湧き出てくることを観念奔逸といいます。
しかし,考えにはつながりがないので,周りの人を振り回すことにもなります。
それでは,今日の問題です。
第34回・問題5 次のうち,双極性障害の躁状態に特徴的な症状として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 体感幻覚
2 作為体験
3 日内変動
4 誇大妄想
5 思考途絶
文章問題ではないものは,読む時間が節約できることができますが,知識がない人はまったく歯が立たないものとなります。
問題のタイプでは,知識がそのまま答えになるタクソノミーⅠ型なので,今後このタイプの問題が増えることはないように思います。
正解は,選択肢4です。
4 誇大妄想
妄想という言葉から統合失調症ではないかと思うとこれを正解にすることができないうまい出題です。
妄想は,統合失調症に限りません。
認知症では,もの取られ妄想など
うつ病や双極性障害のうつ病エピソードでは,被害妄想,微小妄想,貧困妄想など
といったように,統合失調症のほかにもいっぱいあります。
誇大妄想は,自分はすごい人なのだと思うことです。
逆に,うつ病エピソードの微小妄想は,自分はだめな人だと思うことです。
それでは,正解以外のものを解説します。
1 体感幻覚
体感幻覚は統合失調症でみられるもので,頭が半分なくなってしまった,など体が感じる幻覚です。
2 作為体験
作為体験は,だれかに操られていると感じるもので,これも統合失調症の妄想です。
3 日内変動
日内変動は,症状が一日の中で変動する意味で,代表的なものはうつ病です。
朝がだめでも,夕方に軽快するタイプの日内変動がみられます。
5 思考途絶
思考には,注意しなければならないものがあります。
うつ病エピソードには,考えることができない思考制止があります。
似たものに,この思考途絶があります。統合失調症の陰性症状の一つですが,突然思考が止まってしまうのが思考途絶です。
思考制止は,考えるスピードが遅くなるのに対し,思考途絶は機械が壊れて突然動かなくなるように,考えることがまったくできなくなるという違いがあります。