理学療法士は,身体に障害のある者に対して,理学療法を行います。
作業療法士は,身体及び精神に障害のある者に対して,作業療法を行います。
この違いは,確実に押さえておかなければなりません。
今日の問題は,知識があることを前提にして,その知識を使って答えを考えるタクソノミーⅡ型に分類されるものです。
つまり,少し考える必要があるということです。
それでは今日の問題です。
第27回・問題7 リハビリテーション全般に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 健全な身体部位は,リハビリテーションの対象ではない。
2 医学的リハビリテーションには,作業療法士は関与しない。
3 包括的リハビリテーションには,薬物療法が含まれる。
4 精神科デイケアには,理学療法士の配置が必要である。
5 内部障害は,リハビリテーションの対象ではない。
過去問よりも本試験のほうが難しいという人がいますが,それは当たり前のことです。
参考書などで勉強してから過去問に取り組めば,多くのものは先に勉強した内容となります。
そのため,本来は,知識をもとに考えて答えを出すタイプ,つまりタクソノミーⅡ型の問題であるにもかからわず,既に勉強しているので,知識を想起することで答えるタクソノミーⅠ型となります。
参考書は,国家試験に出題されたものをまとめて作ります。
国家試験の問題の中には,知識を使って答えを考える問題(タクソノミーⅡ型)があるために,本試験が難しく感じます。
知識だけで勝負しようと思うと,合格基準点を大きく超えるのは,とても難しいように思います。
この問題では,選択肢4が考えることが必要です。
精神科デイケアの職員配置なんて勉強していないよ,と思うと試験委員が仕掛けたトラップにはまります。
精神障害者にかかわるのは,作業療法士です。施設によっては,精神科にも理学療法士を配置させているところもあるかもしれませんが,配置が義務づけられる必然性はありません。
この選択肢は,精神科デイケアの配置基準を知っていることが必要なのではなく,精神障害者にかかわるのは作業療法士である,という知識を使って考えることを前提にしています。
第35回の国家試験からは,こういった出題が増えてくることが予測されるので,注意が必要です。
それでは,解説です。
1 健全な身体部位は,リハビリテーションの対象ではない。
リハビリテーションは,健全な身体部位も対象とします。
言い切り表現に正解少なし
このため,この選択肢を選ぶ人は少ないと思いますが,健全に身体部位に働きかけて,機能低下を予防するために機能訓練するのもリハビリテーションです。
2 医学的リハビリテーションには,作業療法士は関与しない。
医学的リハビリテーションは,心身の機能を発達させるためのものです。
脳梗塞などによって麻痺を生じた患者に対して,食事,更衣などができるようなるリハビリテーションのために,作業療法を行うのもその一例です。
3 包括的リハビリテーションには,薬物療法が含まれる。
これが正解です。
包括的リハビリテーションとは,一般的なリハビリテーションの概念よりももう少し広く,薬物療法や食事療法も含めたものです。
4 精神科デイケアには,理学療法士の配置が必要である。
先に述べたように,精神科デイケアに配置されるリハビリスタッフは作業療法士です。
5 内部障害は,リハビリテーションの対象ではない。
これも「言い切り表現に正解少なし」ですが,例えば心臓リハビリテーションでは,心臓への負担が少ない動作による作業の指導などを行います。