認知行動療法は,第一世代が「行動療法」,第二世代が「認知療法」,それらを合わせた第三世代が「認知行動療法」と発展してきました。
行動療法と認知行動療法は厳密に言えば異なります。しかし,第三世代の認知行動療法には行動療法も含むとされるので,社会福祉士の国家試験なら,同じものとして覚えても問題はありません。
行動療法は,国家試験の出題に従えば,不適応行動は誤って学習された行動と考え,それを修正するための再学習を行うものです。
これでわかるように,行動療法(認知行動療法)は,学習理論を応用したものです。
それでは今日の問題です。
第26回・問題14 心理療法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 動作療法(臨床動作法)を高齢者に適用するとき,筋力をつけることが重要な課題となるので,リラクセーションを促進する必要はない。
2 内観療法は,身近な人を対象として「してもらったこと」「して返したこと」「迷惑をかけたこと」について内省し,不安や苦悩を「あるがまま」に受入れていく。
3 行動療法では,恐怖症のような不適応行動を誤って学習された行動と考え,それを修正するための再学習を行うことが重要である。
4 精神分析療法では,クライエントの自己洞察を深めるため,過去の外傷体験に関する暴露療法がよく用いられる。
5 心理劇では,治療者の受容的・共感的態度に支えられ,防衛機制の理解のために夢の分析を行う。
心理療法は,繰り返し出題されているためか,ちょっとひねっているように感じます。
正解は,選択肢3です。
3 行動療法では,恐怖症のような不適応行動を誤って学習された行動と考え,それを修正するための再学習を行うことが重要である。
行動療法は,学習理論を活用して,行動を修正していきます。
それではほかの選択肢も確認します。
1 動作療法(臨床動作法)を高齢者に適用するとき,筋力をつけることが重要な課題となるので,リラクセーションを促進する必要はない。
動作療法は,動作と心はつながっていると考えて,動作を通して心理に働きかけます。
筋力をつけることは重要ではありません。
2 内観療法は,身近な人を対象として「してもらったこと」「して返したこと」「迷惑をかけたこと」について内省し,不安や苦悩を「あるがまま」に受入れていく。
これがくせものです。途中までは正しくて,後半が間違っています。
身近な人を対象として「してもらったこと」「して返したこと」「迷惑をかけたこと」について内省するのは,内観療法で正しいです。
不安や苦悩を「あるがまま」に受入れていくのは,森田療法です。
4 精神分析療法では,クライエントの自己洞察を深めるため,過去の外傷体験に関する暴露療法がよく用いられる。
精神分析療法で用いられるのは,自由連想法です。フッと思いついたことは,無意識の領域に抑圧されたものだと考えて,それを治療します。
暴露療法は,不安に感じるものに曝(さら)すことで,それに慣れさせていくものです。
行動療法の一つに位置づけられます。
5 心理劇では,治療者の受容的・共感的態度に支えられ,防衛機制の理解のために夢の分析を行う。
夢分析を行うのは,ユングの心理分析学などです。
心理劇は,筋書きのない即興劇を演じる集団で行う心理療法です。