パーソナリティは,人格と訳されますが,日本語の人格は,品格という意味も含まれることもあり,近年では人格とは呼ばず,そのままパーソナリティと表現することが多くなってきているようです。
人格検査というと,自分の人としての品格を調べられるのか,と思いませんか。
パーソナリティ検査と呼ぶと抵抗感はそれほどないように思います。
パーソナリティには,類型論と特性論があります。
類型論は,パーソナリティをタイプ分けするものです。わかりやすいのが特徴です。
特性論は,複数の因子が合わさって,その人のパーソナリティとなることを示したものです。
特性論の代表は,ビッグファイブです。
現代では,パーソナリティは5つの因子の組み合わせだとされています。
〈ビッグファイブの5因子〉
1.外向性
2.神経症傾向
3.誠実性
4.調和性
5.(経験への)開放性
類型論はわかりやすいですが,特性論のほうが奥が深そうなのでもう出題されることはないと思っていましたが,第32回国家試験でも出題されています。
第32回・問題9 パーソナリティの理論に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 クレッチマー(Kretschmer,E.)は,特性論に基づき,体格と気質の関係を示した。
2 ユング(Jung,C.)は,外向型と内向型の二つの類型を示した。
3 オールポート(Allport,G.)は,パーソナリティの特性を生物学的特性と個人的特性の二つに分けた。
4 キャッテル(Cattell,R.)は,パーソナリティをリビドーにより説明した。
5 5因子モデル(ビッグファイブ)では,外向性,内向性,神経症傾向,開放性,協調性の5つの特性が示されている。
簡単に解説します。
1 クレッチマー(Kretschmer,E.)は,特性論に基づき,体格と気質の関係を示した。
クレッチマーが,体格と気質の関係を示しましたが,類型論であるのが誤りです。
2 ユング(Jung,C.)は,外向型と内向型の二つの類型を示した。
これが正解です。
リビドーの向きによって,外向型と内向型に分けました。
類型論は,このようにパーソナリティをタイプ分けするのが特徴です。
3 オールポート(Allport,G.)は,パーソナリティの特性を生物学的特性と個人的特性の二つに分けた。
オールポートは,特性論者であることは正解です。しかし特性は,人に共通している共通特性とその人特有の個別特性の2つがあることを示しています。
4 キャッテル(Cattell,R.)は,パーソナリティをリビドーにより説明した。
先述のように,パーソナリティをリビドーで説明したのは,ユングです。
キャッテルもオールポートと同じ特性論者です。
キャッテルは,辞書からパーソナリティに関連する用語を抜き出し,それを分析して,12因子に分けています。ビッグファイブの5因子に比べるとまだ多いです。
5 5因子モデル(ビッグファイブ)では,外向性,内向性,神経症傾向,開放性,協調性の5つの特性が示されている。
ビッグファイブは,特性論の代表です。
内向性が,誠実性なら正しい5因子となります。
さて,ここからが本来の今日の問題です。
第27回・問題9 パーソナリティに関する次の記述のうち,特性論の説明として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 エス・自我・超自我の区別と相互作用説は,特性論の1つの証拠となっている。
2 体格や価値に基づく生活様式などの違いでカテゴリー化し,特性をとらえる。
3 外向性・神経症傾向・誠実性・調和性・経験への開放性から成るビッグファイブ(5因子説)は,特性論の一例である。
4 典型例が明示され,パーソナリティを直感的・全体的に把握するのに役立つ。
5 パーソナリティ全体をいくつかの層の積み重なった構造としてとらえる。
難易度がとても高い問題です。
正解は,選択肢3です。
3 外向性・神経症傾向・誠実性・調和性・経験への開放性から成るビッグファイブ(5因子説)は,特性論の一例である。
ビッグファイブが出題されたのは,この時が初めてです。第32回の問題と異なり,5因子の組み合わせは変えられていません。
ビッグファイブが特性論の代表だということだけがわかっていれば,正解できた問題でしょう。
しかし,第32回の問題でわかるように,一度出題されると,ひねって出題されるので,5因子はより慎重に覚えることが必要です。
がい(外向性)
しん(神経症傾向)
せい(誠実性)
ちょう(調和性)
かい(開放性)
これをつなげて,がいしんせいちょうかい(外診,成長かい?)と覚えるのもよいでしょう。外診とは,内診の逆で身体の外部を診察することです。
このように,頭文字を並べて覚えるのは,頭文字記憶法と呼ばれる方法です。結構使えます。
それでは,ほかの選択肢の解説です。
1 エス・自我・超自我の区別と相互作用説は,特性論の1つの証拠となっている。
エス・自我・超自我は,フロイトが提唱したもので,特性論でも類型論でもなく,精神分析に用いられる概念です。
2 体格や価値に基づく生活様式などの違いでカテゴリー化し,特性をとらえる。
カテゴリー化するのは,類型論です。
体格でカテゴリー化したのは,クレッチマーです。
価値に基づく生活様式によってカテゴリー化したのは,シュプランガーです。
4 典型例が明示され,パーソナリティを直感的・全体的に把握するのに役立つ。
典型例を明示しているのは,類型論です。
パーソナリティがわかりやすいのが特徴です。
5 パーソナリティ全体をいくつかの層の積み重なった構造としてとらえる。
特性論は,いくつかの因子が組み合ってその人のパーソナリティとなるととらえます。
ちょっとわかりにくいものかと思いますが,正解は圧倒的にビッグファイブなので,何の問題もなかったことでしょう。
〈今日の一言〉
パーソナリティを分析する方法には,類型論と特性論があることがわかったと思います。
それぞれの特徴をほかの人に簡単に説明できる程度の理解が必要です。
その上で,主な類型論者と特性論者の提唱した内容を覚えます。
今日の特性論の代表であるビッグファイブを押さえると,パーソナリティは完璧です。
0 件のコメント:
コメントを投稿