ロジャースが開発した来談者中心療法は,クライエントに指示しない「非指示的アプローチ」であることが特徴です。
来談者中心療法が開発された当時は,セラピストがクライエントに「ああしなさい」「こうしなさい」といった指示するのが中心だったため,それに疑問を持ったロジャースが「非指示的アプローチ」を開発したという経緯があります。
来談者中心療法を実施するセラピストの3つ態度
・自己一致(純粋性) クライエントに対する言葉や態度は,セラピストが感じていることと一致していること。
・無条件の肯定的関心 クライエントを批判しないで,興味を持って話を聴くこと。
・共感的理解 クライエントの話を共感しながら理解すること。
それでは,今日の問題です。
第27回・問題14 心理療法に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 自律訓練法では,身体感覚への特有の能動的注意集中を通して,心身の変化や外界の諸現象に対する受動的態度を作っていく。
2 森田療法では,不安があることを自然な事実としてあるがままに受け止め,心身の不調や症状が回復したのちに目の前にある作業に取り組む。
3 認知的再体制化を中心とした認知行動療法では,クライエントの自己への評価の低さや自己非難に伴う否定的な感情に注目し,その認知的枠組みや信念を修正する。
4 箱庭療法は,言葉では言い尽くせないような象徴的表現が可能であり,強い認知体験を伴って適度の意識化を促し,治療を進展させることができる。
5 来談者中心療法では,クライエントの建設的なパーソナリティ変化が起こる,セラピスト側の条件として分析的眼差しが挙げられる。
各選択肢の文字数が若干長いために,引っかけポイントをつくりやすくなっています。
それでは解説です。
1 自律訓練法では,身体感覚への特有の能動的注意集中を通して,心身の変化や外界の諸現象に対する受動的態度を作っていく。
自律訓練法は,自己暗示をかけることで体の緊張を和らげ,心身を健康状態に整えるものです。
自己暗示をかける部分が,自律訓練法の特徴です。
自己暗示の一部は以下の通りです。
右手が重い
左手が重い
右足が重い
左足が重い
右手が温かい
左手が温かい
右足が温かい
左足が温かい
この時の注意点は,「●●が重い」「●●が温かい」という受動的注意集中することです。
この時に「●●が重くなる」「●●が温かくなる」という能動的な自己暗示をかけると心身の緊張が緩まなくなるので,能動的注意集中することが必要です。
2 森田療法では,不安があることを自然な事実としてあるがままに受け止め,心身の不調や症状が回復したのちに目の前にある作業に取り組む。
森田療法は,不安があることを自然な事実としてあるがままに受け止めるものです。
そのまま,心身の不調や症状があってもそれを自然のものとして受け入れ,作業に取り組みます。
3 認知的再体制化を中心とした認知行動療法では,クライエントの自己への評価の低さや自己非難に伴う否定的な感情に注目し,その認知的枠組みや信念を修正する。
これが正解です。
何かの状況で,自分は失敗する,自分はダメだ,などと思ってしまう自動思考を学習理論を使って修正するのが認知行動療法です。
4 箱庭療法は,言葉では言い尽くせないような象徴的表現が可能であり,強い認知体験を伴って適度の意識化を促し,治療を進展させることができる。
箱庭療法は,無意識の領域にあるものが,箱庭で表現されると考えるものです。クライエントが強い認知体験をすることはないでしょう。
表現されたものの意味を解釈するのはセラピストです。
5 来談者中心療法では,クライエントの建設的なパーソナリティ変化が起こる,セラピスト側の条件として分析的眼差しが挙げられる。
ようやく今日のテーマの来談者中心療法です。
セラピストの条件は,「自己一致(純粋性)」「無条件の肯定的関心」「共感的理解」の3つです。
分析的眼差しは,「無条件の肯定的関心」「共感的理解」の対極にあるものです。
来談者中心療法は,「非指示的アプローチ」であると書きました。その理由は,セラピストが3つの条件の態度でクライエントと向き合うことで,クライエントは安心して話すことができて,話すことで気がつくことができるからです。
分析的眼差しの態度では,クライエントとラポールを築くのは困難です。