社会福祉調査を大別すると調査票などを使って行う「量的調査」と観察や面接などによる「質的調査」があります。
今回は,そのうちの量的調査です。
誰が調査票に記入するのかによって「自記式(自計式)」と「他記式(他計式)」に分類されますが,それぞれを説明できますか?
説明に自信がないという人は以下で確認してください。
https://fukufuku21.blogspot.com/2022/05/blog-post_24.html
調査票を使うと,未回答や誤記入も発生します。
これらを欠損データといいます。
調査票は,そのままではデータ処理ができないので,データに数値を割り当ててエクセルなどで入力していきます。
データに数値を割り当てることは「コーディング」といいます。
データ入力する際,欠損データは,そのままにしておかず,意味のない数値(例えば「999」など)を入力しておきます。
調査票を使った調査では,回答すべき人ではない人が回答してしまうこともあります。
回答すべき人ではない人が回答するとは,例えば,18歳以上を対象とした質問に18歳未満の人が回答するなどです。そういったことを「非該当」と呼びます。
要介護認定の結果で,要介護でも要支援でもない人を「非該当」と言いますが,それと似ています。
非該当のデータも非該当として欠損データと同じように処理を行います。
それでは今日の問題です。
第31回・問題87 調査票の回収後の手続に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 調査票で記入者が回答していないところは,欠損値として数値を割り当てる必要はない。
2 回収した調査票が正確かどうかを確認する作業のことをコーディングという。
3 40歳以上65歳未満を対象とした調査で,40歳代のみを対象とした質問項目の場合,50歳以上の当該質問項目の回答は「非該当」として処理する。
4 複数の質問項目の組合せの論理的な矛盾は調査票作成時に確認するので,回収後に確認する必要はない。
5 入力ミス以外のはずれ値は,必ず除去しなければならない。
問題のつくり方が少し下手です。
選択肢5の「必ず除去しなければならない」の「必ず」は正解になることはほとんどないことを多くの人が知っているので,極力使われない傾向にあります。
この問題をつくった試験委員は,そのことを知らなかったのか,あるいは知っていても問題づくりに困って,苦し紛れに使ってしまったのか,いずれにせよ,この選択肢は知識がなくても消去できてしまいます。
社会福祉士国家試験の在り方に関する検討会報告書では,試験委員の支援のために研修を行うことを提言しているので,今後は「日本語的に解ける」問題は出題されなくなります。
勉強不足の受験者がラッキーで合格できることはなくなります。
それでは,改めて解説です。
1 調査票で記入者が回答していないところは,欠損値として数値を割り当てる必要はない。
これも下手です。
この文章は,正しい文章を否定形にした手抜き的なものです。
正しい文章は,
調査票で記入者が回答していないところは,欠損値として数値を割り当てる。
国家試験は,覚えていてほしいものを出題するものです。
本当に「必要がない」なら出題する意味がありません。今後はこういった出題もなくなるでしょう。
2 回収した調査票が正確かどうかを確認する作業のことをコーディングという。
コーディングは,データに数値を割り振ることです。
国家試験を受験した人に対しての調査で
模擬試験は受けましたか?
という質問の答えは「はい」と「いいえ」です。
「はい」を「1」,「いいえ」を「2」などの数値を割り当てます。
これは,尺度水準では,名義尺度です。
3 40歳以上65歳未満を対象とした調査で,40歳代のみを対象とした質問項目の場合,50歳以上の当該質問項目の回答は「非該当」として処理する。
これが正解です。
前説で述べたとおりです。
4 複数の質問項目の組合せの論理的な矛盾は調査票作成時に確認するので,回収後に確認する必要はない。
これも下手です。
回収後に本当に確認する必要がないなら,出題する意味がありません。
5 入力ミス以外のはずれ値は,必ず除去しなければならない。
はずれ値とは,標本分布のうち,極端に大きな数値や小さい数値のことをいいます。
得られたデータが意味のあるものなのかを確認するために統計的検定を行います。
その場合,上側と下側のはずれ値を抜いた95%の範囲のデータを使うことが多いです。
統計的検定の場合に,はずれ値を除去しますが,どんな時でも除去しなければならないということはありません。
例えば,最大値や最小値は,はずれ値の中にある数値です。
はずれ値を除去すると最大値も最小値もわからなくなります。