2022年5月22日日曜日

児童の一時保護における司法の関与について

児童相談所長及び都道府県知事は,必要がある場合,2か月を超えない範囲で,児童の一時保護を行うことができます。


必要な場合は,親権者の意に反して2か月を超えた一時保護を行うことができますが,その場合は,家庭裁判所の承認を得なければなりません。


この規定は,児童福祉法の平成29年改正で加わったものです。




出典:厚生労働省ホームページ「図表1-4-1 児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律案の概要」

https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/17/backdata/02-01-04-01.html


現時点(2022年5月)での一時保護における司法の関与は,一時保護の延長の場合ですが,令和4年改正により,今後は,一時保護を行う際に,司法が関与することになるでしょう。













出典:厚生労働省ホームページ「第208回国会(令和4年常会)提出法律案~児童福祉法等の一部を改正する法律案(令和4年3月4日提出)」

https://www.mhlw.go.jp/stf/topics/bukyoku/soumu/houritu/208.html


これについては,第35回国試には出題されません。


それでは,今日の問題です。


第31回・問題83 児童福祉法と「児童虐待防止法」に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 児童虐待の通告義務に違反すると刑罰の対象となる。

2 立入調査には裁判所の令状が必要である。

3 親権者の意に反し,2か月を超えて一時保護を行うには,家庭裁判所の承認が必要である。

4 本人と同居していない者が保護者に該当することはない。

5 児童虐待には,保護者がわいせつな行為をさせることは含まれない。

(注) 「児童虐待防止法」とは,「児童虐待の防止等に関する法律」のことである。


前説のとおり,正解は選択肢3です。


3 親権者の意に反し,2か月を超えて一時保護を行うには,家庭裁判所の承認が必要である。


社会福祉士の国家試験にしては珍しく改正で加わったものが早い時期に出題されています。


しかし,すぐ出題されているわけではありません。


それでは,ほかの選択肢も見てみます。


1 児童虐待の通告義務に違反すると刑罰の対象となる。


この問題の中で悩むのはこの選択肢です。


通告義務があっても,罰則があるかまでは知らないからです。

知っているわけがありません。なぜなら罰則はないからです。


通告義務に罰則はおそらく今後も規定されることはないと言えます。



2 立入調査には裁判所の令状が必要である。


立入調査は令状がなくても行うことができます。


令状を必要とするのは,保護者が出頭に応じない場合に行う臨検・捜索を行う場合です。


しかし,実際に臨検・捜索を行うことは少ないようです。臨検・捜索を行うと保護者との関係を築くのが困難になりかねないからです。


4 本人と同居していない者が保護者に該当することはない。


保護者は,親権を行う者,未成年後見人その他の者で,児童を現に監護するものです。


同居の有無は保護者の要件ではありません。


5 児童虐待には,保護者がわいせつな行為をさせることは含まれない。


児童虐待には,性的虐待が含まれます。

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