福祉の古典的ニーズは,貧困です。
労働者が病気になり,働けなくなり労働力を失うことは貧困に陥る大きなリスクとなります。
そのために,社会保障制度には医療保障がありますが,国によって,社会保険によって運営する国と,税財源によって運営する国があります。
日本は,前者,つまり社会保険制度を取り入れています。
日本の医療保障は,このように社会保険制度が中心です。
医療の現物給付である「療養の給付」と現金給付があります。
特に覚えておきたいのは,医療保険の傷病手当金,出産育児一時金,出産手当金です。
傷病手当金は,2022年4月に変更された点があります。
出典:厚生労働省ホームページ「令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22308.html
ここにある待期期間は,連続する3日間です。
出産育児一時金は,被保険者が出産した場合に定額が給付されます。現在の基本的な金額は42万円です。
健康保険の場合は,被保険者の被扶養者の出産の際にも「家族出産育児一時金」が給付されます。内容は一緒です。
国民健康保険は,健康保険と異なり,被扶養者という制度はありません。
出産手当金は,被保険者の出産に伴い,仕事ができず給与の支払いがなかった場合に,出産前42日,出産後56日の分が給付されます。
出産手当金は,被扶養者の出産には給付されません。
それでは,今日の問題です。
第31回・問題70 日本の公的医療保険の給付内容に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 療養の給付に係る一部負担金割合は,被保険者が75歳以上で,かつ,現役並み所得の場合には2割となる。
2 高額療養費の自己負担限度額は,患者の年齢や所得にかかわらず,一律に同額である。
3 食事療養に要した費用については,入院時食事療養費が給付される。
4 出産育児一時金は,被保険者の出産費用の7割が給付される。
5 傷病手当金は,被保険者が業務上のケガで労務不能となった場合に給付される。
いろいろな制度を混ぜて出題しています。
社会保障の科目でも出題される内容が含まれているので,整理してしっかり覚えておきたいです。
それでは解説です。
1 療養の給付に係る一部負担金割合は,被保険者が75歳以上で,かつ,現役並み所得の場合には2割となる。
現役並み所得のある75歳以上の後期高齢者の自己負担は3割負担です。
2 高額療養費の自己負担限度額は,患者の年齢や所得にかかわらず,一律に同額である。
高額療養費は,自己負担限度額を超えた分が戻ってくる制度です。
限度額は,年齢,所得によって異なります。
3 食事療養に要した費用については,入院時食事療養費が給付される。
これが正解です。
入院時食事療養費とは,入院した際の食事費の自己負担分を引いた分を保険給付するものです。
4 出産育児一時金は,被保険者の出産費用の7割が給付される。
出産育児一時金は,定額給付です。
前説のように現在は,原則として42万円が給付されます。
5 傷病手当金は,被保険者が業務上のケガで労務不能となった場合に給付される。
健康保険は,労災保険が適用されない場合に適用される制度です。
被保険者が業務上のケガで労務不能となった場合は,労災保険が適用されるので,傷病手当金は給付されません。
その代わり同等の内容である休業補償給付が適用となります。