2024年3月23日土曜日

人名・歴史が苦手なら法制度はしっかり覚えたい

 国試問題を難易度でみると


最も難しい問題は,社会学,心理学,社会福祉の原理の科目に集中しています。

しかし超難易度が高い問題は全体の1割もありません。


法制度の問題も難易度が高い問題もありますが,多くの問題はそれほど高くはなく,正解不正解の分かれ目は,しっかり覚えているかどうか,ということになります。


例えば,


義務なのか,努力義務なのか

都道府県の役割なのか,市町村の役割なのか


などです。


あいまいに覚えていると,いとも簡単に深みにはまります。

過去問を解くときに意識してほしいことは多々ありますが,そのうちの一つは,


間違いはどのように作られるのかを意識すること

法制度の問題は,特にこれを意識してほしいです。


さて,それでは今日の問題を見てみましょう。


第26回・問題31 

我が国の雇用保険制度に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 雇用保険は,従業員が5人以下の事業所は任意加入とされている。

2 雇用保険で支給される基本手当の1日の額(基本手当日額)は,離職した日の直前の6か月間における一日平均の賃金額の50%と規定されている。

3 雇用保険には,失業等給付のほか,失業の予防,雇用状態の是正及び雇用機会の増大,労働者の能力開発及び向上を図るための事業がある。

4 雇用保険への加入を決める基準は,6か月以上の雇用見込みがあることとなっている。

5 求職者給付の諸手当の支給は,継続的な求職活動を要件とする。


この問題は「社会福祉の原理と政策」の問題ですが,あたかも「社会保障」の問題のようです。

人名や歴史が苦手だという人は,この手の問題はしっかり取りたいです。


日本の社会保険は,「年金保険」「医療保険」「介護保険」「労働者災害補償保険」「雇用保険」の5つがあります。


そのうち,労働者災害補償保険と雇用保険の2つを合わせて「労働保険」と呼ばれていますが,年金保険,医療保険よりも覚えるポイントは少ないので,労働保険はしっかり得点したいです。


さて,それではそれぞれの選択肢を見ましょう。


1 雇用保険は,従業員が5人以下の事業所は任意加入とされている。


社会保険の種類によって,すべての事業所に強制適用になるものと,一部の事業所は任意になるものがあります。


仕組みを考えてみると,なぜそのように分かれるのかが分かります。法制度は合理的に作られているので,必ずそこには意味があるからです。


雇用保険・労災保険 ⇒ すべての事業所に強制適用


年金保険・医療保険 ⇒ 常時5名以上雇用している事業所に強制適用。4名以下の事業所は任意適用。


労働保険は,労働者を守るための保険であり,いずれも戦後に制度が出来上がりました。労働者を守るための保険なので,すべての事業所に強制適用しなければ,他の制度で代替できるものがありません。


年金保険・医療保険は,国民皆保険・皆年金が実施されています。この2つの保険は戦前の1922年の健康保険から始まり,徐々に対象を広げて,1961年に皆年金・皆保険となりました。


ここで気づいた人もいると思いますが,強制適用事業所以外ではほかの制度で補完します。つまり,年金保険なら国民年金,医療保険なら国民健康保険ということになります。


ただし,国民年金は基礎年金なので,厚生年金加入者は国民年金に加入しなくてよいということではないので注意しましょう。


話を戻します。

雇用保険は,すべての事業所に強制適用です。


よって×。


法制度は理屈で押さえていくのがコツです。


2 雇用保険で支給される基本手当の1日の額(基本手当日額)は,離職した日の直前の6か月間における一日平均の賃金額の50%と規定されている。


雇用保険の失業等給付は,仕事をやめたことのある人はお世話になる制度です。

すべての人が50%なわけではなく,賃金によって,違いがあります。


よって×。


3 雇用保険には,失業等給付のほか,失業の予防,雇用状態の是正及び雇用機会の増大,労働者の能力開発及び向上を図るための事業がある。


雇用保険には,失業等給付のほかに雇用保険二事業があります。

失業の予防,雇用状態の是正及び雇用機会の増大,労働者の能力開発及び向上を図るための事業はそのうちの雇用保険二事業です。


よって正解。


保険料については,失業等給付は労使折半,雇用保険二事業は雇用主のみです。合わせて覚えておきましょう。


4 雇用保険への加入を決める基準は,6か月以上の雇用見込みがあることとなっている。


6か月ではなく,31日です。よって×。

また労働時間は,週20時間以上であることも条件となります。


5 求職者給付の諸手当の支給は,継続的な求職活動を要件とする。


継続的な求職活動は要件としていません。誠実かつ熱心に求職活動を行うことが努力義務とされているだけです。


よって×


全体的に難しめの内容が並んだ問題だったと思います。


しかし,答えは複雑な内容のものではなく,雇用保険制度の根幹中の根幹である,「失業等給付」「雇用保険二事業」が正解となっています。


戦後すぐにできた失業保険は,1974年に雇用保険に変わっています。もう40年以上も経つのにいまだに「失業保険」と言う人がいます。失業等給付のイメージが強いからでしょう。


雇用保険は,失業等給付だけではなく,雇用保険二事業もあるのだ,と国は言いたかったことに他なりません。雇用保険二事業には,「雇用調整助成金」などがあります。

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