国試問題のタイプは
1 法制度に関連するもの
2 歴史に関するもの
3 福祉の理論に関連するもの
4 実態に関連するもの(白書や報告書含む)
に分類できます。
この中で,対策が取りにくいものは,
4 実態に関連するもの(白書や報告書含む)です。
実態に関する数字は,参考書には掲載されていると思います。
それらは過去に出題されたものです。
しかし,それらがまた出題されることはほとんどありません。
つまり,一度きりの出題のものが多いということが言えます。
「白書類に目を通しておくこと」とアドバイスする先生がいます。
しかし,分厚い白書を理解しながら覚えていくのはほぼ不可能です。
普段からそういう文献になじんでいる方なら,どこに着目すればよいか,わかるかもしれません。
しかししかし・・・
そこに時間を割いて
仮に得点できたとしても,たった1点のプラス
得点できなくても,たった1点のマイナス
結果的に,1点が取れなかったために,合格できなかったということはよくあることです。
この手の問題が解けなかったのは事実だとしても,その他の得点できなかった問題をよく見てみると,本来得点すべき問題を落としていた,というものが必ずあるはずです。
何度も1点に泣く経験をすると,もっと広い知識をつけたいと思いがちになると思います。
しかし,手を広げた結果,「曖昧な知識が増えただけ」では意味がありません。
白書などを根拠とする数字系の問題は難しい
なぜなら,先述のように,ほとんど対策ができないからです。
「白書に目を通しておくこと」は,効果的な対策とは言えません。
それよりももっと大切なことは・・・
感性を磨き上げる
ちょっと非科学的だと思われる人もいるでしょう。
しかし,結局は,感性が大きくものを言うことは往々にしてあります。
感性とは,偶然に左右される「勘」ではないです。
さまざまな知識の上に積み上げていくものだと言えます。
ある問題に対し,例えば・・・
男性と女性の比率はどちらが多いのか。
50%という数字は多いのか,少ないのか。
などなど。
数字が出て来た時には,なぜそのような数字になったのか,アナリスト(分析家)ばりに考えてみましょう。
その上での傾向は・・・
判断できにくいものが正解であることが多い
これも押さえておきましょう。
それでは,今日の問題を見て行きますね。
第26回・問題35
問題35 民生委員・児童委員に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 2011年度(平成23年度)現在の民生委員・児童委員数の男女比は,およそ6:4で男性の方が多い。
2 民生委員・児童委員の定数は,主任児童委員も併せると,2001年度(平成13年度)以降2011年度(平成23年度)まで22~23万人台で推移している。
3 民生委員・児童委員の定数を定める配置基準は,全国一律で150から250世帯ごとに1人とされている。
4 2000年(平成12年)の民生委員法の改正により,民生委員の任期は3年から5年に延長されている。
5 2011年度(平成23年度)の民生委員・児童委員の「相談・支援件数」は,分野別にみると「障害者に関すること」が最も多い。
この問題に含まれる数字は,実態系と法制度の抱き合わせ問題となっています。
<実態系の選択肢>
1 民生委員・児童委員の男女比
2 民生委員・児童委員の定数
5 民生委員・児童委員の分野別の相談支援件数
の3つです。
<法制度系の選択肢>
3 民生委員・児童委員の配置基準
4 民生委員の任期
の2つです。
これをもとに各選択肢を見て行きますね。
1 2011年度(平成23年度)現在の民生委員・児童委員数の男女比は,およそ6:4で男性の方が多い。
これは,実態系の問題ですね。自分の感性を信じましょう。
地方では男性の方が多そうですが,都市部では女性の方が多そうです。
それらを考えると男性が多いということはなさそうです。
実際には,6:4で女性の方が多いそうです。
よって×。
2 民生委員・児童委員の定数は,主任児童委員も併せると,2001年度(平成13年度)以降2011年度(平成23年度)まで22~23万人台で推移している。
これも実態系の問題ですね。
想像することができません。
▲をつけておきます。結果的にこれが正解です。
3 民生委員・児童委員の定数を定める配置基準は,全国一律で150から250世帯ごとに1人とされている。
これは法制度系ですね。制度を知っていることが大切です。
民生委員法では,
民生委員の定数は、厚生労働大臣の定める基準を参酌して、前条の区域ごとに、都道府県の条例で定める。
とされています。つまり全国一律ではありません。
よって×。
4 2000年(平成12年)の民生委員法の改正により,民生委員の任期は3年から5年に延長されている。
これも法制度系ですね。制度を知っていることが大切です。
民生委員の任期は3年。
保護司の任期は2年。
これはしっかり☓をつけたい問題です。
2000年の民生委員法改正については,それまであった「名誉職規定」が削除された,が過去に出題されたことかあります。この時の改正には,民生委員の基本理念が「保護指導」から「相談・援助」に変わったことがあります。
5 2011年度(平成23年度)の民生委員・児童委員の「相談・支援件数」は,分野別にみると「障害者に関すること」が最も多い。
これは実態系の問題ですね。自分の感性を信じましょう。
対象者の数を考えると,障害者の数が最も多いとは思えません。×がつけられそうです。
調べてみると,最も多いのは「高齢者に関すること」だそうです。高齢者数はどんどん増えているので納得ですね。
よって×。
先ほどの「名誉職規定」は,民生委員の一つの源流である方面委員で規定されていたものを民生委員制度になってからも引き続き規定されたものです。