歴史は,人名と同じく苦手としている人が多いようです。
しかし,社会福祉士の試験は歴史の試験ではありません。出題されるポイントは限られています。
それ以外のものは,ほとんどは,間違いの選択肢であると言っても過言ではありません。
それでは,今日の問題を見ていきましょう。
第26回・問題37
社会福祉協議会の歴史に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 全国社会福祉協議会は1984年(昭和59年),『地域福祉計画―理論と方法』を刊行し,都道府県,市町村,市町村社協がそれぞれの計画を一体的に策定する,いわゆる「三相計画」の構想を示した。
2 1990年(平成2年)のいわゆる福祉関係八法改正の際,社会福祉事業法の改正に伴って市町村社会福祉協議会が法制化された。
3 1999年(平成11年),国庫補助で配置されていた福祉活動専門員の経費が一般財源化された。
4 2000年(平成12年)の社会福祉法の改正において,市町村社会福祉協議会は地域福祉の推進を図ることを目的とする団体として位置づけられ,都道府県社会福祉協議会は広域的なボランティア活動を調整する団体であると位置づけられた。
5 全国社会福祉協議会は,2012年(平成24年)に「社協・生活支援活動強化方針」を策定し,主として,今後急増する在宅の認知症高齢者の生活支援を,より一層充実させていくことを目的とした。
社協の歩みについての問題です。
歴史が苦手な人は,なぜ昔のことを学ばなければならないのか,と思うでしょう。その気持ちはよく分かります。
しかし,この問題はそんなに遠い昔のことではありません。
リアルアイムで知っていることも含まれているかもしれません。
それでは,それぞれの選択肢を見て行きますね。
1 全国社会福祉協議会は1984年(昭和59年),『地域福祉計画―理論と方法』を刊行し,都道府県,市町村,市町村社協がそれぞれの計画を一体的に策定する,いわゆる「三相計画」の構想を示した。
これはまったくわかりません。冷静に▲をつけましょう。
「三相計画」って何?
と頭が真っ白になってしまうかもしれません。
この手の問題はそのように感じさせるのがねらいです。
その手に引っかかっては,問題を正しく読めなくなります。
気を付けましょう。
三相計画はもう二度と出題されないと思いますが,一応調べてみました。出題されても正解にはならないタイプのものです。
「東京都における地域福祉推進計画の基本的あり方について」(1989)
東京都地域福祉推進計画等検討委員会
三相とは
都全域を圏域として東京都が策定する「推進計画」
区市町村の策定する「区市町村福祉計画」
多様な福祉活動を基盤に住民が主体的に策定する「住民活動計画」
という,都,市町村,住民の三相だそうです。
よって×。
2 1990年(平成2年)のいわゆる福祉関係八法改正の際,社会福祉事業法の改正に伴って市町村社会福祉協議会が法制化された。
これはしっかり×をつけたい問題です。
全社協・都道府県社協の法制化は,1951年の社会福祉事業法制定時。
市町村社協の法制化は,1983年の社会福祉事業法改正時。
よって×。
福祉関係八法改正では,「在宅福祉サービスの位置づけ」,「高齢者・身体障害者の町村への入所措置の移譲」,「老人保健福祉計画の策定義務」が行われました。
3 1999年(平成11年),国庫補助で配置されていた福祉活動専門員の経費が一般財源化された。
福祉活動専門専門員は,市町村社協に配置されています。都道府県社協に配置される福祉活動指導員とともに1966年に国庫補助で始まりました。しかし,現在はどちらも一般財源化されています。
よって正解です。
4 2000年(平成12年)の社会福祉法の改正において,市町村社会福祉協議会は地域福祉の推進を図ることを目的とする団体として位置づけられ,都道府県社会福祉協議会は広域的なボランティア活動を調整する団体であると位置づけられた。
まったくわかりません。冷静に▲をつけましょう。
しかし,ヒントはあります。
都道府県が広域的な立場から市町村を調整するのなら理解できます。
しかし,ボランティアを考えたとき,都道府県社協が広域的なボランティア活動を調整することは困難ではないでしょうか。なぜならボランティアは自発的な活動です。
もっと身近なところで調整しないと厳しいのではないでしょうか。
答えは×です。
5 全国社会福祉協議会は,2012年(平成24年)に「社協・生活支援活動強化方針」を策定し,主として,今後急増する在宅の認知症高齢者の生活支援を,より一層充実させていくことを目的とした。
もっともらしい選択肢をつくったなぁ,と感じます。
しかし,よく考えてみてください。
全社協が,認知症高齢者の生活支援を目的として「社協・生活支援活動強化方針」を策定するとは思えません。
なぜなら,認知症は国民的課題ですが,地域のニーズはそれだけにとどまらないからです。ニーズの充足を図る中には認知症高齢者の生活支援も含まれます。
もし,この方針に「認知症」というタイトルがついていれば,認知症を「主として」となるかもしれません。しかし,そうなっていないので,「主として」ではないと想像できます。
もちろん「主として」いません。よって×。
1と4の選択肢に▲をつけましたが,3を見た時点でこれが正解であるとわかる人も多かったのではないでしょうか。
珍しく,消去法でなくても正解がわかる問題だったと思います。
ただし,選択肢1の「三相計画」に引っかかった人は,これに〇をつけてしまいがちです。
わからないものには,まずは冷静に▲をつけることが大切です。
そうしないと,迷いの森の入ってしまいます。
これが国試の恐ろしさです。国試会場ではよく見られることです。
この問題では,知らないものが複数出題されています。
しかし,答えは,何度も出題されている「福祉活動専門員の経費の一般財源化」です。
国試問題の出題の癖が分かれば,知らないものが出てきてもそんなに怖くはないです。
迷いの森に入らないコツでもあります。