2024年3月4日月曜日

どのくらい勉強すると合格できるのか

 どのくらい勉強したら合格できるのでしょうか・・・


というご質問を受けることがあります。


もちろん集中してたくさんの勉強ができればそれに越したことはありません。



しかし,重要なのは「どれだけ勉強するか」ではなく


「どんな勉強をするか」です。


例えば・・・



リッチモンド


「社会診断」「ソーシャル・ケース・ワークとは何か」を書いて,ケースワークを体系化した。



という実績があります。


こういう文を見ると,単語カードに


「リッチモンド」=「社会診断」


または,


「リッチモンド」=「ソーシャル・ケース・ワークとは何か」


と書いて覚えると良いと思うでしょう。


しかし,社会福祉士の国試ではこの知識で解けるような問題は少ないと言えます。


何度か受験されている方は,勉強法がずれていないか,本格的な学習に入る前にもう一度考えてみるのも大切かもしれません。


それでは今日の問題です。



第26回・問題16

近代の社会変動の趨勢に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 デュルケム(Durkheim, E.)は,異質な個人の分業による有機的な連帯から,同質的な個人が並列する機械的連帯へと変化していくと考えた。

2 ヴェーバー(Weber,M.)は,近代の組織活動において計算に基づく予測可能性が低下すると考えた。

3 テンニース(Tonnies,F.)は,全体意志に基づく第一次集団が解体し,一般意志に基づく第二次集団が優越するようになると考えた。

4 ジンメル(Simmel,G.)は,社会的な分化が進むことによって,人々が相互に交流する範囲としての社会圏が縮小していくと考えた。

5 ベル(Bell,D.)は,左右のイデオロギー対立はなくなり,プラグマティックな社会問題の解决が実現すると考えた。


人名問題です。


いやだな~と思う方も多いことでしょう。


特にこの科目(社会学と社会理論)の人名問題は,一筋縄ではいかないものが多いので,とても手ごわいです。


リッチモンド=社会診断


というような単純図式の覚え方でこの問題の答えを引き出すのはちょっぴり厳しいかもしれませんね~


あれだけ勉強したのに・・・


と強く思う瞬間でしょう。


それでは,解説です。


1 デュルケム(Durkheim, E.)は,異質な個人の分業による有機的な連帯から,同質的な個人が並列する機械的連帯へと変化していくと考えた。



異質な個人の分業

同質的な個人が並列


何を言っているのかさっぱりわからないという人もいると思います。


答えは,有機的連帯と機械的連帯が逆になっているので,間違いです。


デュルケムの社会変動は機械的連帯から有機的連帯へ


という図式で覚えておくとよいです。


2 ヴェーバー(Weber,M.)は,近代の組織活動において計算に基づく予測可能性が低下すると考えた。



ヴェーバーは多く出題されますが,まったくわからないものですね・・・


ヴェーバーと言えば,官僚制。


予測の可能性が低下するのであれば,何のための官僚制なのか・・・


という疑問が出てきてほしいところです。


予測可能性・・・


で引っかかってしまったら,この問題の迷いの道に深く迷い込んでしまいます。


答えは,もちろん低下するのではなく,高まるが正解です。


よって×。


3 テンニース(Tonnies,F.)は,全体意志に基づく第一次集団が解体し,一般意志に基づく第二次集団が優越するようになると考えた。


これは,単語カード的に解ける問題かな~と思う問題です。


テンニース

本質意思=ゲマインシャフト

選択意思=ゲゼルシャフト


全体意志・一般意思とは聞いたことがない


 → わからない


となると迷いの道に入るのでご注意ください。



聞いたことがないのは当然です。間違ったものだからです。


よって×。


因みに・・・



全体意志・一般意思は,ルソーが述べたものらしいです。


4 ジンメル(Simmel,G.)は,社会的な分化が進むことによって,人々が相互に交流する範囲としての社会圏が縮小していくと考えた。


これも難しいです。


しかし,現代社会を考えたとき,グローバル化している現実があります。

社会圏はどんどん拡大しているとおもいませんか?


ネットを見ても,専門情報にあふれています。必要な情報はかなり手に入ると思います。


しかも,情報を提供してくれている人は,直接知らない人がほとんどだと思います。

これから,社会圏が縮小するとはないと想像できます。


答えは,×。 

もちろん正しいのは「拡大する」です。


5 ベル(Bell,D.)は,左右のイデオロギー対立はなくなり,プラグマティックな社会問題の解决が実現すると考えた。



またまた難しいですね・・・

プラグマティックって何?



と思うとまたまた迷いの道に入り込みます。

わからないときは,その部分を飛ばして読むこと


割り切りが必要です。


ベル(Bell,D.)は,左右のイデオロギー対立はなくなり,社会問題の解决が実現すると考えた。



これでも意味は通ります。


因みに・・・



プラグマティック=実利的・実用的


ここでは具体的方法論をもって,といった意味となるでしょう。



2と3の選択肢をうまく消去できていれば,5しか正解はなくなります。


正解は5となります。



この問題でわかること


人名問題は,今まで出題されたことのある問題は


デュルケム,テンニースのように,ひねって出題をします。


それ以外の間違いになる選択肢は,


社会人としての知識を活用して解く

といったスタイルが多いです。


その結果として,答えがいぶり出されることとなります。


社会人としての知識を活用して解く


この部分は,経験豊富な社会人の方が有利になるところです。

ここで必要なのは,頭を柔らかくして問題に取り組むことです。


解けなくてもよい問題だと言えますが,ちょっと頭を柔らかくすることで解けるのだったら,得点しておきたい問題です。

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