過去問題集も模擬問題集も完璧に覚えた
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合格できる実力がついた
とはならないのが,この国試の特徴です。
そればなぜか?
めったに同じ表現で出題されることはありません。
しかも,繰り返し出題されるものは,その分ひねりを加えています。
それは今まで見てきたように,そしてこれから先も見ていくように,明らかです。
勉強の際に,もうひと手間付け加えましょう。
過去問題集も模擬問題集も完璧に覚えた
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別の視点で見直し,組み立てなおす
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合格できる実力がついた
別の視点で見直し,組み立てなおすとは・・・
自分の言葉で考えてみることです。
さて,今日の問題です。
第26回・問題17
都市化に伴う地域社会の変化に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 都市化によってまず都心部に人口が集中し,次いでその周辺の郊外の人口が増えていくが,その後も都心部の人口が減少することはない。
2 都市化によって人口量と人口密度が増大し,社会的な異質性が高まっても,人々の社会関係や生活様式は変化しない。
3 都市化によって親族や近隣の地域集団は解体されていく傾向がみられるが,家族や親しい友人とのパーソナルな関係がなくなるわけではない。
4 都市化によって生活基盤の不充足等の社会問題が現れても,住民自身がその充足を目指す活動を起こすことはない。
5 都市化によって公的なサービスが整備されれば,地域社会におけるボランティア活動や相互扶助的なサービス提供は必要でなくなっていく。
都市化に関する問題です。
1 都市化によってまず都心部に人口が集中し,次いでその周辺の郊外の人口が増えていくが,その後も都心部の人口が減少することはない。
読んでも難しい問題ではないですが,出題者は念には念を入れて
言い切り表現に正解少なし
を用いて出題しています。
しかし,どんな問題でも,全員が〇をつけたり×をつけたりすることがないものです。つまりこのような問題でも間違える可能性があるということです。
十分に気を付けましょう。もちろん間違いです。
ドーナツ化現象:人が都心部から出ていく
↓
インナーシティ問題:人も企業も都心部から出ていく
↓
スラム化:都心部が荒れる
↓
ジェントリフィケイション:都心部の再開発などで,人や企業が戻ってくる
↓
ドーナツ化現象:人が都心部から出ていく
こんなサイクルをたどります。
この問題を難しくしようと思ったら,
都市化によってまず都心部に人口が集中し,次いでその周辺の郊外の人口が増えていくが,その後,インナーシティ問題は生じない。
といった出題もできたはずです。出題者は,決して鬼ではありません。
2 都市化によって人口量と人口密度が増大し,社会的な異質性が高まっても,人々の社会関係や生活様式は変化しない。
社会的な異質性
難しめの言葉を挟み込んできました。
社会的な異質性 → 異なった生育・教育環境などをもつ人たち
社会的な同質性 → 同じような生育・教育環境などをもつ人たち
これを「これってあれに似ている」と思った人がいるのでは?
社会的な同質性は・・・
デュルケムの機械的連帯
テンニースのゲマインシャフト
マッキーバーのコミュニティ など
社会的な異質性・・・
デュルケムの有機的連帯
テンニースのゲゼルシャフト
マッキーバーのアソシエーション など
それぞれ少しずつ違うかもしれませんが,重なっている部分もありますね。
このように知識がつながってくればしめたものです。
日本が近代化したのは,明治以降です。それ以前は封建制の時代なので,基本的には自分の土地を離れることはありませんでした。近代化に伴い,人の移動は流動化します。
いろいろな地方の人が集まったら,影響されたり変えざるを得ないことがたくさん出てきます。
明治までさかのぼらなくとも,高度成長時代には,金の卵と呼ばれた中卒の地方の若者が都会に集まってきました。
生活様式が変わらない,ということはありません。
シカゴ学派のワースは,都市的生活様式のことを「アーバニズム」と名付けました。
アーバニズムには,近隣への無関心などがあります。
話を戻します。
人々の社会関係や生活様式は変化しない。 当然×ですね。
3 都市化によって親族や近隣の地域集団は解体されていく傾向がみられるが,家族や親しい友人とのパーソナルな関係がなくなるわけではない。
当然の話ですね。正解はこれ以外にはあり得ません。
4 都市化によって生活基盤の不充足等の社会問題が現れても,住民自身がその充足を目指す活動を起こすことはない。
言い切り表現に正解少なし
一人でも活動する人が現れたら,この命題は破たんします。
当然×ですね。
5 都市化によって公的なサービスが整備されれば,地域社会におけるボランティア活動や相互扶助的なサービス提供は必要でなくなっていく。
インフォーマルな社会資源は,フォーマルな社会資源を補完する関係性というよりは,インフォーマルだからできることはあります。
公的なサービスが整備されれば,今までインフォーマルな社会資源が担ってきたもののうちのいくつかは必要でなくなるものもあるかもしれません。
しかし・・・
必要でなくなっていく,ということはなさそうです。よって×。