社会学と社会システムの難解用語
しかし攻略ポイントはあります。
社会学と心理学は双子の学問
歴史を見るとどちらも哲学から生まれたものだからです。
心理学は,自分を見つめなおす内省的なものから始まり,20世紀になり,実験等から導き出された心理学が生まれます。学習理論などが提唱されていきます。
いかにも20世紀的モダニズムですね。
※モダニズム = 近代的(科学的の意味)
さて,改めて問題を見てみましょう。
第26回・問題20
社会的行為に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 目的合理的行為とは,ある目的を達成するために行われる行為を意味するので,祈願や祈祷などの行為もそれに含まれる。
2 伝統的行為とは,昔から家族や地域共同体等で行われてきたもので,季節の行事や慣習的な行為等を意味する。
3 価値合理的行為とは,信奉する価値の実現のために行われる行為を意味するので,その価値が実際に実現したかどうかという結果が重視される。
4 感情的行為とは,個人の内面における感情の表現が重視される行為を意味するので,社会的行為とはいえない。
5 コミュニケーション的行為とは,相互に相手の役割を確認しつつ行われる戦略的行為のことであって,相互了解や合意を目指すもので含まない。
ヴェーバーの理解社会学からの出題です。
理解社会学という言葉も難しいですね。
理解社会学
簡単にいうと・・・
理解社会学とは,人の行為には,意味(動機)があり,それを理解すること。
社会的行為は,社会の中で行われる人の動機を伴った行為
だということが言えます。
ところで,ヴェーバーといえば「官僚制」。
近代化を推進するする原理は「合理化」だとしています。
ヴェーバーのいう「合理化」「合理性」を理解するのは簡単ではありません。
あえて簡単にいうと・・・
合理化 → 理にかなったこと
ヴェーバーは行為を理解する理解社会学の提唱者なので,
理にかなう → ほかの人も理解できること
だと考えてよいと思います。
そこで,合理的行為を考えると・・・
理にかなった行為 → ほかの人が理解できる動機がある行為
だと理解しましょう。
●●合理的行為は・・・
●●が動機となっている行為
だとなります。
社会学は・・・
「食べる」という行為に対して,
なぜ「食べるのだろう」と考えます。
つまり,食べるという行為の裏にある動機です。
社会福祉学は,社会学から派生した学問です。
ソーシャルワーカーとしての視点がここにあります。
介護の視点は・・・
「食べない」ということについて
どうしたら食べてくれるのだろうか,を考えます。
福祉現場は,多職種連携が欠かせません。
専門職によるこの視点の違いにより,クライエントの理解が深まるからです。
社会学を苦手としている方は,多いと思います。
ときどきなぜその科目が社会福祉士の勉強のために必要なのかを考えてみると,理解しやすくなるのではないでしょうか。
ヴェーバーは,合理的行為を4つに分類しています。
目的合理的行為
目的を達するための行為
価値合理的行為
行為そのものに意味がある行為
伝統的行為
行為が習慣化・慣習化している行為
感情的行為
感情による行為
目的合理的行為が基本です。
理にかなっている行為であり,理解しやすい行為と言えます。
価値合理的行為・伝統的行為・感情的行為にも動機はありますが,理にかなっているのは,行為者本人であり,時としては,周りの人が理解するのは難しい行為だと言えるでしょう。
それでは問題を詳しく見ていきますね。
1 目的合理的行為とは,ある目的を達成するために行われる行為を意味するので,祈願や祈祷などの行為もそれに含まれる。
祈願や祈祷は,価値合理的行為,または伝統的行為です。
価値合理的行為の場合・・・
祈願や祈祷が本当に効果あると信じている
伝統的行為の場合・・・
困った時に祈願や祈祷する。効果を期待しているわけではない。
目的合理的行為は,祈願や祈祷をすることではなく,試験に受かりたいなら勉強する。病気を直したいのであれば病院に行く,などです。
よって×。
2 伝統的行為とは,昔から家族や地域共同体等で行われてきたもので,季節の行事や慣習的な行為等を意味する。
伝統的行為は,習慣化・慣習化している行為です。
よって◎。
3 価値合理的行為とは,信奉する価値の実現のために行われる行為を意味するので,その価値が実際に実現したかどうかという結果が重視される。
価値合理的行為は,行為そのものに意味があります。祈願するだけで試験に合格するのだったらとても嬉しいことですが,世の中はそんなに甘くはない。
合格するという結果を求めるのではあれば,価値合理的行為では難しいです。目的合理的行為(国家試験では,勉強すること)は,結果を重視した行為だといえます。
よって×。
4 感情的行為とは,個人の内面における感情の表現が重視される行為を意味するので,社会的行為とはいえない。
感情的行為は,他の人が理解するのは時には難しいですが,れっきとした社会的行為です。
よって×。
5 コミュニケーション的行為とは,相互に相手の役割を確認しつつ行われる戦略的行為のことであって,相互了解や合意を目指すもので含まない。
コミュニケーション的行為だけは,ヴェーバーではなく,ハーバーマスです。
コミュニケーションを取りながら,相手を理解し,合意を目指す行為がコミュニケーション的行為です。
よって×。
今日の結論
社会学と社会システムは本当に難しいですが,自分の言葉で理解し直すと,格段に理解は進みます。