ソーシャルワークの答えは一つではない
改めてソーシャルワークの実務を考えてみると・・・
「あとからこうすればよかった」と思うことはよくあるのではないでしょうか。
ソーシャルワークは,それでよいと思います。
これで良いと思うと,成長はそこで止まってしまうのではないでしょうか。
ソーシャルワークは,多くの場合,自分で考えて行動します。
人から指示されないと動けないワーカーでは,ご利用者が困ってしまいます。
教育プログラムは「ワーカーのあるべき姿」を目指して組み立てられています。
国試は,その集大成として実施されます。
テキストや参考書をどれだけ勉強しても,それだけでは解けない出題があるのは,考えるワーカーを育てたいという方針の表れだと言えます。
試験センターが繰り出す変化球は,クライエントの多様なニーズだと考えましょう。
多くの経験は,多様なニーズに対応するためのヒントになるはずです。
第26回・問題24
国試が終わった後に「今年の出題傾向は変わった」と言う方は多いです。
国試問題をよく見てみると,毎年少しずつ新しい出題の仕方がされています。
この問題も,現在見てみると斬新さはそれほどないと思いますが,受験した人はかなり面食らったはずです。
過去問題集で勉強すると詳しく解説されているので,あとから見るとそれほどの新奇さは感じられないと思います。
それでは詳しく見ていきますね。
1 欲求は,本人の発言で表現されなければ,ニーズ(必要)とはならない。
ブラッドショーのニードの分類は,知っていることを当然のこととしての出題です。
感得されたニード
表出されたニード
規範的ニード
比較ニード
「本人の発言で表現される」のは,表出されたニードに近いと言えるかもしれませんが,必ずしも発言しなければならない,ということはないです。
もちろん,感得されたニード,規範的ニード,比較ニードは,「本人の発言で表現される」ことはないです。
よって×。
2 充足すべきニーズ(必要)の把握は,行政や専門職が行い,本人や家族がこれに関与することはない。
これもブラッドショーにならって考えてみると,本人がニーズがあることを自覚しているのは,感得されたニード,表出されたニードです。関与していますね。
よって×。
3 社会福祉実践は,ニーズ(必要)のうち,その人が自覚し具体的に支援を求めるものを対象にする。
その人が自覚し具体的に支援を求めるのは,表出されたニードです。
本人が自覚していなくても,規範的ニード,比較ニードは専門家がニーズを把握して支援します。
よって×。
4 ニーズ(必要)充足のために平等な資源の量を分配すべきであるという考え方を,貢献原則と呼ぶ。
この中で,難しいのはこの選択肢でしょう。
貢献原則,必要原則が分かっている必要があります。
貢献原則とは,貢献した人には多く分配する福祉政策のことです。
必要原則とは,必要としている人に必要量分配する福祉政策のことです。
問題文は,貢献原則ではなく必要原則のことを述べています。
よって×。
5 同じ量の資源を用いても,ニーズ(必要)の充足のされ方は個人の健康状態や生活水準などに応じて異なる。
ニーズは,クライエントによって千差万別です。ニーズ充足も千差万別です。
よって〇ですね。
ニーズが千差万別だから,ソーシャルワークが単純化しないのは当然のことです。
千差万別なニーズに対応するために・・・
ワーカーには確実な専門知識をもち,それを柔軟に運用できる柔軟性が求められます。
そのために,国試は簡単に解けるものばかりではだめなのです。