2024年3月16日土曜日

国試は社会福祉士に求める力の具現化を目指して出題する

 

ソーシャルワークの答えは一つではない

 

改めてソーシャルワークの実務を考えてみると・・・

 「あとからこうすればよかった」と思うことはよくあるのではないでしょうか。

 

ソーシャルワークは,それでよいと思います。

 

 

これで良いと思うと,成長はそこで止まってしまうのではないでしょうか。

 

ソーシャルワークは,多くの場合,自分で考えて行動します。

 人から指示されないと動けないワーカーでは,ご利用者が困ってしまいます。

 

教育プログラムは「ワーカーのあるべき姿」を目指して組み立てられています。

 国試は,その集大成として実施されます。

 

テキストや参考書をどれだけ勉強しても,それだけでは解けない出題があるのは,考えるワーカーを育てたいという方針の表れだと言えます。

 

試験センターが繰り出す変化球は,クライエントの多様なニーズだと考えましょう。

多くの経験は,多様なニーズに対応するためのヒントになるはずです。

 

 過去問をたくさん解くことは,経験をたくさん積み重ねていくことと同じです。

 

 それでは今日の問題を見ていきましょう。

 

 

26回・問題24 

 ニーズ(必要)に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

 1 欲求は,本人の発言で表現されなければ,ニーズ(必要)とはならない。

 2 充足すべきニーズ(必要)の把握は,行政や専門職が行い,本人や家族がこれに関与することはない。

 3 社会福祉実践は,ニーズ(必要)のうち,その人が自覚し具体的に支援を求めるものを対象にする。

 4 ニーズ(必要)充足のために平等な資源の量を分配すべきであるという考え方を,貢献原則と呼ぶ。

 5 同じ量の資源を用いても,ニーズ(必要)の充足のされ方は個人の健康状態や生活水準などに応じて異なる。

 

 

国試が終わった後に「今年の出題傾向は変わった」と言う方は多いです。

 

国試問題をよく見てみると,毎年少しずつ新しい出題の仕方がされています。

 

この問題も,現在見てみると斬新さはそれほどないと思いますが,受験した人はかなり面食らったはずです。

 

過去問題集で勉強すると詳しく解説されているので,あとから見るとそれほどの新奇さは感じられないと思います。

 

 

それでは詳しく見ていきますね。

 

 

1 欲求は,本人の発言で表現されなければ,ニーズ(必要)とはならない。

 

 

ブラッドショーのニードの分類は,知っていることを当然のこととしての出題です。

 

感得されたニード

表出されたニード

規範的ニード

比較ニード

 

「本人の発言で表現される」のは,表出されたニードに近いと言えるかもしれませんが,必ずしも発言しなければならない,ということはないです。

もちろん,感得されたニード,規範的ニード,比較ニードは,「本人の発言で表現される」ことはないです。

 

よって×。

 

 

2 充足すべきニーズ(必要)の把握は,行政や専門職が行い,本人や家族がこれに関与することはない。

 

 

これもブラッドショーにならって考えてみると,本人がニーズがあることを自覚しているのは,感得されたニード,表出されたニードです。関与していますね。

 

よって×。

 

 

3 社会福祉実践は,ニーズ(必要)のうち,その人が自覚し具体的に支援を求めるものを対象にする。

 

 

その人が自覚し具体的に支援を求めるのは,表出されたニードです。

 

本人が自覚していなくても,規範的ニード,比較ニードは専門家がニーズを把握して支援します。

 

よって×。

 

 

4 ニーズ(必要)充足のために平等な資源の量を分配すべきであるという考え方を,貢献原則と呼ぶ。

 

 

この中で,難しいのはこの選択肢でしょう。

 

貢献原則,必要原則が分かっている必要があります。

 

貢献原則とは,貢献した人には多く分配する福祉政策のことです。

必要原則とは,必要としている人に必要量分配する福祉政策のことです。

 

問題文は,貢献原則ではなく必要原則のことを述べています。

 

よって×。

 

 

5 同じ量の資源を用いても,ニーズ(必要)の充足のされ方は個人の健康状態や生活水準などに応じて異なる。

 

 

ニーズは,クライエントによって千差万別です。ニーズ充足も千差万別です。

 

よって〇ですね。

 

 

ニーズが千差万別だから,ソーシャルワークが単純化しないのは当然のことです。

 

 〈今回のまとめ〉


千差万別なニーズに対応するために・・・

 

ワーカーには確実な専門知識をもち,それを柔軟に運用できる柔軟性が求められます。

 

そのために,国試は簡単に解けるものばかりではだめなのです。

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