多くの方が合格されることを願っています。
さて,前回は,「誤っているものを選ぶ問題」をご紹介しました。
自分で,問題を作ってみれば分かりますが,「正しいものを選ぶ問題」と「誤っているものを選ぶ問題」では,「正しい問題を選ぶ問題」の方が作問が難しいです。
誤っているものを1つ選ぶ問題は,誤っているものは1つ
正しいものを1つ選ぶ問題は,誤っているものは4つ
間違い選択肢をそれっぽく作ることが難しいのです。
さて,今までの国試で最も難しかったと言われる第25回国試問題を見てみましょう。
第25回・問題21
環境問題のとらえ方に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 自然環境主義とは,生活上の知識や経験の集成である生活文化,地域に固有の環境への働きかけの伝統をもとに,当該地域の居住者の生活の立場から環境問題の所在や解決方法を考えようとする立場である。
2 自然資源の共同管理制度及び共同管理の対象である資源そのものを意味するコモンズは,環境資源の慣習的な共同管理制度を持つ伝統社会では環境保全に役立っていたが,私有財産制の社会には存在しない。
3 環境問題では,被害・苦痛を被る範囲である受苦圏と利益・便益を受ける範囲である受益圏とが一致しないことが多いなか,ニンビー(NIMBY)と呼ばれる社会運動が提起されると,その多くは社会的理解を得て,問題解決の促進に役立っている。
4 環境問題では,低所得層や人種的マイノリティなど社会的弱者に対して被害が集中することがある。このような不平等を是正し,あわせて環境からの便益の分配における不平等も是正しようという考え方を環境正義という。
5 経済成長と環境保全は二律背反的なものであり,技術革新によって環境保全を図ることはできるが,同時に経済成長も持続していくことはできないという考え方をエコロジー的近代化という。
毎年,解けなくも良い問題は出題されますが,この問題はその筆頭だと思います。
今なら,参考書にも掲載されていると思うので,分かる人もいるかもしれません。
しかし,この国試が実施された当時,この問題を解けた人はほとんどいなかったものと思います。
前回は,正しいものを選ぶ問題は,すべて正しく見える
と言いました。
その逆に,
すべて間違っているようにも見える
何を書いているのかさっぱり分からないので,正しいのか間違っているのかの判断ができないからです。
正解は4だそうです。
答えを聞いても,「ふ~ん,そうなんだ」という感じてはないでしょうか。
しかし,文章が長い問題文だと,下手に作問すると,文章に不自然さが生まれる率が高くなります。
そのため,丁寧に読めば,何となくでも間違いは見えてくることもあります。
口の悪い人は,国語の試験である,と言ったものです。
それに比べると,今は問題文が短いので,文章の不自然さはほとんど発生しないでしょう。
第30回問題と比べてみましょう。
第30回・問題17
次の記述のうち,ウェルマン(Wellman,B.)の「コミュニティ解放論」の説明として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 特定の関心に基づくアソシエーションが,コミュニティを基盤として多様に展開している。
2 都市化の進展によってコミュニティは喪失若しくは解体されている。
3 都市化が進展しても,近隣を単位としたコミュニティは存続している。
4 交通通信手段の発達によって,コミュニティは地域という空間に限定されない形で新しく展開している。
5 コミュニティが,地域での自立生活を可能にする対人サービスを提供するようになっている。
答えは,4。
ものすごくシンプルな言い回しになっています。
知識がある人は,答えをすぐ選べる
知識がない人は,すべてが正しく見えて,すべてが間違って見える
知識の有無が,明確に現れます。
受験生にはとても厳しいことですが,勉強不足では,合格することはできない試験に生まれ変わったと言えます。
3か月の集中学習で合格するには,今の国試はハードルが高いです。
昔の国試では通用した勉強法でも今には合わない勉強法になっているかもしれません。
そこに注意する必要があります。