今日のテーマは,
「医学概論」は実は難しい!!
です。
先述のように,この科目は試験では最初の科目です。
そのため,一般的な参考書では,この科目が一番初めにあると思います。
過去問は,最初は解けなくても何度か解いているうちに,難しさを感じなくなります。
そこがこの国試のとても怖いところです。
この科目は,
常に新しい問題が出題されている
後から勉強する人は,参考書にも書かれているし,過去問題集にも詳しく解説されているので,初めて出題されたものであっても,勉強することができます。
しかし,国試を受験すると,「あれっ? 見たことがない」と焦ることになります。
理由は,しつこいですが,常に新しい問題が出題されているからです。
ここで,「あれだけ勉強したのにわからない」と思う受験生は多いと思います。そう思うと,気持ちで負けます。
見たことがない問題にぶつかったら「いつもと同じパターンだ!」と思うようにしましょう。これで周りの受験生と大きな差がつきます。
この科目は,出題範囲が広いため覚えることが多いですが,参考書に書かれていることをしっかり覚えたとしても,それ以外のものが出題されることがやっかいです。
深入りしすぎないことがこの科目攻略には重要です。
さて,今日の問題です。
第27回・問題5 障害の概要に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 外傷性脳損傷は,高次脳機能障害の原因の一つである。
2 失行は,リハビリテーションの対象にならない。
3 周産期障害では,知的障害を起こすことはない。
4 咀嚼(そしゃく)や嚥下機能の障害は,身体障害者福祉法による内部障害に含まれる。
5 平衡機能障害における起立や歩行の障害は,下肢の筋力低下が原因である。
前回の問題のように,1テーマで1問になっているものも解くのは大変ですが,知っていれば何とかなります。
それに比べると,1問にさまざまなテーマが入っている問題は,押さえなければならないポイントが多いだけに,間違える率が高くなります。
知らない選択肢が挟みこまれることがあるので,難易度はおのずと高くなります。
慎重に解いていきましょう。
それでは詳しく見ていきましょう。
1 外傷性脳損傷は,高次脳機能障害の原因の一つである。
高次脳機能障害は頭部外傷などによって,記憶障害等が発生するものです。よって正解です。
高次脳機能障害を知っている人は,とても簡単だと思うと思うかもしれません。
しかし,知らない人はとても難しい問題となります。
因みに過去に高次脳機能障害について出題された問題は以下です。
第18回・問題77 次の組み合わせのうち,正しいものに〇,誤っているものに×をつけなさい。
A 在宅酸素療法---------肺気腫
B 外傷性脳損傷---------高次脳機能障害
C トリアージュ---------災害時の医療の優先度
D EBM---------------個人的根拠に基づく医療
今は出題されない「○×式の組み合わせ問題」です。面倒なので組み合わせは紹介しませんが,答えはABCが○,Dが×。
EBMは,根拠に基づく医療です。この場合の根拠とは個人的根拠ではなく,データに裏付けされたといった意味合いです。
2 失行は,リハビリテーションの対象にならない。
失行とは,認知症などにより,頭では分かっていてもうまく行動できなくなることです。認知症の場合,失行は記憶障害など同じ中核症状です。
薬剤では改善せず,リハビリテーションなどで症状の進行予防を図ります。よって間違いです。
3 周産期障害では,知的障害を起こすことはない。
周産期とは,胎児期と新生児期に発生する障害です。そのうち,分娩時の低酸素症は,脳性麻痺を起こすことがあります。よって間違いです。
かつて脳性麻痺は,分娩時の低酸素症が原因だと思われていたこともありますが,今では,分娩時の低酸素症は脳性麻痺の原因の一つであることが分かってきています。
4 咀嚼(そしゃく)や嚥下機能の障害は,身体障害者福祉法による内部障害に含まれる。
要注意なのは,障害の種類のうちで最も多い肢体不自由ではなく,近年増加している内部障害です。
内部障害は,心臓機能,腎臓機能,HIVによる免疫機能,そして肝臓機能などの障害です。
咀嚼(そしゃく)や嚥下機能の障害は,何の障害かは分からなくて少なくとも内部障害ではないという見当をつけることが大切です。
咀嚼(そしゃく)や嚥下機能の障害は,「音声・言語・そしゃく機能の障害」です。よって間違いです。
5 平衡機能障害における起立や歩行の障害は,下肢の筋力低下が原因である。
平衡機能障害は,身体機能には異常が認められないものの起立や歩行に障害が起きるものです。
下肢の筋力低下が原因ではありません。よって間違いです。
この科目が福祉職である社会福祉士の試験科目に含まれているのは,疾患,障害の知識は,相談援助に必要だからです。
<今日のポイント>
高次脳機能障害が分かる人は正解できます。
しかし分からない人は,これを選べません。
そんな時でも正解に導く方法はあります。
1 外傷性脳損傷は,高次脳機能障害の原因の一つである。
2 失行は,リハビリテーションの対象にならない。
3 周産期障害では,知的障害を起こすことはない。
4 咀嚼(そしゃく)や嚥下機能の障害は,身体障害者福祉法による内部障害に含まれる。
5 平衡機能障害における起立や歩行の障害は,下肢の筋力低下が原因である。
1は▲をつける。
2と3は,言い切り表現なので×になりそう。
4は,内部障害を知っていること。
5は,筋力低下で障害認定はされないだろう。別な要因があるのではないか。という疑問。
その結果として,▲だった選択肢1を○に格上げする。
このように限られた時間の中でも推理していくことが得点力を上げます。
「分からない,困った,どうしよう」では,得点には結びつきません。
「私はできる」
という自信が正解に導きます。「あれだけやったのに,分からない」と思うと試験に負けます。
推理力は自信を持って試験に臨むことで最大限に発揮されます。
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