とても厳しい国試になりました。
「とても厳しい」は,あいまいな知識は許されなかったという意味です。
しかし,それはいつも同じことです。
合格基準点が99点だったら,何点を目指したらよいのか。
満点を目指さなければならないのか。
といった不安が高まることと思います。
その気持ちはよく分かります。
しかし,満点を目指そうとする人は失敗します。
試験センターが目指しているのは,合格率30%,合格基準は6割程度です。
今年は,それに合わせて問題を作ったら,振れ幅が大きすぎたのです。
なぜ今年は振れ幅が大きくなったのかと言えば,文字数も関係関係しますが,5つの選択肢の中にでたらめなものが含まれない問題が多かったことが関連しているように思います。
問題で確認しましょう。
第24回・問題15 法と社会・そこに成立する秩序との関係に関する次の記述のうち,適切なものを一つ選びなさい。
1 形式的に正しい手続きによって定められた規則による支配が合法的支配であり,この支配においては命令者の合理的利害に沿って規則が再編されていく。
2 法律家は,弱きを助け強さをくじくリーガルマインドという共通の正義感を身につけており,それを共有する連帯意識によって明確な社会層をなしている。
3 法治国家においても,個人の権利が不当に侵害された場合,まずは市民自身が強制力を行使して自力救済の努力をすることが望ましいと考えられている。
4 人々の私的利益の追求は利害対立を生み,万人の万人に対する闘争状態が予想されるなかで,社会秩序がなぜ可能となるのかを問うことをホッブズ問題という。
5 非ゼロサムゲームでは,ある行為者が利益を得ても他の行為者が損失を被るとは限らないので,損失を負わせるべく行為者間には対抗関係が生じていく。
答えは4。
今なら,参考書に書いてあるので,ホッブズ問題とは何か,何か分かる人もいるでしょう。
しかし,この時点では難易度が極めて高い問題でした。
第30回・問題20 次の記述のうち,「共有地の悲劇」に関する説明として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 公共財の供給に貢献せずに,それを利用するだけの成員が生まれる状況を指す。
2 協力してお互いに利益を得るか,相手を裏切って自分だけの利益を収めるか,選択しなければならない状況を指す。
3 他の成員の満足度を引き下げない限り,ある個人の満足度を引き上げることができない状況を指す。
4 それぞれの個人が合理的な判断の下で自己利益を追求した結果,全体としては不利益な状況を招いてしまうことを指す。
5 社会全体の幸福が,諸個人の快楽から苦痛を引いた後に残る快楽の総計と一致する状況を指す。
答えは,4。
第24回の問題との問題の作り方の違いは,第24回の問題は,正解選択肢以外の選択肢は,でたらめの文章で構成されているのに対し,第30回の問題は,共有地の悲劇ではないものの,文章は,他のものを指しています。
第30回の問題は,消去法ではなく,「答えはこれだ」と分かる人は多かったと思います。
さて,今日のテーマの「満点を目指した勉強は失敗する」です。
おそらく多くの受験生は,今年の国試結果を見て,不安が高まっていることだと思います。
たくさんの知識を詰め込もうとするでしょう。
しかし,覚えることに必死になり,思考を使わなければ,おそらく国試では得点できないと思います。
なぜなら,国試は
少しずつ同じ(重なって)で,少しずつ違う
からです。
第31回の国試では,今日の問題の第30回のような問題は多用せず,必要最低限に絞り込まれます。
その代わりに,でたらめ問題が復活してくることでしょう。
しっかり勉強した人は得点できる。
あいまいな知識だった人は得点できない。
第30回の国試で残念な結果になった方は,ぜひ問題を見直してみてください。
おそらく,多くの方は,今だったら合格基準点を超える点数が取れる可能性が高いです。
知識不足で点数が取れていないのではなく,あいまいだったために,答えを変えてしまった,といったことも生じたのではないでしょうか。
そういった方は,知識を増やすのではなく,一つひとつの知識を確実にすることが求められるのではないでしょうか。
国試は,7割を落とす試験ではなく,3割を合格させるもの!!
合格基準点が99点になったことにいきどおりを感じる方もいらっしゃるかもしれません。
合格基準点を下げずに,合格率を3割に保ったことは,社会福祉士という資格のブランド性を維持することになったのではないかと思います。
私たちは多くのデータとそこから得られたノウハウを持っています。
私たちと一緒に,3割に入ることを目指して頑張っていきましょう!!