2018年3月19日月曜日

国試に合格する勉強法~ICF(国際生活機能分類)の押さえ方

社会福祉士の国家試験問題は,

少しずつ同じ(重なって)で,少しずつ違う

が特徴です。

そのため,しっかり覚えておかないと解けそうで解けない,という事態に陥ります。

さて,今日の問題です。

第27回・問題2

国際生活機能分類(ICF)の基本的考え方と概要に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 機能障害とは,個人が何らかの生活・人生場面にかかわるときに経験する離しさのことである。
2 参加とは,生活・人生場面へのかかわりのことである。
3 生活機能と障害の構成要素は,環境因子と個人因子である。
4 背景因子の構成要素は,心身機能と身体構造,活動と参加である。
5 ICFは,病気やその他の健康状態を病因論的な枠組みに立って分類したものである。

今日の問題はICFです。
ICFは
第22・25・27・28回に出題されています。

ICFで押さえておきたい用語

活動 ➡ 個人による課題や行為の遂行。

参加 ➡ 生活・人生場面へのかかわり。

活動制限 ➡ 活動(個人による課題や行為の遂行)が難しいこと。

参加制約 ➡ 参加(生活・人生場面へのかかわり)が難しいこと。

活動と参加の整理の仕方

活動 ➡ 単に身体を動かしていること。例:散歩など。

参加 ➡ 活動して何かに「かかわる」こと。例:歩いて知人に会いに行く。

2つある場合は,どちらか1つだけを覚えるのがコツです。

それでは詳しく見ていきましょう。

1 機能障害とは,個人が何らかの生活・人生場面にかかわるときに経験する離しさのことである。

個人が何らかの生活・人生場面にかかわるときに経験する離しさは,参加制約です。よって間違いです。

機能障害は,言葉どおり心身機能の障害のことです。

2 参加とは,生活・人生場面へのかかわりのことである。

これが正解です。

3 生活機能と障害の構成要素は,環境因子と個人因子である。

前説では触れませんでしたが,ICFでは生活機能と障害に影響を与える「背景因子」という概念を提示しています。

背景因子には,「個人因子」(その人個人によるもの)と「環境因子」(その人が生活している環境によるもの)があります。つまり環境因子と個人因子は背景因子です。よって間違いです。

4 背景因子の構成要素は,心身機能と身体構造,活動と参加である。

背景因子の構成要素は,先述のように「個人因子」と「環境因子」です。

よって間違いです。

5 ICFは,病気やその他の健康状態を病因論的な枠組みに立って分類したものである。

ICFの特徴は,医学モデル(病因論)ではなく,生活モデルの視点で作られたものです。

よって間違いです。

第28回には,以下のように続けて出題されています。

第28回・問題3 国際生活機能分類(ICF)に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 対象は,障害のある人に限られる。
2 障害を,社会環境から切り離して捉えている。
3 健康状況とは,課題や行為の個人による遂行のことである。
4 障害を機能障害,能力障害,社会的不利に分類したものである。
5 世界保健機関(WHO)により採択され,国際的に用いられている。

正解は5。

第27回と第28回で重なっているのは,
課題や行為の個人による遂行(活動)だけです。

第27回の直近に出題された問題は,以下です。

第25回・問題4 国際生活機能分類(ICF)に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 健常者も障害者も区別なく,個別性はあっても「健康状態」という一つの概念のもとにとらえられるという考え方をしている。
2 機能障害,能力障害,社会的不利のように,「障害」を分類したものである。
3 「健康状態」に含まれる心身機能・身体構造,活動・参加に関与する因子として,「遺伝因子」を含めている。
4 「障害」は,「環境因子」とは無関係なものととらえている。
5 症状が進行中あるいはまだ治癒していない場合を「疾患」と呼び,それが固定あるいは永続した場合を「障害」と呼んでいる。

答えは1。
第27回につながるのは,「背景因子」と「障害」です。
選択肢5は,第30回国試には見られなかった「でたらめな問題」です。そのような選択肢がジャブのように正解を選ぶときに影響を与えてきます。

第27回の問題を過去問の知識で解くためには,第22回の以下の問題の知識が必要です。

第22回・問題4 
国際生活機能分類(ICF)の基本的考え方と概要に関する次の記述のうち,正しいものを一つ選びなさい。
1 活動とは,生活・人生場面へのかかわりである。
2 参加とは,個人による課題や行為の遂行のことである。
3 活動制限とは,個人が何らかの生活・人生場面にかかわるときに経験する難しさのことである。
4 参加制約とは,個人が活動を行うときに生じる難しさのことである。
5 活動と参加は,単一のリストに属している。

答えは5。
活動,参加,活動制限,参加制約の4つの用語が勢ぞろいしています。
それぞれを消去して,選択肢5が消去法で残ります。
第22回の問題がベースになり,その後の問題が展開されているのが分かるでしょう。

これが,

国試は少しずつ同じ(重なって)で,少しずつ違う

という意味です。

過去3回の過去問の知識ではどうにもにならないことを実感してほしいのです。

国試には,決して近道はありません。

現行カリキュラムでICFに関する出題は,今日の問題に加えて以下の問題があります。

第28回・問題57 事例を読んで,国際生活機能分類(ICF)の「参加制約」に該当するものとして,最も適切なものを1 つ選びなさい。
〔事例〕
 E さん(49 歳,男性)は,脳性麻痺で足が不自由なため,車いすを利用している。25 年暮らした障害者支援施設を退所し1 年がたつ。本日,どうしても必要な買物があるが,支援の調整が間に合わない。その場での支援が得られることを期待して,一人で出掛けた。店まで来たが,階段の前で動けずにいる。
1 脳性麻痺で足が不自由なこと
2 階段があること
3 支援なしで外出できること
4 店で買物ができないこと
5 障害者支援施設を退所したこと

事例で出題されて来ました。参加制約は,選択肢4の「店で買い物ができないこと」です。
買い物が買い物をするだけの意味なら活動になりますが,買い物という活動を通して,たとえば定員と会話する,などさまざまな意味合いがあります。

参加制約と活動制限の違いはしっかり押さえておきましょう。


〈今日のまとめ〉

国試は,少しずつ違う

といった出題を続けています。

ここに対応するためには,地道な勉強は欠かせないのです。

ICFの出題は,実に5問もあります。

それでも次に出題してくる時には,どこかを変えながら出題されるでしょう。でたらめ選択肢も含めて出題することもあります。

地道な勉強とは,丸暗記を意味するものではなく,意味を理解していくことに他なりません。

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