国家試験の自己採点をすると・・・
「2つまでは絞れた。しかし,ことごとく間違った方を選んでしまった」
という感想を持つ人は多いようです。
前回は,10回前の第21回国試問題を紹介しました。
今日は,第11回国試から検証します。
第11回・問題1
社会福祉の人権保障理念を方向づける憲法や権利宣言・条約等に関する次の記述のうち,誤っているものを一つ選びなさい。
1 「世界人権宣言」(1948年12月国連総会採択)には,すべて人は「社会保障を受ける権利」と「自己の尊厳と自己の人格の自由な発展とに欠くことのできない経済的,社会的,文化的権利の実現に対する権利」を有することがうたわれている。
2 世界の憲法史上で最初に生存権を規定したのは,日本国憲法(1946年(昭和21年)である)。
3 社会福祉関係法の基本は日本国憲法第25条の「生存権」であるが,関連して同第13条「幸福追求権」及び第14条「平等権」なども重要である。
4 「児童の権利に関する条約」(1989年11月国連総会採択)には,児童に関するすべての措置をとるに当たって「児童の最善の利益」を考慮すべきことが規定されている。
5 障害者関係の権利宣言としては,「知的障害者の権利宣言」(1971年12月国連総会採択)及び「障害者の権利宣言」(1975年12月国連総会採択)がある。
さて,ここであることに気づいた人がいることでしょう。
今はない「誤っているもの」を選ぶ問題です。
旧カリキュラム時代は,「正しいもの」「誤っているもの」を選ぶ問題が混在していました。
今の「1つ選ぶ」「2つ選ぶ」問題が混在しているのと同じようなものでしょう。
答えは,2。
世界で初めて生存権を規定したのは・・・
ドイツのワイマール憲法(1919)です。
今なら,選択肢5は,おそらく障害者権利条約になることでしょう。
そして,選択肢4の児童権利条約に関しては,能動的権利の保障の内容になるのではないでしょうか。
しかし,基本的には今でも十分に使える問題だと思います。
この年の合格率は,29.5%
ボーダーラインはまだ発表していない時代です。
現在よりも,合格率は高めです。
その理由は,「正しいものを選ぶ」問題よりも,「誤っている問題」を選ぶ問題の方が解きやすいからです。
この問題でも,世界で初めて生存権が規定されたのはワイマール憲法だと分かれば,すぐに答えが分かります。
その当時もそれなりに難しかったのですが,問題の作られ方から考えると,現在の方が難易度は高いです。
今日の問題なら,消去法を使わずして,知識があればすぐ正解を選べます。
極端なことを言うと,ほかの選択肢の内容が分からなくても何とかなりそうです。
出題が変われば,覚え方・解き方も変わります。
「正しいものを選ぶ」という問題は,すべてが正しく見える!!
これが,「2つまでは絞れた。しかし,ことごとく間違った方を選んでしまった」ということの裏にある真実です。
現在の国試問題は,問題文の文字数が少なくなっています。
そのため,言い回しの不自然さで,「これは間違っていそうだ」と消去できる問題はほとんどなくなっています。
より確実に消去できる知識が必要になっています。
国試は,一見解けそうでも,実は間違う問題が多いです。
「正しいものを選ぶ」という問題は,すべてが正しく見えるからです。
最新の記事
障害者総合支援法に規定される障害福祉サービスの実施主体
障害者総合支援法に規定される障害福祉サービスの実施主体は,市町村です。 同法における都道府県の役割は,障害福祉計画の作成,地域生活支援事業の実施,障害福祉サービス事業者等の指定などに限られます。 なお,自立支援医療には,育成医療,更生医療,精神通院医療の3種類がありますが,このう...
過去一週間でよく読まれている記事
-
1990年(平成2年)の通称「福祉関係八法改正」は,「老人福祉法等の一部を改正する法律」によって,老人福祉法を含む法律を改正したことをいいます。 1989年(平成元年)に今後10年間の高齢者施策の数値目標が掲げたゴールドプランを推進するために改正されたものです。 主だった...
-
問題解決アプローチは,「ケースワークは死んだ」と述べたパールマンが提唱したものです。 問題解決アプローチとは, クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する方法です。 このアプローチで重要なのは,「ワーカビリティ」という概念です。 ワー...
-
ソーシャルワークは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークとして発展していきます。 その統合化のきっかけとなったのは,1929年のミルフォード会議報告書です。 その後,全体像をとらえる視座から問題解決に向けたジェネラリスト・アプローチが生まれます。そしてシステム...
-
ホリスが提唱した「心理社会的アプローチ」は,「状況の中の人」という概念を用いて,クライエントの課題解決を図るものです。 その時に用いられるのがコミュニケーションです。 コミュニケーションを通してかかわっていくのが特徴です。 いかにも精神分析学に影響を受けている心理社会的ア...
-
今回は,ケアマネジメント(ケースマネジメント)のモデルを紹介しますが,似たような問題はもう出題されないかもしれません。 主要なテキストには,掲載されていないからです。 因みに,中央法規のテキストには,以下の4つが紹介されています。 ブローカーモ...
-
今回は,グループワーク(集団援助技術)の主な理論家を学びます。 グループワークの主な理論家 コイル セツルメントやYWCAの実践を基盤とし,グループワークの母と呼ばれた。 また,「グループワーカーの機能に関する定義」( ...
-
様々なアプローチは,毎年必ず出題されています。 しかも3~4問が出題されています。 ようやく出題実績のある12種類が揃いました。 ・心理社会的アプローチ 「 状況の中の人 」を基本概念として,心理社会的に課題のあるクライエントに対して,コミュニケーションを通して関わってい...
-
社会保障制度審議会は,かつて内閣総理大臣の諮問機関として,社会保障制度を審議していたもので,現在は廃止されています。 国家試験に出題されている同審議会の勧告は,1950年勧告,1962年勧告,1995年勧告の3つです。 〈1950年勧告〉 1950年勧告は,社会保障の範囲と方法を...
-
今回は,記録の文体を学びます。 主な記録の文体 項目体 クライエントの基本的属性に関する事項を整理して記述する。 叙述体 経過記録などに用いられ,ソーシャルワーク過程の事実経過を簡潔...
-
今回は,ロールズが提唱した「格差原理」を学びましょう。 格差原理とは,格差(社会的や経済的に不平等があること)は,最も恵まれない人に用いられる場合にのみ認められること。 格差があることを認めないのではなく,格差があっても,それがその社会の中で最も恵まれない人の利益になるような仕組...