2023年6月6日火曜日

申請保護の原則

生活保護法の基本原理と原則は,毎年のように出題されています。


ところで,原理と原則の違いはわかりますか?


これを理解しておかないと,さまざまな形で引っ掛けようとする問題に容易に引っ掛けられてしまいます。


原理には,例外がありません。


原則には,例外があります。


今日のテーマは,申請保護の原則です。


例外があるのが原則の特徴です。


申請保護の原則の場合の例外は,要保護者が急迫した状況にあるときは,保護の申請がなくても,必要な保護を行うことができることです。


それでは,今日の問題です。


第29回・問題69 生活保護の決定と実施に関する次の記述のうち,正しいものを2つ選びなさい。

1 他の法律に定める扶助は,生活保護法による保護に優先して行われる。

2 生活に困窮していても借金がある場合は,保護を受けることができない。

3 資力調査等に日時を要する場合は,保護の開始の申請から60日まで保護の決定を延ばすことができる。

4 急迫した状況にある場合は,資産等の調査を待たずに保護を開始することができる。

5 生活保護法による生活扶助は,居宅よりも保護施設において行うことが優先される。


生活保護の決定と実施に関する問題を確実に正解するためには,基本原理・原則を押さえておくことが必要です。


それでは解説です。


1 他の法律に定める扶助は,生活保護法による保護に優先して行われる。


これが1つめの正解です。


補足性の原理を述べたものです。


補足性の原理 ➡ 保護は,生活に困窮する者が,その利用し得る資産,能力その他あらゆるものを,その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。扶養義務者による扶養が保護に優先して行われる。


気をつけなければならないのは,扶養義務者がいても,扶養義務者が扶養できない場合は,保護を受けることができます。


2 生活に困窮していても借金がある場合は,保護を受けることができない。


借金があっても保護を受けることができます。


無差別平等の原理があるため,このような欠格条項はありません。


無差別平等は「原理」です。


3 資力調査等に日時を要する場合は,保護の開始の申請から60日まで保護の決定を延ばすことができる。


保護の可否は,14日以内に通知しなければなりません。


しかし,資力調査等に日時を要する場合は,保護の開始の申請から30日まで保護の決定を延ばすことが可能です。


4 急迫した状況にある場合は,資産等の調査を待たずに保護を開始することができる。


これがもう一つの正解です。


申請保護は「原則」です。


窮迫した場合は,職権保護が行われます。職権保護が例外です。


保護した後に,資産があることが判明した場合は,その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において保護の実施機関の定める額を返還することになります。


5 生活保護法による生活扶助は,居宅よりも保護施設において行うことが優先される。


生活扶助は,原則,金銭給付です。

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