社会福祉士の国家試験に出題される福祉計画の中で,最も重要なのは「地域福祉計画」です。
ほかの福祉計画の上位計画と位置づけられているからです。
その根拠です。
社会福祉法
市町村地域福祉計画 第107条 市町村は、地域福祉の推進に関する事項として次に掲げる事項を一体的に定める計画(以下「市町村地域福祉計画」という。)を策定するよう努めるものとする。 一 地域における高齢者の福祉、障害者の福祉、児童の福祉その他の福祉に関し、共通して取り組むべき事項 都道府県地域福祉支援計画 第108条 都道府県は、市町村地域福祉計画の達成に資するために、各市町村を通ずる広域的な見地から、市町村の地域福祉の支援に関する事項として次に掲げる事項を一体的に定める計画(以下「都道府県地域福祉支援計画」という。)を策定するよう努めるものとする。 一 地域における高齢者の福祉、障害者の福祉、児童の福祉その他の福祉に関し、共通して取り組むべき事項 |
このように地域福祉計画は重要なものですが,策定に関しては「努力義務」,策定期間の定めはありません。
その理由は,自治事務に位置づけられているからです。
さて,今日のテーマは,「介護保険事業計画と障害福祉計画の策定期間」です。
この2つの計画は,いずれも3年を一期として定めます。
主だった計画の中で,3年を一期として定めるのは,この2つと障害児福祉計画だけです。
そのほかの計画は,5年を一期として定めるか,地域福祉計画のように策定期間の法規定はないものに分かれます。
歴史を紐解けば,介護保険事業計画も第1期と第2期までは5年を一期として定めていました。
しかし,単純に5年を一期として定めるのではなく,5年を一期として3年ごとに定めることになっていました。
このことから,役人の頭の中には,3年を一期という概念はなかったことがわかるようです。
3年ごとに定めることは,介護保険にとって極めて重要なことです。
その理由は,第一号被保険者の保険料を定める必要があるからです。3年間に介護保険サービスを利用する量を見積り,それを市町村内の第一号被保険者の人数で割って,第一号被保険者の保険料を定めます。
そのために5年では長すぎたのでしょう。5年後のことを予測するのはかなり困難です。
そのうち誰かが気づきました。
「5年を一期として3年ごとに定めるのだったら,3年を一期として定めても同じではないか」
まさにコロンブスの卵的な発想の転換です。
その時にできたのが「障害者自立支援法」です。同法に基づく障害福祉計画は介護保険事業計画のように金額を定めることはないので,本来は5年を一期としてもよかったのだと思いますが,両計画は関連を持たせた方が施策上何かと都合が良いので,3年を一期とすることになったものだと考えられます。その後策定義務ができた障害児福祉計画も3年を一期となっています。
現在では,地域包括ケアシステムの構築のため,従来5年を1期として定めていた「医療計画」と「医療費適正化計画」は6年を一期と変更されています。
6年を一期とすることによって,医療と介護の計画は6年ごとに同時スタートさせることができます。
5年を一期とするのであれば,同時スタートは15年に1回しか生まれません。
それでは,今日の問題です。
第30回・問題47 次の福祉計画のうち,現行法上の計画期間が5年を一期とするものを1つ選びなさい。
1 市町村介護保険事業計画
2 市町村老人福祉計画
3 市町村障害福祉計画
4 市町村子ども・子育て支援事業計画
5 市町村地域福祉計画
3年を1期とするものなら,答えを出すのは簡単ですが,この問題は5年を一期とするものです。
その分,ちょっと難しいかもしれません。
それでは解説です。
1 市町村介護保険事業計画
3 市町村障害福祉計画
これらは,前説のように3年を一期として定めます。
2 市町村老人福祉計画
老人福祉計画は,1990年(平成2年)の福祉関係八法改正で,策定が義務づけられたものです。
日本の福祉計画の歴史はここから始まったものだと言うことができるでしょう。
しかし,策定期間は定められていません。
とは言うものの,現在は介護保険事業計画と一体で定めるので,実態的には3年ごとに定めるものとなるのかもしれません。
4 市町村子ども・子育て支援事業計画
これが正解です。子ども・子育て支援事業計画は,福祉計画で最も一般的な「5年を一期」として定めるグループの一つです。
5 市町村地域福祉計画
地域福祉計画の策定期間には定めはありません。前説のように自治事務に位置づけられているからです。