2021年5月4日火曜日

2018年(平成30年) 社会福祉法の改正

法律は,時代に合わせた改正が随時実施されます。

 

だからといってその改正は,国家試験ではすぐには出題されない傾向があります。

 

そのおかげで受験者は,国試勉強の過程で新しくできた法や改正された法を追いかけなく済みます。

 

もし出題されてもたったの1問か2問です。出るか出ないかわからないものに時間をかけるよりも出るものに時間をかけることが点数の底上げには重要です。

 

人によっては,新しい改正が出題されて,それが解けたから合格できたという経験をもつ人もいるかもしれません。

 

しかしながら国試問題全体から見ると,ほかの部分で十二分にカバーできます。

 

追いかけるべきものは,数年前です。

 

そういったものは,参考書などにはすでに記載されているはずなので,個人で追いかける必要はないように思います。

 

さて,今回は,2018年(平成30年)の社会福祉法の改正を取り上げます。

 

この改正は,地域共生社会の実現に向けた改正となっています。


地域福祉の推進

第四条 地域福祉の推進は、地域住民が相互に人格と個性を尊重し合いながら、参加し、共生する地域社会の実現を目指して行われなければならない。

2 地域住民、社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者(以下「地域住民等」という。)は、相互に協力し、福祉サービスを必要とする地域住民が地域社会を構成する一員として日常生活を営み、社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されるように、地域福祉の推進に努めなければならない。

3 地域住民等は、地域福祉の推進に当たつては、福祉サービスを必要とする地域住民及びその世帯が抱える福祉、介護、介護予防(要介護状態若しくは要支援状態となることの予防又は要介護状態若しくは要支援状態の軽減若しくは悪化の防止をいう。)、保健医療、住まい、就労及び教育に関する課題、福祉サービスを必要とする地域住民の地域社会からの孤立その他の福祉サービスを必要とする地域住民が日常生活を営み、あらゆる分野の活動に参加する機会が確保される上での各般の課題(以下「地域生活課題」という。)を把握し、地域生活課題の解決に資する支援を行う関係機関(以下「支援関係機関」という。)との連携等によりその解決を図るよう特に留意するものとする。

国・地方公共団体の責務

第六条 国及び地方公共団体は、社会福祉を目的とする事業を経営する者と協力して、社会福祉を目的とする事業の広範かつ計画的な実施が図られるよう、福祉サービスを提供する体制の確保に関する施策、福祉サービスの適切な利用の推進に関する施策その他の必要な各般の措置を講じなければならない。

2 国及び地方公共団体は、地域生活課題の解決に資する支援が包括的に提供される体制の整備その他地域福祉の推進のために必要な各般の措置を講ずるよう努めるとともに、当該措置の推進に当たつては、保健医療、労働、教育、住まい及び地域再生に関する施策その他の関連施策との連携に配慮するよう努めなければならない。

3 国及び都道府県は、市町村(特別区を含む。以下同じ。)において第百六条の四第二項に規定する重層的支援体制整備事業その他地域生活課題の解決に資する支援が包括的に提供される体制の整備が適正かつ円滑に行われるよう、必要な助言、情報の提供その他の援助を行わなければならない。

市町村による包括的な支援体制の整備

第百六条の三 市町村は、次条第二項に規定する重層的支援体制整備事業をはじめとする地域の実情に応じた次に掲げる施策の積極的な実施その他の各般の措置を通じ、地域住民等及び支援関係機関による、地域福祉の推進のための相互の協力が円滑に行われ、地域生活課題の解決に資する支援が包括的に提供される体制を整備するよう努めるものとする。

一 地域福祉に関する活動への地域住民の参加を促す活動を行う者に対する支援、地域住民等が相互に交流を図ることができる拠点の整備、地域住民等に対する研修の実施その他の地域住民等が地域福祉を推進するために必要な環境の整備に関する施策

二 地域住民等が自ら他の地域住民が抱える地域生活課題に関する相談に応じ、必要な情報の提供及び助言を行い、必要に応じて、支援関係機関に対し、協力を求めることができる体制の整備に関する施策

三 生活困窮者自立支援法第三条第二項に規定する生活困窮者自立相談支援事業を行う者その他の支援関係機関が、地域生活課題を解決するために、相互の有機的な連携の下、その解決に資する支援を一体的かつ計画的に行う体制の整備に関する施策

2 厚生労働大臣は、次条第二項に規定する重層的支援体制整備事業をはじめとする前項各号に掲げる施策に関して、その適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表するものとする。

市町村地域福祉計画

第百七条 市町村は、地域福祉の推進に関する事項として次に掲げる事項を一体的に定める計画(以下「市町村地域福祉計画」という。)を策定するよう努めるものとする。

一 地域における高齢者の福祉、障害者の福祉、児童の福祉その他の福祉に関し、共通して取り組むべき事項

二 地域における福祉サービスの適切な利用の推進に関する事項

三 地域における社会福祉を目的とする事業の健全な発達に関する事項

四 地域福祉に関する活動への住民の参加の促進に関する事項

五 地域生活課題の解決に資する支援が包括的に提供される体制の整備に関する事項

2 市町村は、市町村地域福祉計画を策定し、又は変更しようとするときは、あらかじめ、地域住民等の意見を反映させるよう努めるとともに、その内容を公表するよう努めるものとする。

3 市町村は、定期的に、その策定した市町村地域福祉計画について、調査、分析及び評価を行うよう努めるとともに、必要があると認めるときは、当該市町村地域福祉計画を変更するものとする。


それでは,今日の問題です。

 

30回・問題35 社会福祉法の規定に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 市町村は,地域福祉計画の策定において,福祉サービス利用者の意見聴取をしなければならない。

2 地域住民,社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者は,相互に協力して地域福祉の推進に努めなければならない。

3 市町村社会福祉協議会は,地域福祉コーディネーターを配置しなければならない。

4 市町村社会福祉協議会は,社会福祉を目的とする事業を経営する者又は更生保護事業を経営する者の3分の2以上が参加していなければならない。

5 共同募金会は,共同募金を行うには,市町村社会福祉協議会の意見を聴き,配分委員会の承認を得て,共同募金の目標額を公告しなければならない。

 

 

この問題は,近年の改正は含まれない極めてオーソドックスな内容となっています。

 

きちっと勉強した人なら,必ず正解できるでしょう。

 

こういった問題を正解できるかできないかが合否を分けると言っても決して過言ではありません。

 

正解は,選択肢2です。

 

2 地域住民,社会福祉を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に関する活動を行う者は,相互に協力して地域福祉の推進に努めなければならない。

 

社会福祉に関する活動を行う者には,ボランティア等が想定されています。

 

この三者を合わせて,地域住民等といいます。

 

要注意なのは,この「地域住民等」です。

 

地域住民等は、地域福祉の推進に当たっては、福祉サービスを必要とする地域住民及びその世帯が抱える地域生活課題を把握し、支援関係機関との連携等によりその解決を図るよう特に留意するものとする。

 

このように出題されると違和感があるかもしれませんが,正しい文章です。

 

それでは,ほかの選択肢も確認します。

 

1 市町村は,地域福祉計画の策定において,福祉サービス利用者の意見聴取をしなければならない。

 

市町村が地域福祉計画の策定・変更にあたっては,以下のように規定されます。

 

あらかじめ、地域住民等の意見を反映させるよう努める。

 

地域住民等の中には,福祉サービス利用者も含まれるでしょう。

 

しかし,このような規定はありません。

 

 

3 市町村社会福祉協議会は,地域福祉コーディネーターを配置しなければならない。

 

市町村社会福祉協議会には配置義務のある職員は,地域福祉コーディネーターを含めていません。

 

4 市町村社会福祉協議会は,社会福祉を目的とする事業を経営する者又は更生保護事業を経営する者の3分の2以上が参加していなければならない。

 

市町村社会福祉協議会に社会福祉を目的とする事業を経営する者又は更生保護事業を経営する者が参加していなければならないのは「過半数」です。

 

ここが「3分の1」になったり,「3分の2」になったりして出題されますが,正しくは「過半数」です。

 

5 共同募金会は,共同募金を行うには,市町村社会福祉協議会の意見を聴き,配分委員会の承認を得て,共同募金の目標額を公告しなければならない。

 

社会福祉法では,共同募金に関して市町村社協の役割は規定されていません。

 

共同募金会が意見を聴かなければならないのは,都道府県社協です。

 

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