2018~2019年にかけて,厚生労働省が実施する統計調査に不正があったことが明らかとなりました。
記憶に新しいところでしょう。
厚生労働白書は,社会福祉士の国家試験で最も出題されるものですが,さすがに出題しにくかったのか,問題が発覚した次の年の試験である第32回国試では用いられませんでした。
第33回では再び出題されているので,今後は出題されていくと思います。
しかしちょっと違うことが起きています。
第28回 → 平成26年版
第29回 → 平成27年版
第30回 → 出題なし
第31回 → 平成29年版
第32回 → 出題なし
第33回 → 平成29年版
本来は,第33回国試では,令和元年(2019年)版が出題されるはずです。
しかし,令和元年版は,作成されていないのです。
厚生労働省の統計不正は,社会福祉士の国試にも影を落としています。
令和2年版は作成されていますが,第34回国試で統計に関する出題をするかは微妙です。
それはそれとして・・・,今日のテーマは「白書などから出題への対応法」です。
学校の先生は,国家試験に出題される白書は目を通すように言います。
しかし,分厚い白書を見ても覚えていられないように思うのです。
分厚い白書に目を通すことは勉強としては必要ですが,国試勉強という点では,効率が悪すぎると考えています。
しかも,参考書などに書かれている基本的なものを覚えておくことと普段見聞きしていることを考え合わせれば対応できる問題が多いのです。
それでは今日の問題です。
第30回・問題49 「平成28年版厚生労働白書」における高齢化などに関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 高齢化率が7%を超えてから14%に達するまでの所要年数を比較すると,日本の方がフランスよりも短い。
2 2010年(平成22年)以降,日本の総人口は増加に転じた。
3 2014年(平成26年)における都道府県別の高齢化率をみると,東京都の高齢化率は全国平均より高い。
4 2015年(平成27年)における高齢者人口は,生産年齢人口を上回っている。
5 65~69歳の労働力人口比率を2005年(平成17年)と2015年(平成27年)で比較すると,低下している。
この問題は,日常生活を通して身につけた知識が役立つ問題の典型例です。
正解は,選択肢1です。
1 高齢化率が7%を超えてから14%に達するまでの所要年数を比較すると,日本の方がフランスよりも短い。
フランスは,ドイツとともに保守主義レジームに属していますが,社会保障にはものすごくお金を使っている国です。
現在の国民負担率は,スウェーデンよりも高いくらいです。
一時期は,合計特殊出生率が低下していましたが,様々な政策が功を奏したのか,現在はかなり高くなってきています。
そんなことを知らなくても,日本の高齢化率の進展は,他の国にはないスピードで進んでいるいるので,主要各国と比べると必ず日本のほうが早くなります。
ただし,韓国は日本よりも速いスピードで高齢化しています。しかしおそらく日本と韓国の比較する出題はないでしょう。
というのは,国際比較の出題の場合,比較する国は決まっているからです。
それでは,ほかの選択肢も見てみましょう。
2 2010年(平成22年)以降,日本の総人口は増加に転じた。
こんなことはありません。日本の人口が減少していることは誰もが知っていることです。
3 2014年(平成26年)における都道府県別の高齢化率をみると,東京都の高齢化率は全国平均より高い。
高齢化率が高いのは,過疎化が進む地域です。
東京都のような生産年齢人口が多い地域の高齢化はゆっくり進みます。
4 2015年(平成27年)における高齢者人口は,生産年齢人口を上回っている。
うっかりすると間違えてしまいそうなのが,この問題です。
年少人口(15歳未満) 約12%
生産年齢人口(15歳以上から64歳未満) 約60%
高齢者人口(65歳以上) 約28%
高齢者人口が多いのは,年少人口と比べてです。
5 65~69歳の労働力人口比率を2005年(平成17年)と2015年(平成27年)で比較すると,低下している。
こういった問題は,知恵が必要です。
現在は70歳まで働け,という時代です。
低下するわけがありません。