生活保護制度は,最低限度の生活を保障するものです。
資本主義という制度の欠陥を補うものとして欠かすことができません。
現在は,年間に約4兆円が使われています。
生活保護受給者が増えているという報道があると過度に反応する人がいますが,社会保障制度に占める割合は極めて小さい数字です。
現在の保護率の単位は,パーミルからパーセントに変わりました。
パーミルだと大きな数字に見えますが,パーセントで表示すると2.0%を割ります。
増えたとしても1.5%が1.7%になったくらいで実はそれほど大きくはありません。
社会福祉士が福祉のプロだとすれば,一般の人とは違う視点をもつことを期待したいところです。
そうしないと,昨日の問題は間違います。
第30回・問題43 「平成29年地方財政の状況」(総務省)が示す2015年度(平成27年度)の地方財政において,次に示す民生費及び特別会計事業の費目のうち,歳出金額が最も多いものを1つ選びなさい。
1 生活保護費
2 児童福祉費
3 老人福祉費
4 介護保険事業費
5 国民健康保険事業費
選択肢1を選ぶ人は,きっちり勉強をし直す必要があります。
https://fukufuku21.blogspot.com/2021/05/blog-post_12.html
さて,今日のテーマは,「生活保護費における国の費用負担率」です。
歴史を紐解きたいと思います。
救護法
1929年(昭和4年) 2分の1
旧・生活保護法
1946年(昭和21年) 10分の8
現・生活保護法
1950年(昭和25年) 10分の8
1985年(昭和60年) 10分の7
1989年(平成元年)~ 10分の7.5(つまり4分の3)
現制度の発足時よりも若干低くなっていますが,それでも社会保障制度の中でも生活保護の負担割合の4分の3は,大きな部類のものです。
国が4分の3を負担するのは,主な制度の中では,ほかに生活困窮者自立支援制度があるくらいです。
多くのものは,2分の1にとどまります。
それでは,今日の問題です。
第30回・問題44 市町村が支弁した次の費用のうち,国の費用負担に関する記述として,正しいものを1つ選びなさい。
1 生活保護費の4分の3
2 生活困窮者住居確保給付金の支給に要する費用の全額
3 児童福祉法に規定される保育に要する費用の3分の1
4 「障害者総合支援法」に規定する障害福祉サービス費等負担対象額の3分の1
5 養護老人ホームへの入所措置に要する費用の4分の3
(注)「障害者総合支援法」とは,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」のことである。
前説で書いたので,答えはすぐわかると思います。
しかし,この国試が実施された当時はそれほど簡単ではなかったはずです。
なぜなら,類似の問題は,現在のカリキュラムの国試では出題されたことがなかったからです。
参考書を使ってきっちり覚えることの重要性を教えてくれた問題です。
一応解説します。
1 生活保護費の4分の3
これが正解です。
知っていれば,すぐに答えられることでしょう。
近年の国試は,このように文章問題になっていないものも出題されてきているので,こういったところで時間を稼ぐことができます。
2 生活困窮者住居確保給付金の支給に要する費用の全額
これは,4分の3です。
レアケースの1つです。
3 児童福祉法に規定される保育に要する費用の3分の1
4 「障害者総合支援法」に規定する障害福祉サービス費等負担対象額の3分の1
これらは2分の1です。
5 養護老人ホームへの入所措置に要する費用の4分の3
養護老人ホームへの入所措置に要する費用に関して,現在は国の負担はありません。
以前はほかの制度と同じように,2分の1を負担していたのですが,なぜか国の負担はなくなったのです。
何か理由があったのだと思いますが,そこまで知りません。