2021年5月23日日曜日

労働者災害補償保険(労災保険)

労働者災害補償保険法は,日本国憲法の勤労の義務及び権利を保障するために1947年・昭和22年に作られました。

 

当初は,労働者の業務災害を対象としていましたが,昭和40年代のモータリゼーションの高まりに伴い,通勤災害も対象となりました。

 

労働者とは,雇用されて給与が支払われるすべての人をいいます。

 

そのためこの制度は,ほかの社会保険制度と異なり,被保険者という概念がありません。

 

労働者であれば適用されるので,被保険者という概念は必要ではないからです。

 

労働者は,被保険者ではないので保険料の支払いはありません。

 

雇用保険は,労使折半で保険料を支払いますが,労災保険は事業主のみが保険料を支払います。

 

事業主が保険料の支払いを滞納していたとしても補償されます。

 

労災保険の給付内容を整理すると,所得の補償と療養費(治療にかかる費用)の保障の2種類があります。

 

これらは,医療保険と重なります。

 

医療保険と労災保険では,労災保険が優先されるので,同一の事由に傷病の場合は,医療保険は給付されません。

 

また,医療保険と異なり,治療にかかる費用の本人の負担はありません。


なお,労災保険は労働者を対象とした保険ですが,一人で事業を行っているような個人タクシーの運転手なども特別加入することができます。

 

それでは,今日の問題です。

 

30回・問題53 事例を読んで,労働者災害補償保険(以下,「労災保険」という。)に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事 例〕

 Aさんは正社員として建設会社に就職した。正社員は他に7名いて,アルバイトとして学生のBさんが雇われている。Aさんは業務上の事由により右足を骨折してしまった。

1 この会社は,正社員が10名以下なので労災保険は適用されない。

2 Bさんは,学生なので労災保険の適用対象にならない。

3 骨折した事故が労災認定された場合,療養の給付について,Aさんに自己負担はない。

4 骨折した事故が労災認定された場合,Aさんが治療のため会社を休み,賃金が得られなくなった初日から休業補償給付を受けることができる。

5 会社が労災保険の保険料を滞納していた場合,Aさんは,労災保険の給付を受けることができない。

 

労災保険は,医療保険や年金保険と異なり,制度がシンプルなので,しっかり覚えると確実に得点できると思います。

 

それでは解説です。


1 この会社は,正社員が10名以下なので労災保険は適用されない。

 

事業所の規模に限らず,労働者が雇用されているすべての事業所に対して適用されるのが労災保険の特徴です。

 

2 Bさんは,学生なので労災保険の適用対象にならない。

 

すべての労働者に適用となるのが労災保険の特徴です。

 

3 骨折した事故が労災認定された場合,療養の給付について,Aさんに自己負担はない。

 

これが正解です。

 

医療保険と異なり,本人の自己負担がないのが労災保険の特徴です。

 

4 骨折した事故が労災認定された場合,Aさんが治療のため会社を休み,賃金が得られなくなった初日から休業補償給付を受けることができる。

 

休業補償給付は,業務災害のため労務不能になって給与が支払われない場合の所得補償です。

 

連続して3日を休業し,4日目から給付されます。

 

この仕組みは,医療保険の所得補償である傷病手当金と同じです。

 

同一の事由による傷病の場合,休業補償給付と傷病手当金は,当然のことながら併給できません。

 

休業補償給付が給付されます。

 

5 会社が労災保険の保険料を滞納していた場合,Aさんは,労災保険の給付を受けることができない。

 

事業主が保険料を滞納していたとしても給付されるのが労災保険の特徴です。

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