社会福祉士の国家試験には,たくさんの数字が出題されます。
それを一つひとつ覚えるのはとても大変なことですし,とても難しいことです。
よくある質問に
年度によって数字が違うのですが,どれを覚えたら良いでしょうか?
というものがあります。
数字が国試では実際にどのように出題されるかを知らないで勉強していることがよく分かります。
参考書だけを一生懸命に勉強していると陥りやすいミスです。
国試では,絶対に細かい数字は出題されません。
もし,細かい数字を問うような問題があったとしたら,それは良くない問題だと言えます。
それにも関わらず,参考書を見ると,本当にたくさんの数字が並んでいます。
そのうちのほとんどは,実際に国家試験で出題されるものではありません。
それにも関わらず,なぜ細かい数字を出しているのでしょうか。
それは,ずばり出版社が参考書を売りたいためです。
学校の先生も「なるべく新しい参考書の方が良い」といったアドバイスをします。
国試問題を良く知っていたら,おそらくそのようなアドバイスはしないはずです。
順位が年度によって変化するようなものは,国試ではほぼ出題されません。
おそらく,作問基準にそれを織り込んでいるのではないかと推測しています。
さて,今日のテーマは,国家試験に出てくる数字を覚えるコツです。
国試問題を見れば一目瞭然。
細かい数字を覚える必要は一切ありません。
大体の傾向をつかんでおけばそれで十分です。
数字を覚える時のポイント
・順位。
・多い(あるいは少ない)方に着目。
・5割を超えているのか,超えていないのか。
・なぜそうなっているか。
それによって,いろいろあるかと思います。
一番良くない覚え方は,丸覚えです。丸覚えは,何かの拍子に間違えるおそれがあります。
覚える時には,上記のようなものを軸にして考えると良いです。
それでは,今日の問題です。
第25回・問題45
福祉行財政に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 介護保険法では,介護保険施設及び特定施設の給付費については,国が25%,都道府県が12.5%,市町村が12.5%の負担割合となっている。
2 地方公共団体の乳幼児医療費助成(義務教育就学前分)については,国が2分の1を負担することになっている。
3 国の平成24年度当初予算(平成24年4月5日成立)における一般会計歳出総額のうち,社会保障関係費が約3割を占め,次いで国債費,地方交付税交付金等の順となっている。
4 「地方財政白書」(平成24年版)によると,平成22年度決算額における民生費の性質別歳出の内訳(「その他の経費」を除く。)については,都道府県では「扶助費」が最も多い。
5「地方財政白書」(平成24年版)によると,平成22年度決算額において,経常収支比率「70%未満」の市町村は,約6割に達している。
難しい選択肢が並んでいます。
しかし,この問題は勉強が進んでいる人にとっては,珍しく「答えは,これだ!」と分かる問題となっています。
それが分からない人は,この問題の迷い道に深く深く入り込むことでしょう。
さあ,詳しく見て行きましょう。
1 介護保険法では,介護保険施設及び特定施設の給付費については,国が25%,都道府県が12.5%,市町村が12.5%の負担割合となっている。
早いうちにケアマネ試験を受けた人は間違ったのではないかと思います。
介護保険が出来た当初は,施設等給付費も居宅給付費も問題のように同じ割合でしたが,いつのまにか,居宅と施設の割合が変わっていました。
施設等給付の割合は,現在では,国20%,都道府県17.5%,市町村12.5%です。
よって×。
2 地方公共団体の乳幼児医療費助成(義務教育就学前分)については,国が2分の1を負担することになっている。
これはとても難しいです。
こんな時は冷静に▲をつけます。
市町村独自の施策として,乳幼児,あるいは義務教育修了までなど,いろいろ実施しています。
市町村によっては,その施策が功を奏して,移住者が増えた,といったニュースを見ることがあります。
しかし,これらはすべて,市町村独自に行っているものでせあり,国の助成はありません。
よって×。
しかし,実際にこれに×をつけるのはとても難しいです。
3 国の平成24年度当初予算(平成24年4月5日成立)における一般会計歳出総額のうち,社会保障関係費が約3割を占め,次いで国債費,地方交付税交付金等の順となっている。
国の予算のうち,社会保障に使われる予算化のことを「社会保障関係費」と言います。
国家予算のうち,実に3割であり,最も大きな割合を占めています。
つまりこの選択肢が正解です。
参考書を見ると,その年の社会保障関係費の金額が書かれているものもあると思いますが,そんな数字は一切覚える必要がないことが分かることでしょう。
しっかり基礎力をつけて人は,迷うことなくこの選択肢に〇をつけられたはずです。
選択肢2がどれほど難しいものであっても関係なく,この選択肢を選ぶことができます。
4「地方財政白書」(平成24年版)によると,平成22年度決算額における民生費の性質別歳出の内訳(「その他の経費」を除く。)については,都道府県では「扶助費」が最も多い。
補助費,扶助費について出題されたのは,この回が初めてだったと思います。
扶助費は,直接サービスに関係する費用です。
補助費は,いろいろな組織などを補助するための費用です。
サービスに関係する費用は,都道府県よりも市町村の方が多いです。
よって×。
しかし,この時点ではよく分からないので▲をつけておくにとどまると思います。
5「地方財政白書」(平成24年版)によると,平成22年度決算額において,経常収支比率「70%未満」の市町村は,約6割に達している。
これも難しいです。
経常収支比率は,支出を収入で割ることで出て来ますが,どのくらいの率が普通なのかがまったく分かりません。
これも▲をつけておきます。
平均は90%程度,70%未満の市町村はわずか2%です。
選択肢3が正解だと分からなかった人は,消去法でも答えを見つけられないとても厳しい問題だったと思います。
現在の国家試験は,勉強した人は得点出来る,勉強が足りない人は得点できない
という問題が出題されています。
別な言い方をすると,この第25回あたりの国試は,勉強した人でも得点できない問題が多かったのです。
今はその点,本当に良い問題になってきたと思います。
<今日の一言>
細かい数字にとらわれるな! 国試の答えはそこにはない!!
現在の参考書には,今日の問題にあったものもすべて詳しく数字が出ていることでしょう。
それを勉強した人なら,今解いても答えは出せるかもしれません。
しかし,国試では今日の問題のように,実際に数字が出題されるわけではないのです。
細かい数字を覚えることには,まったく意味がないです。