人名や歴史が覚えられない
このように言う人はとても多いです。
実生活ではなじみがないからでしょう。
実は・・・
人名や歴史は,合格する人も苦手としています。
本当は,覚えなければならないものは数が少ないので,覚えることができたら必ず点数が取れるものになります。
しかし,苦手だと思うものは,なかなか得意になることは難しいのが現実です。
合格をつかみ取る人は,覚えられないものに時間をかけすぎることなく,得点しやすい法制度を覚えることに時間を費やします。
不合格になる人は・・・
人名や歴史が苦手だという割には,法制度をしっかり覚えておらず,あいまいな知識で国試に臨むので,しっかり覚えれば得点しやすい法制度に関する問題でも得点が伸びていません。
前にも書きましたが,
理論系の問題は,間違い選択肢を作る時とどうしても不自然な文章になってしまうことが多いです。
そのため,文章に気を付けると,知識が足りなくても,答えが分かることがあります。
それに比べると・・・
法制度は,ちょこっと変えるだけで,間違い選択肢を作ることができます。
都道府県 ← → 市町村
義務 ← → 努力義務
これらは,あいまいに覚えると簡単に引っ掛けられます。
文章自体に不自然さがないからてす。
そういう面で,
法制度で確実に点数を取るためには,しっかり覚えることが求められます。
勉強しても点数が取りにくい理論系に時間をかけるか
勉強したら確実に得点ができる法制度に時間をかけるか
あなたは,どちらを選びますか。
そんな問いかけをして,今日の問題です。
第25回・問題42
福祉事務所及び社会福祉施設等の設備'運営基準を定める地方公共団体の条例に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 福祉事務所において現業を行う所員の数については,各事務所につき,社会福祉法で定める数を標準として定めるものとされている。
2 児童福祉施設に配置する従業者及びその員数については,厚生労働省令で定める基準を標準として定めるものとされている。
3 養護老人ホームの入所定員については,厚生労働省令で定める基準に従い定めるものとされている。
4 介護保険法の指定居宅サービス事業に係る居室・療養室及び病室の床面積については,厚生労働省令で定める基準を参酌して定めるものとされている。
5 障害者総合支援法の指定障害福祉サービス事業に係る利用定員については,厚生労働省令で定める基準を参酌して定めるものとされている。
今回から科目は「福祉行財政と福祉計画」です。
他の科目は制度ごとの縦割りの科目になっているのに対し,この科目は,縦割りではなく,複数の制度が横断的に出題されるのが特徴です。
似たようなものを並べられると,頭が混乱してしまいます。
制度系の問題の中でも,最も混乱を来たす問題だと言えます。
<基準に従い>
福祉施設の配置職員・人数,建物の建築基準などに適用されることが多い。
拘束度 → 大
<基準を標準として>
利用・入所定員などに適用される場合が多い。
拘束度 → 中
<基準を参酌して>
地域で活動する職員などに適用されることが多い。
拘束度 → 小
これを手掛かりに詳しく見て行きましょう。
1 福祉事務所において現業を行う所員の数については,各事務所につき,社会福祉法で定める数を標準として定めるものとされている。
「標準として」の問題です。
上のガイドでは,地域で活動する職員は「基準を参酌して」であるのに,この問題は「標準として」となっています。
この時点で×をつけたくなりますが,とりあえず,▲をつけて先に進みましょう。
×をつけるのは全部読んでからでも遅くはありません。
現在の社会福祉士の国試で出題される地域で活動する職員のうち,「基準を参酌して」定めるのは民生委員・民生委員のみです。
以前は,児童相談所に配置される児童福祉司も「基準を参酌して」でした。しかし,現在は制度が変わり「基準を標準として」に変わっています。
2 児童福祉施設に配置する従業者及びその員数については,厚生労働省令で定める基準を標準として定めるものとされている。
福祉施設の配置職員は,「基準に従い」なので×がつけられそうです。
もちろん×です。
配置職員や建物の基準は「基準に従い」になっているのは,福祉サービスは基本的にどこで受けても一緒のサービスであることが基本だからです。
施設の人員基準は,拘束度→大 の基準に従い,でなけれぱだめです。
そのように頭に入れてください。
3 養護老人ホームの入所定員については,厚生労働省令で定める基準に従い定めるものとされている。
入所定員は「基準を標準として」です。よって×。
配置職員数や建物の建築基準は,かちっとしたものにしておかなければ,質の担保は図れませんが,入所定員は,実状に合わせて変更しても,サービスの質には関係を及ぼすことはないでしょう。
職員の配置基準は決まっているわけですから,入所定員が多くても少なくても,提供されるサービスには違いは出て来ないと考えられるので「基準を標準として」となるわけです。
このように覚えれば,難しいことはないですよ。
4 介護保険法の指定居宅サービス事業に係る居室・療養室及び病室の床面積については,厚生労働省令で定める基準を参酌して定めるものとされている。
何度も言うように,配置職員数や建物の建築基準は,サービスの質に大きくかかわってきます。
建物で言えば,居室の広さが,12平米と25平米では,アメニティの部分で大きく変わってくることでしょう。
基準を参酌のような緩いものであってはなりません。
よって×。
施設の建築基準も,拘束度 → 大 の基準に従い でなければなりません。
5 障害者総合支援法の指定障害福祉サービス事業に係る利用定員については,厚生労働省令で定める基準を参酌して定めるものとされている。
利用定員は,「基準を標準として」です。
入所定員と同じです。
よって×。
地域の実状で変化させても,配置職員数や建築基準は同じなので,提供されるサービスは基本的に違いは出て来ません。
選択肢2~5は,きれいに消去することが出来ました。
選択肢1が正解ということになります。
福祉事務所の現業員の数は,福祉施設の職員数と違い,「基準を標準として」です。
こういう複雑なものは,なぜそうなっているのかを考えてみることが覚える時のコツです。
丸暗記では,間違うおそれがあります。
法制度は,そのように決めたことには必ず意味があります。
日本の官僚は優秀です。法制度は極めて合理的に出来ています。
民生委員・児童委員,
※2019/01/10 児童福祉司は,制度改正で「基準を標準として」に代わっています。
福祉事務所の現業員数は「基準を標準として」です。
<今日のまとめ>
拘束力の大きいものから
<基準に従い>
拘束力「大」。
変更することはほとんど許されない。
<基準を標準として>
拘束力「中」。
基準から変更する場合は合理的な場合に許される。
※福祉事務所の現業員数,児童相談所の児童福祉司の定数に適用されている。
<基準を参酌して>
拘束力「小」。
地域の実状に合わせて変更することが許される。
※民生委員・児童委員の定数に適用されている。