2017年9月21日木曜日

労働保険は覚えるポイントが少ない! チャンス!!

日本の社会保険制度は,年金,医療,雇用,労災,介護の5つです。


このうち,雇用保険と労働者災害補償(労災)保険を合わせて労働保険と言います。


労働保険は,年金保険と医療保険に比べると制度がシンプルです。

年金保険も医療保険もいろいろな制度を組み合わせて,国民皆保険,国民皆年金を実現しています。

この2つの社会保険はいずれも第二次世界大戦以前から存在しています。

それに比べると,労働保険は戦後に出来た制度です。年金保険や医療保険のように,いろいろな制度を組み合わたものではないため,制度自体がとてもシンプルです。

覚えるものが少なくても1問丸ごと出題されるので,とてもありがたい領域だと言えます。


しっかり覚えて,確実に得点することが大切です。


それでは,今日の問題です。


25回・問題54


雇用保険の基本手当に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。



1 基本手当は,受給資格者が労働基準監督署において失業の認定を受けることにより支給される。



2 基本手当は,被保険者が転居や結婚など自己の都合により退職した場合には支給されない。



3 公共職業安定所(ハローワーク)で紹介された就職先の賃金がその地域の同種の業務及び同程度の技能に係る一般の賃金水準と比べて不当に低いときには,就業を拒否しても基本手当は支給される。



4 基本手当の給付日数は被保険者期間に応じて定められており,倒産や解雇などの離職理由は考慮されない。



5 基本手当の受給を終了し,受給資格を有しない者は,「求職者支援法」に基づく職業訓練受講給付金の対象者となることができない。


()「求職者支援法」とは,「職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律」のことである。




失業保険法が雇用保険法に変わったのは,1974年のことなので,40年以上が過ぎています。

それにもかかわらず,未だに「失業保険」と呼ぶ人が多いのは,失業等給付のイメージが強いからなのでしょうか。

せめて国会議員くらいは,正しく雇用保険と言ってもらいたいものです。


さて,それでは詳しく見て行きましょう。



1 基本手当は,受給資格者が労働基準監督署において失業の認定を受けることにより支給される。



雇用保険の現業機関は,ハローワークです。

労働基準監督署は労災保険の現業機関です。

よって×。


2 基本手当は,被保険者が転居や結婚など自己の都合により退職した場合には支給されない。


自己都合によって退職した場合は,支給期間は短くなりますが,支給されます。

よって×。



3 公共職業安定所(ハローワーク)で紹介された就職先の賃金がその地域の同種の業務及び同程度の技能に係る一般の賃金水準と比べて不当に低いときには,就業を拒否しても基本手当は支給される。


<基本手当の給付制限>
公共職業安定所の紹介する職業に就くこと又は公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受けることを拒んだときは,その拒んだ日から起算して一箇月間は,基本手当を支給しない。

とされています。

しかし,以下の場合などには,給付制限がありません。



●紹介された職業又は公共職業訓練等を受けることを指示された職種が、受給資格者の能力からみて不適当であると認められるとき。

就職するため、又は公共職業訓練等を受けるため、現在の住所又は居所を変更することを要する場合において、その変更が困難であると認められるとき。


就職先の賃金が、同一地域における同種の業務及び同程度の技能に係る一般の賃金水準に比べて、不当に低いとき。


よって正解です。

しかし,こんな規定をつくるよりも,ハローワークでそのようなところを紹介しない,という方法もあるような気がします。

でもそれは難しそうですね。

なお,正当な理由がないにもかかわらず,職業指導を拒んだ場合にも,給付制限があります。

この問題が出題された時点で,この選択肢を〇にするのはとても難しかったかもしれません。

しかし,ほかの選択肢を丁寧に消去していけば,この選択肢か残ったはずです。


4 基本手当の給付日数は被保険者期間に応じて定められており,倒産や解雇などの離職理由は考慮されない。


もちろん考慮されます。

よって×。


5 基本手当の受給を終了し,受給資格を有しない者は,「求職者支援法」に基づく職業訓練受講給付金の対象者となることができない。


言い切り表現に正解少なしは,国家試験の常とう手段です。

しかし線引きがしっかりされる法制度には使えないことが多いのですが,この場合は使えます。

よって×。



労働保険の出題は,例年は比較的簡単な問題が多いのですが,この問題を正解するのはそんなに簡単ではありませんでした。

前回の問題のように「答えはこれだ!!」というものではないからです。



こんなところに,第25回国試の恐ろしさを感じます。

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