2017年9月15日金曜日

福祉計画の整理法

「福祉行財政と福祉計画」が難しく感じるのは,他の科目と違って,制度を横断的に出題するためです。

しかし,ポイントを押さえれば,恐れる必要は決してありません。

さて,今日の問題です。


25回・問題46


福祉計画等の目的に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。


1 高齢者の医療の確保に関する法律では,後期高齢者医療広域連合は,国が定める医療費適正化基本指針に基づき,広域連合内の医療費適正化を推進するための医療費適正化計画を定めるものとしている。


2 介護保険法では,市町村介護保険事業計画は,当該市町村が行う介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施に加え,老人福祉センターなどの介護給付等対象サービス以外の老人福祉事業の供給体制の確保に関する計画として定めるものとしている。


3 障害者基本法では,都道府県障害者計画は,厚生労働大臣が定める基本指針に即して,障害福祉サービスの提供体制の確保等について,各市町村を通ずる広域的見地から定めるものとしている。


4 児童福祉法では,市町村保育計画は,地域における子育て支援,児童の心身の健やかな成長に資する教育環境の整備,職業生活と家庭生活との両立の推進などを実施するための計画として定めるものとしている。


5 社会福祉法では,都道府県地域福祉支援計画は,市町村地域福祉計画の達成に資するため,各市町村を通ずる広域的見地から,社会福祉を目的とする事業の健全な発展のための基盤整備に関する事項等を一体的に定める計画とされている。


今日の問題も複雑ですが,ちゃんと糸口は見つけ出せます。


1 高齢者の医療の確保に関する法律では,後期高齢者医療広域連合は,国が定める医療費適正化基本指針に基づき,広域連合内の医療費適正化を推進するための医療費適正化計画を定めるものとしている。


高齢者の医療の確保に関する法律は,後期高齢者医療制度の根拠法です。

実施主体は,都道府県のすべての市町村による後期高齢者医療広域連合です。

広域連合が行政計画を立てることはありません。


医療費適正化計画を策定するのは,都道府県です。

よって×。

医療に関するものは,市町村ではなく都道府県です。

後期高齢者医療広域連合は,都道府県区域を単位としていますが,市町村の広域連合です。都道府県ではありません。



2 介護保険法では,市町村介護保険事業計画は,当該市町村が行う介護保険事業に係る保険給付の円滑な実施に加え,老人福祉センターなどの介護給付等対象サービス以外の老人福祉事業の供給体制の確保に関する計画として定めるものとしている。


高齢者に関連する計画には,介護保険法に基づく介護保険事業計画と,老人福祉法に基づく老人福祉計画があります。


介護保険事業計画は,介護保険に基づく介護保険事業について定めます。


老人福祉計画は,老人福祉法に基づく老人福祉事業について定めます。


老人福祉センターなどの介護給付等対象サービス以外の老人福祉事業の供給体制の確保に関する計画は,老人福祉計画で定めます。

よって×。


いろいろな行政計画がありますが,一体での策定義務があるのは,この2つしかありません。

一体で策定されるものだから,どうだって良いのでは? 

と思う人もいるでしょう。

しかし法律は極めて厳密です。

しっかり覚えましょう。


因みに,都道府県老人福祉計画で定めなければならないものには,養護老人ホームの入所定員があります。

特別養護老人ホームは老人福祉法に基づく施設ですが,指定を受けて介護保険施設にもなります。

そのため,入所定員を定める規定は老人福祉法にはないのです。   (9/15訂正。特養は措置施設でもあるので,当然老人福祉法でも定めます。ごめんなさい)


3 障害者基本法では,都道府県障害者計画は,厚生労働大臣が定める基本指針に即して,障害福祉サービスの提供体制の確保等について,各市町村を通ずる広域的見地から定めるものとしている。


障害者分野にも,二つの法律があります。


障害者基本法を根拠法とする障害者計画。
障害者総合支援法を根拠法とする障害福祉計画


障害福祉サービスについて定めているのは,障害福祉計画です。

よって×。


紛らわしいからこそ出題されやすいです。


2つある場合は,片方だけを覚えるのがコツです。


そうすることで覚える量は半分で済みます。



紛らわしいものを両方覚えようとすると混乱する元になりますので注意が必要です。



4 児童福祉法では,市町村保育計画は,地域における子育て支援,児童の心身の健やかな成長に資する教育環境の整備,職業生活と家庭生活との両立の推進などを実施するための計画として定めるものとしている。


今は,子ども・子育て支援法に基づく子ども・子育て支援事業計画があるため,児童福祉法に基づく保育計画の内容は子ども・子育て支援事業計画に移行しています。


それはさておき・・・


地域における子育て支援,児童の心身の健やかな成長に資する教育環境の整備,職業生活と家庭生活との両立の推進などを実施するための計画


こんなにいろいろな内容があるのに,保育計画ということはなさそうです。

正しくは,次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画です。

よって×。

現在は,都道府県と市町村には,行動計画の策定は任意となっています。


5 社会福祉法では,都道府県地域福祉支援計画は,市町村地域福祉計画の達成に資するため,各市町村を通ずる広域的見地から,社会福祉を目的とする事業の健全な発展のための基盤整備に関する事項等を一体的に定める計画とされている。


地域福祉計画の策定は,市町村,都道府県とも任意ですが,策定する場合,内容に盛り込むべき事項が定められています。


市町村地域福祉計画
地域福祉の推進に関する事項を一体的に定める。


都道府県地域福祉支援計画
各市町村を通ずる広域的な見地から,市町村の地域福祉の支援に関する事項を一体的に定める。


よって正解です。



都道府県と市町村は,市町村が基礎的自治体で,都道府県が市町村を支援する,という関係です。

しっかり押さえておきましょう。

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