2017年9月6日水曜日

厚生労働省は,実施している施策をアピールしたい!!

社会福祉士の国試は,近年では毎年45千人ほどが受験して,12千人くらいの人が合格しています。


45千人という人数が多いのか少ないのかは,人によって感じ方が違うかもしれません。


しかし,45千人全員に62円はがきを送ろうと思ったら,279万円もします。


個人でこれだけのお金を支出するのはとても大変な金額です。


国にとっては大した金額ではないかもしれませんが,それでも大変な金額であることは確かでしょう。


社会福祉士受験生45千人に確実に伝えるためには,国試に出題することです。


厚生労働省が行っている施策にはすべて予算がついているものです。


国民に知られていない施策もたくさんあります。


国民に広く告知するためには,国試で出題するのはとても有効な手段となります。


特に効果のあったものは,「こんなことをしている」ということを強くアピールしたいものです。


その気持ちは理解できます。


頑張っているのに,誰にも認められないのは寂しいものです。



行った施策が失敗することもあります。
つまり対策を取ったにも関わらず,効果が出ないというものです。


それらは逆にあまり言いたくないものです。


試験委員は,これらのことは意図していないで作問していると思います。

試験委員が作問したものをバランスよくそろえるのは,厚生労働省の外郭団体である試験センターの職員です。


今日のテーマ


厚生労働省は,実施している施策をアピールしたい!!


頭に置きながら,今日の問題を読んでみましょう。


25回・問題31


我が国での仕事と労働をめぐる政策に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 「毎月勤労統計調査」(厚生労働省)によると,労働者の年間総実労働時間は,労働基準法の改定(1987(昭和62))にもかかわらず,1980年代半ばから一貫して上昇しており,そのことが過労死などの要因となっている。


2 ワーク・ライフ・バランスは,欧米では使われることのない和製英語であり,ワーク・ライフ・バランス政策は,日本での仕事と生活との特殊なあり方を反映して導入されてきたものである。


3 我が国の育児休業制度は,OECD諸国内では,給付水準・期間共に低位であり,健康保険制度によって少額の給付金が支払われるにとどまっている。


4 厚生労働省が保育所への入所待機児童数がゼロと発表している地域における女性の生産年齢人口(15歳~64)に占める「有業者」の比率は,全国平均と同水準である。


5 厚生労働省は,近年,朧場におけるメンタルヘルス対策を推進してきており,心の病気で休業していた労働者の職場復帰を支援するマニュアル(事業所向け)なども作成している。

()「有業者」とは,ふだん収入を得ることを目的として仕事をしており,調査日以降もしていくことになっている者及び仕事は持っているが現在は休んでいる者等のことをいう。



今日の問題は,最近話題の働き方に関する問題です。


これからも類似の問題は出題される可能性は高いです。



1「毎月勤労統計調査」(厚生労働省)によると,労働者の年間総実労働時間は,労働基準法の改定(1987(昭和62))にもかかわらず,1980年代半ばから一貫して上昇しており,そのことが過労死などの要因となっている。



労働基準法を改正したにもかかわらず,労働時間が一貫して上昇している。

もっともらしく感じるかもしれません。


しかしそれでは法改正は失敗したこととなります。


官僚はそんなことをあからさまにはしません。


逆に隠したいことでしょう。


そんなところからも想像はつくと思いますが,労働時間は減少傾向にあります。


よって×。


労働時間が減少している実感はありませんが,だからこそ「ブラック企業」ということばが生まれたのだと思います。



2 ワーク・ライフ・バランスは,欧米では使われることのない和製英語であり,ワーク・ライフ・バランス政策は,日本での仕事と生活との特殊なあり方を反映して導入されてきたものである。



日本人のイメージには,欧米人は,夏には1か月にもわたる長期間にわたるバカンスを取るというものがあります。


しかし,それは完全に出世をあきらめた人らしいです。


しかし,欧米でも,バリバリ仕事をする人は,勤務時間が長い傾向があります。


そのため,ワーク・ライフ・バランスの考え方は,欧米で生まれています。


よって×。



3 我が国の育児休業制度は,OECD諸国内では,給付水準・期間共に低位であり,健康保険制度によって少額の給付金が支払われるにとどまっている。



低位か高位かどうかは分かりません。

しかし,この問題を見たとき,「ははーん」と思った方は,勘が良いです。


低位であれば,出題しないです。


実際にOECD諸国内では高い方の部類になります。


よって×。



4 厚生労働省が保育所への入所待機児童数がゼロと発表している地域における女性の生産年齢人口(15歳~64)に占める「有業者」の比率は,全国平均と同水準である。



これは,よく分かりません。


しかし,何となく変な感じがしませんか。


待機児童者数ゼロ県が,全国と同水準なら,わざわざこの問題は出題しないと思います。


比率が高い,あるいは低いというように,他の都道府県と何かが違うことがあるから,出題する価値があります。


とてもきなくさいです。


間違っているように思いますが,この時点では冷静に▲をつけます。


答えは予想通り,×です。


実際には,有業率は全国平均よりも高いそうです。


びっくりですね。


しかし他の要素が影響している可能性はあります。


例えば,三世代世帯が多いなどです。



5 厚生労働省は,近年,朧場におけるメンタルヘルス対策を推進してきており,心の病気で休業していた労働者の職場復帰を支援するマニュアル(事業所向け)なども作成している。



厚生労働省がこんなマニュアルを作成していることを知っている人は少ないでしょう。


マニュアルを作っても,それが使われずに残ってしまったら大変です。


少なくとも45千人は,このマニュアルの存在が分かりました。


答えは正しいです。



厚生労働省は,自分がやっていることは広めたいのです。


自分のまずいところは言わないです。


それに比べて・・・


他省のまずいところは遠慮なく突いてきます。



先日の問題

25回・問題26・選択肢2

OECDの報告によると,高等教育への公財政支出の対GDP比は,OECD諸国の平均を下回り,国公立大学の平均授業料についても高いグループに属する。



国公立大学の管轄は文部科学省です。

今,改めて考えてみると,この問題が×になるわけはないです。



厚生労働省の施策は良いものを出題する。

他省の施策は悪いものを出題する。


こんな図式が見え隠れしませんか。


大阪地検特捜部主任検事証拠改ざん事件で,厚生労働省の村木厚子さんが起訴されて,無罪になったことは,もうかなり前のことなので,もう忘れている人もいるかもしれません。

村木さんは,とてもつらかったでしょう。復職した後は,事務方としては最高位である事務次官まで勤められました。

改ざん事件の後,第23回国家試験で「ホワイトカラー犯罪」について出題されました。

村木さんの無罪が確定したのは,2010年9月。その後すぐ後に復職しています。国家試験問題が作られるのは8月以前。

村木さんのかつての部下たちは,村木さんの無実を信じて,試験委員にその思いを伝えて作問してもらったのではないでしょうか。

村木さんが無罪になり,現場復帰してからの作問ではないことが,改ざん事件に対する法務省への猛烈なアピールだったように思います。



それはさておき,

役人の気持ちを考えてみると,意外と問題の奥が見えてくることがあります。

それは,消去法に根拠を与えてくれることでしょう。









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