以前,社会福祉士は「社会福祉士≠ソーシャルワーカー」と書きました。
国は,社会福祉の専門職種として,社会福祉士を位置付けています。
福祉サービスの使い手としてだけではなく,どのように福祉制度が設計されているのかを知ることは,国が示す社会福祉士のあるべき姿であろうと思います。
さらには,福祉制度がどのように作られ,それがどのように福祉ニードを充足するのか,そして福祉サービスの質の担保はどのようになされるのか,一連の流れが押さえていることが大切です。
福祉現場にいるだけでは,それらのことはあまり実感することはないかもしれません。
それらを理解していることは,最も社会福祉士に求められていることでしょう。
そして社会福祉士らしいことだと思います。
それでは,今日の問題です。
第25回・問題29
福祉サービスの利用に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 福祉サービス利用過程における情報の非対称性とは,サービスの提供者と利用者の間で,提供された福祉サービスの質や効果に関する評価力が正反対になる傾向があることを指す。
2 福祉サービスの第三者評価制度に関する厚生労働省の指針では,第三者評価と併せてサービス利用者に対するアンケート調査を実施することは個人情報保護の観点から禁止されている。
3 社会福祉法では,利用者保護の観点から,福祉サービスについて広告可能な事項を列記し,その他の事項についての広告を禁止している。
4 1997(平成9)年の児童福祉法改正により,保育サービスの利用方式は,措置方式から,利用者と事業者(保育所)との契約方式に変わった。
5 社会福祉法は,社会福祉事業の経営者が,常に,その提供する福祉サービスについて,利用者等からの苦情の適切な解決に努めるべきことを定めている。
今日も問題は,福祉政策の中でも,どのように福祉サービスが提供されるのか,に関連する問題です。
難易度は,中くらいです。
それでは,詳しく見ていきましょう。
1 福祉サービス利用過程における情報の非対称性とは,サービスの提供者と利用者の間で,提供された福祉サービスの質や効果に関する評価力が正反対になる傾向があることを指す。
「情報の非対称性」とは,サービスの提供者と利用者では,情報量はサービス提供者の方が多く,利用者は少ない,という情報量の差のことを言います。
よって×。
「情報の非対称性」の非対称性の意味が分からなければ,引っ掛けられてしまいそうです。
2 福祉サービスの第三者評価制度に関する厚生労働省の指針では,第三者評価と併せてサービス利用者に対するアンケート調査を実施することは個人情報保護の観点から禁止されている。
禁止するためには,それだけの意味があります。
サービス利用者に対するアンケートは,提供されたサービスに対して直接の感想を知ることができますので適切な行為です。
よって×。
3 社会福祉法では,利用者保護の観点から,福祉サービスについて広告可能な事項を列記し,その他の事項についての広告を禁止している。
社会福祉法は,社会福祉に関する基本法です。基本法で示されたものを受けて,通達や施行規則などで,細則を決めていきます。
基本法では,細則は決めません。
よって×。
この場合は,施行規則でも広告可能な事項は列記していません。
4 1997(平成9)年の児童福祉法改正により,保育サービスの利用方式は,措置方式から,利用者と事業者(保育所)との契約方式に変わった。
保育所は措置制度は取っていません。
しかし,利用者と事業者との契約制度でもありません。
保育所は「保育所方式」というものです。
これは,利用希望する人は利用を希望する施設を選んだうえで,市町村と契約するものです。
よって×。
母子生活支援施設も同じ方式をとっています。
5 社会福祉法は,社会福祉事業の経営者が,常に,その提供する福祉サービスについて,利用者等からの苦情の適切な解決に努めるべきことを定めている。
これは社会福祉法第82条に規定されています。
よって正解。
「現代社会と福祉」の攻略法は,福祉政策のツボを押さえることです。