2017年9月17日日曜日

福祉計画の策定,変更を覚える攻略法

福祉行財政と福祉計画は,法制度が中心の科目の中では,受験生のもっとも頭を悩ませるものかもしれません。

なぜなら,同じようなものを横並びにしてくるので,あいまいな知識だとすぐに引っ掛けられてしまうからです。

覚えるのが面倒だと思う人は,思い切って捨ててしまうという方法もあります。

出題されても1問か2問。大きな痛手にならないです。

それよりも,この科目を苦手だと思うことはもっとも避けたいところです

苦手だと思うと,せっかくのヒントが見えなくなってしまうからです。


さて,今日のテーマは


福祉計画の策定,変更を覚える攻略法


です。


複雑そうに見えても,法制度は必然性があってできているので,必ずヒントはあります。

福祉計画の策定・変更する場合の一覧


市町村地域福祉計画

(旧規定)
あらかじめ,住民,社会福祉を目的とする事業を経営する者その他社会福祉に関する活動を行う者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるよう努めるとともに公表するよう努める。(努力義務)

2018年4月に以下のように変更になっています。

あらかじめ,地域住民等の意見を反映させるよう努めるとともに,その内容を公表するよう努める。(努力義務)



都道府県地域福祉支援計画

(旧規定)
あらかじめ,公聴会の開催等住民その他の者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるよう努めるとともに公表するよう努める。(努力義務)


2018年4月に以下のように変更になっています。

あらかじめ,公聴会の開催等住民その他の者の意見を反映させるよう努めるとともに,その内容を公表するよう努める。(努力義務)

アンダーラインのように変更され,市町村,都道府県の責務を明確にしました。「講ずるよう努める」よりもシンプルですね。

市町村老人福祉計画
都道府県の意見を聴かなければならない。(義務)

遅滞なく,都道府県知事に提出しなければならない。(義務)


都道府県老人福祉計画
遅滞なく,厚生労働大臣に提出しなければならない。(義務)


市町村介護保険事業計画
あらかじめ,被保険者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。(義務)

あらかじめ,都道府県の意見を聴かなければならない。(義務)

遅滞なく都道府県知事に提出しなければならない。(義務)



都道府県介護保険事業支援計画
遅滞なく,厚生労働大臣に提出しなければならない。(義務)



市町村障害者計画
合議制の機関を設置している場合はその意見,その他の場合は障害者その他の関係者の意見を聴かなければならない。(義務)

策定した時は議会に報告する。(義務)



都道府県障害者計画
合議制の機関の意見を聴かなければならない。(義務)

策定した時は議会に報告する。(義務)



市町村障害福祉計画
あらかじめ,住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。(努力義務)

あらかじめ,都道府県の意見を聴かなければならない。(義務)

遅滞なく都道府県知事に提出しなければならない。(義務)



都道府県障害福祉計画
協議会を設置したときは,あらかじめ,協議会の意見を聴くよう努めなければならない。(努力義務)

合議制の機関の意見を聴かなければならない。(義務)

遅滞なく厚生労働大臣に提出しなければならない。(義務)



医療計画(都道府県のみ)
医療に関する専門的科学的知見に基づいて医療計画の案を作成するため,診療又は調剤に関する学識経験者の団体の意見を聴かなければならない。(義務)

あらかじめ,都道府県医療審議会・市町村・保険者協議会の意見を聴かなければならない。(義務)

遅滞なく,厚生労働大臣に提出するとともに,その内容を公示しなければならない。(義務)



医療費適正化計画(都道府県のみ)
あらかじめ,関係市町村(保険者協議会が組織されている都道府県は,関係市町村及び保険者協議会)に協議しなければならない。(義務)


これでよく分かったでしょう。

努力義務規定があるのは・・・

地域福祉計画&障害福祉計画

その他は,すべて義務規定です。

都道府県や厚生労働大臣に提出は,すべて義務規定。

ただし,市町村が提出するのは,都道府県。飛び越えて厚生労働省は有り得ません。


障害者基本法に基づく障害者計画と障害者総合支援法に基づく障害福祉計画は整理しておきたいです。


障害者基本法に基づく「合議制の機関」の設置
 都道府県は必置。
 市町村は任意設置。


障害者総合支援法に基づく「協議会」の設置
 都道府県,市町村ともに任意設置。




合議制の機関は必置なので,「聴かなければならない」(義務)


協議会は,任意設置なので,「聴くよう努めなければならない」(努力義務)


となります。

合議制の機関は,現在は審議会などのような名称で設置されることが多く,協議会よりも高度な役割を担っているところに違いがあります。


2つある場合は,片方だけを覚えるのがコツです。

「合議制の機関は必置」に着目すると,「必ず合議する」と言ったような覚え方があるでしょう。


協議会の任意は覚える必要がありません。協議会は任意なので合議制の機関よりも影が薄いのが悲しいところです。


もう一つ確実にするためにもうちょっと表現(講ずる)に着目して,深掘りしてみましょう。


講ずる。(義務)

講ずるよう努めなければならない。(努力義務)  


つまり・・・

講じなければならない,という義務規定の表現は存在しない。



さて,それでは今日の問題です。

25回・問題47

福祉計画の策定又は変更に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。


1 市町村は,老人福祉計画を定め,又は変更したときには,遅滞なく厚生労働大臣に提出しなければならない。


2 都道府県は,都道府県障害福祉計画を変更しようとする場合であっても,当該計画に規定する障害福祉サービスの見込量に修正がなければ,障害者施策推進協議会の意見を聴く必要はない。


3 都道府県は,地域福祉支援計画を策定し,又は変更しようとするときは,あらかじめ,地方社会福祉審議会の意見を聴かなければならない。


4 都道府県介護保険事業支援計画は,高齢社会対策基本法に基づき政府が定める大綱及び介護保険法に基づき厚生労働大臣が定める基本指針に即して作成しなければならない。


5 市町村は,次世代育成支援対策推進法による市町村行動計画を策定し,又は変更しようとするときは,あらかじめ,事業主・労働者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。


先ほどの基本ルールでわかるものと分からないものがあると思いますが,ヒントはあります。


1 市町村は,老人福祉計画を定め,又は変更したときには,遅滞なく厚生労働大臣に提出しなければならない。


都道府県を飛び越えて厚生労働大臣は有り得ませんね。

よって×。


2 都道府県は,都道府県障害福祉計画を変更しようとする場合であっても,当該計画に規定する障害福祉サービスの見込量に修正がなければ,障害者施策推進協議会の意見を聴く必要はない。


早速影の薄い協議会の登場です。

影が薄いと言っても意見を聴く必要はない!! は酷すぎます。

意見を聴いてもらいましょう。

もちろん努力義務ではありますが,聴く必要はない,だったら存在する意味がないし,あえてここで登場させる意味がないです。

もちろん☓です。


3 都道府県は,地域福祉支援計画を策定し,又は変更しようとするときは,あらかじめ,地方社会福祉審議会の意見を聴かなければならない。


ここで,地方社会福祉審議会の意見を聴かなければならないという新しいものが出て来ました。

「知らない,分からない」と思ったら試験委員に負けます。

知らないのは,勉強不足ではなく,試験委員が作ったものだからです。

もちろん☓です。こんな規定はありません。

4 都道府県介護保険事業支援計画は,高齢社会対策基本法に基づき政府が定める大綱及び介護保険法に基づき厚生労働大臣が定める基本指針に即して作成しなければならない。


これも高齢社会対策基本法に基づき政府が定める大綱という変なものが出て来ました。

選択肢3と同じように,「知らない,分からない」と思ったらだめです。


法律は,あいまいさはないと前回書きました。

何か行う時には,根拠法が必ずあります。

根拠法以外のものとリンクするパターンは聴いたことがないです。もちろん☓です。こんな規定はありません。



5 市町村は,次世代育成支援対策推進法による市町村行動計画を策定し,又は変更しようとするときは,あらかじめ,事業主・労働者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。



ここまで,順調に☓がついてきたので,消去法でこの選択肢は残ります。


もちろん正解です。


<今日の一言>

難しそうに見えるものは,自分なりのルールを決めて覚えましょう。


丸暗記は,ど忘れの原因となります。覚える時にひと手間かけることで,その知識はより確実なものとなります。

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