障害者分野になじみがない人にとっては,この分野は苦手に感じるかもしれません。
しかし,障害者福祉制度の多くは,介護保険になぞって作られているので,高齢者分野の人は理解しやすいと思います。
高齢者分野に関連のない人は,2つの制度を整理しながら覚えると知識が定着します。
さて,今日のテーマは「地域相談支援と計画相談支援の整理の仕方」です。
地域相談支援には,地域移行支援と地域定着支援があります。
精神障害者などが入所施設や病院などから地域で生活するための相談支援です。
現在は対象が広がっているのですべてが精神障害者ではないですが,基本は医療の領域です。
医療に関するものの多くは,市町村の役割ではなく,都道府県の役割となっています。
地域相談支援は,指定一般相談支援事業所が行います。
指定するのはもちろん都道府県です。
もう一方の計画相談支援は,ケアマネジメントです。
ケアプランを作成するサービス利用支援,モニタリングを実施する継続サービス利用支援,の2つがあります。
計画相談支援は,指定特定相談支援事業所が行います。
指定するのは市町村です。
介護保険の居宅介護支援事業所の指定は,現在は,都道府県,指定都市,中核市が行っていますが,一般の市町村は指定権限がありません。
しかし来年度からは市町村に指定権限が委譲されることになっています。
この部分に関しては,障害者の方が一歩先に実施していたということになります。
来年度以降は,ケアマネジメントを行う事業所の指定は市町村,となるので覚えやすくなります。
介護保険と似たものには,基幹相談支援センターがあります。
地域包括支援センターと業務もよく似ています。
しかし違う点もあります。
介護保険の地域包括支援センターは市町村の必置なのに対し,基幹相談支援センターは任意設置となっています。
さて,これらの情報をもとに今日の問題です。
第25回・問題57
障害者総合支援法のもとでの相談支援に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 支給決定プロセスにおいて,サービス等利用計画案は支給決定がなされた後に作成されるものである。
2 相談支援専門員は,指定計画相談支援においてサービス等利用計画を作成し,地域移行支援と地域定着支援を行う。
3 地域定着支援は,障害者支援施設に入所している障害者や精神科病院等に入院している精神障害者に対して,住居の確保や新生活の準備等について支援するものである。
4 相談支援専門員は,サービス利用支援においてサービス等利用計画を変更するとともに,関係者との連絡調整を行う。
5 基幹相談支援センターは,虐待防止等権利擁護のために必要な援助を行うことが期待されている。
先の情報だけでは,分かるものと分からないがあるかもしれませんね。
それでは,詳しく見ていきましょう。
1 支給決定プロセスにおいて,サービス等利用計画案は支給決定がなされた後に作成されるものである。
さきほどの説明にはなかったので,分からない人は▲をつけておきましょう。
支給決定のプロセスに関して,詳しく出題されたことはないので,ざっくり覚えるだけで良いのだと思います。
先に,サービス等利用計画案(暫定プラン)を作成して,それをもとに市町村審査会の意見などを含めて,市町村が支給決定します。
支給決定後には,正式なサービス等利用計画を作ります。
よって×です。
2 相談支援専門員は,指定計画相談支援においてサービス等利用計画を作成し,地域移行支援と地域定着支援を行う。
計画相談支援は,ケアマネジメントです。
地域移行支援と地域定着支援は,地域相談支援です。
よって×。
3 地域定着支援は,障害者支援施設に入所している障害者や精神科病院等に入院している精神障害者に対して,住居の確保や新生活の準備等について支援するものである。
地域移行支援と地域定着支援は,詳しく説明しませんでした。
しかし,イメージは湧くでしょう。
地域移行支援は,施設・病院から地域に移行するための支援,地域定着支援は,地域に移行した障害者が地域生活を継続できるための支援です。
施設入所・病院入院者に対して行うのは,地域移行支援です。
よって×。
4 相談支援専門員は,サービス利用支援においてサービス等利用計画を変更するとともに,関係者との連絡調整を行う。
サービス利用支援は,最初にケアプランをつくる支援です。
支給決定後,定期的に行うのは,継続サービス利用支援における継続サービス等利用計画の作成です。
よって×。
5 基幹相談支援センターは,虐待防止等権利擁護のために必要な援助を行うことが期待されている。
基幹相談支援センターは,介護保険の地域包括支援センターに相当します。権利擁護を業務の一つとしているのは,障害者も介護保険も同じです。よって正解です。
丸覚えするのではなく,一つひとつの制度の理由を考えると,名称も覚えやすくなり,ど忘れも起きにくくなります。
漢字は,それだけで意味を持っています。そこから類推することが可能です。
選択肢1は,▲を付けました。
しかし類推することはできます。
支給決定しているのに,サービス等利用計画案はおかしいのではないか,と思うでしょう。
この疑問が湧けば,サービス等利用計画案ではなく,正式なサービス等利用計画はいつ作成するのだろう,といったもう一つの疑問が出て来ます。
制度の内容は知らなくても,十分に対応可能です。