国家試験問題は,同じような難易度のものでそろえられているわけではありません。
とても難しいものから,比較的簡単なものなどが程よく含まれています。
とても難しい問題があっても,比較的簡単な問題が同数あれば,難易度が相殺されます。
難しい問題,つまり正解者0の問題があっても,全員が正解する問題があればよいことになります。
難しい問題でペースを乱される実力通りの力を発揮することができないので注意が必要です。
合否を分けるのは,中間レベルの問題をいかに正解できるかにかかっていると言ってもよいでしょう。
第31回・問題5 高血圧に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。
1 高血圧の診断基準は,収縮期(最高)血圧160 mmHg以上あるいは拡張期(最低)血圧90mmHg以上である。
2 本態性高血圧(一次性高血圧)は,高血圧全体の約50%を占める。
3 続発性高血圧(二次性高血圧)の原因の第1位は,内分泌性高血圧である。
4 高血圧の合併症に脳血管障害がある。
5 血液透析の導入の原因の第1位は,高血圧性腎硬化症である。
この問題が珍しいと思ったのは,今までの国試では,単に「収縮期血圧」「拡張期血圧」としか出題されてこなかったものが,( )で,最高血圧,最低血圧と出題したことです。
ソーシャルワーカーにとって,難しい用語をわかりやすくクライエントに伝えるのは,とても重要な役割です。
そういったことを教えているように思いました。
さて,この問題の答えは,選択肢4です。
落ち着いて問題を読めば,答えはわかると思います。
しかしそう単純ではないのは,選択肢1があるからです。
「正常血圧をしっかり覚えていなかった」と思うと,試験委員の仕掛けたトラップにはまることになります。
今まで国試では,高血圧の診断基準は出題されたことはありません。
このような問題があると,「しっかり覚えていなかった」と思うかもしれません。
知識不足では合格をつかむことはできませんが,知識があってもこのような問題で正解するためには,落ち着いて問題を解くことが何よりも大切です。
そうしないと,試験委員の仕掛けたトラップに簡単にはまります。
<今日の一言>
国試問題はいつも
少しずつ同じで,少しずつ違う
このため5つの選択肢がすべてわかる問題は本当に少ないです。
簡単にわかってしまうと,合格基準点が大幅に上がってしまうので当然でしょう。
難しそうに見えても,一つひとつを見ていけば,実はそんなに正解するのに難しい難易度の問題は多くはありません。
このことから,強く実感するのは,確実に正解することの難しさです。
最新の記事
勉強を始めるのは今!
来年に向けての参考書などの国家試験対策本は,この時期から出始めます。 この時から勉強を始める人が多いことを意味しています。 波に乗り遅れることなく,この時期に本格スタートしましょう。 既に勉強を始めている方は,この時期にモチベーションを高めて,ギアを一段上げることが大切です。 そ...
過去一週間でよく読まれている記事
-
イギリスCOSを起源とするケースワークは,アメリカで発展していきます。 1920年代にペンシルバニア州のミルフォードで,様々な団体が集まり,ケースワークについて毎年会議を行いました。この会議は通称「ミルフォード会議」と呼ばれます。 1929年に,会議のまとめとして「ミルフ...
-
ヒラリーという人は,さまざまに定義される「コミュニティ」を整理しました。 その結果,コミュニティの定義に共通するものとして ・社会的相互作用 ・空間の限定 ・共通の絆 があることが明らかとなりました。 ところが,現代社会は,交通手段が発達し,SNSやインターネットなどによって,人...
-
今回は,ピンカスとミナハンが提唱したシステム理論を取り上げたいと思います。 システム 内容 クライエント・システム 個人,家族,地域社会など,クライエントを包み込む環境すべてのも...
-
国試での出題実績のあるアプローチは以下の12種類です。 出題基準に示されているもの ・心理社会的アプローチ ・機能的アプローチ ・問題解決アプローチ ・課題中心アプローチ ・危...
-
ホリスが提唱した「心理社会的アプローチ」は,「状況の中の人」という概念を用いて,クライエントの課題解決を図るものです。 その時に用いられるのがコミュニケーションです。 コミュニケーションを通してかかわっていくのが特徴です。 いかにも精神分析学に影響を受けている心理社会的ア...
-
ウェルマン(Wellman,B.)が提唱した「コミュニティ開放論」とは,交通や通信手段の発達によって従来の「空間の限定」に特徴づけられる従来のコミュニティよりも広く展開されるものです。 つまりコミュニティの開放とは,「空間に限定されない」ととらえることができます。 それでは,今日...
-
バートレットは,ソーシャルワークの共通基盤として 「価値」「知識」「介入(技術)」 を挙げています。 ソーシャルワーカーなら,フィールドが違えど,共通してもっているもの,という意味です。 3 つの中のうち「 価値 」は,「相談援助の基盤と専門職」で中心的...
-
19世紀は,各国で産業革命が起こります。 この産業革命とは,工業化を意味しています。 大量の労働力を必要としましたが,現在と異なり,労働者を保護するような施策はほとんど行われることはありませんでした。 そこに風穴を開けたのがブース,ラウントリーらによって行われた貧困調査です。 こ...
-
人はその人だけで存在しているのではなく,周りの環境に影響を受けている存在です。 言われてみれば,至極当たり前のことではあります。 しかし,ここに至るには長い年月を要しました。 古くさかのぼれば,慈善組織協会(COS)の時代は,貧困になるのは,個人的な理由だと考えられてい...
-
問題解決アプローチは,「ケースワークは死んだ」と述べたパールマンが提唱したものです。 問題解決アプローチとは, クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する方法です。 このアプローチで重要なのは,「ワーカビリティ」という概念です。 ワー...