社会福祉士の国家試験は,平成29年度国試から2月第一週の日曜日に実施されています。
第31回国試は,2月に実施されるようになって2回目の試験でした。
現役受験組にとって一週間勉強期間が延びているのは,とても有利なことだと思います。
第31回国試の特徴は,特にないのが特徴だと言えます。
その中で,あえて特徴を見出すとすれば,
思考力が求められる試験だった
と言えます。
現在の試験委員長の坂田周一先生の1回である第26回国試と第31回国試の「現代社会と福祉」を比べてみると一目瞭然です。
第26回
問題22 社会的排除と社会的包摂
問題23 福祉国家
問題24 ニーズ(必要)
問題25 我が国における虐待及び暴力(ドメスティック・バイオレンス(DV)を含む)に関する法律
問題26 在留外国人
問題27 女性の地位
問題28 福祉サービスの提供の仕組み
問題29 福祉政策に関する社会福祉法の規定
問題30 福祉に関する住まい
問題31 我が国の雇用保険制度
福祉政策を中心として問題が展開されています。
坂田体制になった第26回以降では,これに近い構成が続いていました。
第31回
問題22 「人間の安全保障」
問題23 福祉社会づくり
問題24 イギリスにおける福祉政策の歴史
問題25 「福祉避難所の確保・運営ガイドライン」(内閣府)
問題26 ヘイトスピーチ解消法
問題27 世界幸福度報告書
問題28 日本における性同一性障害や性的指向・性自認
問題29 育児・介護休業法
問題30 社会福祉法
問題31 日本の最低賃金制度
第26~30回と違って,現代社会の問題を理解することが求められる問題で展開されています。
センター試験の「現代社会」に近づいてきているように思います。
これが特に特徴のない第31回国試の特徴と言えるでしょう。
ソーシャルワーク専門職のグローバル定義
ソーシャルワークは,社会変革と社会開発,社会的結束,および人々のエンパワメントと解放を促進する,実践に基づいた専門職であり学問である。社会正義,人権,集団的責任,および多様性尊重の諸原理は,ソーシャルワークの中核をなす。ソーシャルワークの理論,社会科学,人文学,および地域・民族固有の知を基盤として,ソーシャルワークは,生活課題に取り組みウェルビーイングを高めるよう,人々やさまざまな構造に働きかける。
この定義は,各国および世界の各地域で展開してもよい。
ソーシャルワークは,今までややもすると個別援助に偏りがちだったものを社会改革をも視野に入れたものとして位置づけたグローバル定義の意図に沿ったものであると言えます。
第31回国試は,他科目でもグローバル定義を念頭に置いた出題がなされています。
現代社会もその一環であると考えるのが自然でしょう。
第31回の1回だけを見て,今後も同様になるかはわかりません。
しかし,時折このような出題をすれば,社会福祉士を目指す人は,社会の動きに目を向けるようになることでしょう。
<今日の一言>
センター試験の「現代社会」の問題を見たことがありますか?
予備校などが発表する平均点では,受験生が苦労する様子がわかります。
本格的にこの科目を勉強した受験生よりも,もしかすると社会人の方が点数が取れるのではないかと思うほどです。
現代社会で発生していることの正しい理解が必要だからです。
第31回国試の「現代社会と福祉」の出題は,10問中6問が参考書等に書かれていないものの出題です。
このような出題をされると今までの勉強は何だったのだろうと思うでしょう。
しかしそれは他の受験生も同じです。
求められるは知恵です。知識の差は反映されにくいものと言えるでしょう。別の言い方をすれば「機転」とも言えると思います。
そのため,もしかすると勉強不足の人でも点数が取れるものだったかもしれません。
国試が終わった後の感想で「今年の問題は簡単だった」という人は,こういったタイプの受験生なのかもしれません。
勉強不足の人が点数が取れる試験というのは,寸暇を惜しんで勉強した人にとっては,許しがたいことかもしれません。
しかしそれはこの科目に限ったことです。勉強不足の人がほかの科目で高い得点をすることはできないでしょう。
国試の内容が少々変わっても,基礎力をつけることの大切は何ら変わるものではありません。
得点しにくい問題が多くなれば,合格基準点が下がるからです。
とはいうものの,何も手を打たないで手をこまねいているわけにはいきません。
社会問題に関連する新聞やニュースなどの報道には目を向けておくことも心がけましょう。情報が多い方が知恵を働かせることができます。しかしあくまでも「従」です。
まずは基礎知識をつけることが最優先です。知恵(機転)は,基礎力があってこそ活かされます。
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