2019年2月12日火曜日

国試のメッセージ性を考える~第31回国試のアクション・リサーチの出題から

第31回国試は,平成31年2月3日に実施されました。

社会福祉士の国家試験は平成元年に始まったので,社会福祉士は平成時代とともに歩んできた国家資格だと言えるでしょう。

第31回国試では,問題84でアクション・リサーチが正解となりました。

第31回・問題84 社会調査に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 統計調査とは,社会事象を質的に捉えることを目的とした社会調査である。
2 市場調査とは,行政の意思決定に役立てることを目的として市場の客観的基礎資料を得るための社会調査である。
3 世論調査とは,自治体の首長の意見を集約するための社会調査である。
4 アクションリサーチとは,特定の状況における問題解決に向けて調査者が現場に関与する社会調査である。
5 センサスとは,企業の社会貢献活動を把握することを目的とした社会調査である。

正解は,選択肢4です。

アクションリサーチが今まで出題されていたのは,出題基準では「6.質的調査の方法」でした。

それが今回は,「1.社会調査の意義と目的」で出題されました。

ここに試験委員のメッセージ性があるように感じます。

「社会調査の基礎」を苦手にしている受験生は多いです。
現場実践になじみがないからでしょう。

「社会調査はソーシャルワークと親和性があることに気が付いてほしい」というメッセージ性があったのではないでしょうか。

国試で「1)社会調査の意義と目的」から出題されたのは,第29回と第31回の2回のみです。

第29回では,

社会踏査とは,社会的な問題を解決するために行われる調査である。

が正解となっています。

第29回と第31回の正解選択肢には共通するものがあるように感じます。


ソーシャルワークの一手法にはケースワーク(個別援助技術)があります。

ケースワークは,COS(慈善組織協会)の友愛訪問の活動から,リッチモンドが科学性を追求したところから発展してきたものです。
しかしソーシャルワークはケースワークだけではありません。

そのために,「ソーシャルワークのグローバル定義」では,マクロレベル(政策レベル)を重視しました。

そこにコミットするための手法が,アクション・リサーチや社会踏査などを通じたソーシャルアクションです。


<今日の一言>

国試には,メッセージ性が存在します。
メッセージ性があるのは,ズバリ「正解選択肢」です。

そういった視点で国試問題を眺めてみると別な一面が見えてくることがあります。

メッセージ性とは,その問題を出題する意義です。

社会福祉士の国家試験は,社会福祉士に必要な知識,能力を問います。

もちろん基礎的な知識は欠かせませんが,記憶力に優れた社会福祉士を養成しようとしているわけではありません。

柔軟な思考と豊かな発想力も必要です。

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