社会福祉士の国試は,国が考える社会福祉士のあるべき姿に従って出題されます。
養成カリキュラムがそうなっているので,国試も当然そうなるでしょう。
そこが実は国試突破のために重要なポイントでもあります。
専門科目の「社会調査の基礎」や「福祉サービスの組織と経営」などは難しい科目ですが,どちらも現行カリキュラムで加わった科目です。
これらの科目は,社会福祉士として絶対に押さえておかなければならないものでしょう。
それでは今日もアクション・リサーチに関する問題を紹介します。
第28回・問題89 アクションリサーチに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 研究対象について,非参与的に観察し研究を行うものである。
2 質的調査が用いられ,質問紙調査のような量的調査は用いられない。
3 目的は,科学的な因果関係の検証である。
4 計画,実施,事実発見の循環が,基本プロセスとして提唱されている。
5 調査を通じて得られた知見を実践活動と結び付けてはならない。
この問題は第28回のものなので,過去3年間の過去問で勉強してきた人でも何度も解いたものでしょう。
アクション・リサーチは,問題を改善するために,改善策を立てて実践することです。
たったこれだけの理解で多くの問題は解けます。
それでは解説です。
1 研究対象について,非参与的に観察し研究を行うものである。
これは間違いです。
研究対象について,非参与的に観察し研究を行うものは,「非参与観察」です。
2 質的調査が用いられ,質問紙調査のような量的調査は用いられない。
これも間違いです。
前回紹介したように,アクション・リサーチでは問題点を明らかにすることが欠かせません。
そのためにアンケートなどを実施することもあります。
「用いられない」という言い切り表現になっていることにも着目しましょう。
3 目的は,科学的な因果関係の検証である。
これも間違いです。
因果関係とは,「こうするとこうなる」ということです。
因果関係を調べるなら量的調査の縦断調査です。
縦断調査は複数回調査します。そのため因果関係を見出しやすくなります。
同じ量的調査でも,横断調査は1回きりの調査なので,相関関係は見出すことはできますが,因果関係を見出すことには限界があります。しっかり覚えておきましょう。
4 計画,実施,事実発見の循環が,基本プロセスとして提唱されている。
これが正解です。
アクション・リサーチは改善策を立てて実践します。そのためPDCAサイクルを用います。
PDCAサイクルは「福祉サービスの組織と経営」で出題されるものです。
5 調査を通じて得られた知見を実践活動と結び付けてはならない。
これは間違いです。
実践に活かしてこそアクション・リサーチです。
<今日の一言>
今日の問題では,「計画,実施,事実発見の循環が,基本プロセスとして提唱されている」という一風変わったものが正解になっています。
これをすぐ正解にすることはとても難しいものです。
今なら,参考書などにも書かれているので,全然難しく感じないことでしょう。
しかし,それはとても危険なことです。国試は,難しいです。
答えがすぐわかる問題はほとんどないと思っても良いでしょう。
模擬試験を受けた方は,模擬試験を受けた時のことを思い出しましょう。
とても難しかったのではないでしょうか。
それでも一生懸命に考えたら解けた問題もあったと思います。
模擬試験よりも本試験の方が明らかに点数が取りやすいです。
それは,模擬試験の受験者の得点分布を発表している団体の模擬試験の点数を見ればあきらかです。
第30回の国試の合格率は約30%でした。
例えばソ教連模試の得点を上位30%で区切ると,なんと70点程度のところに30%ラインが引かれます。
前年度のデータは今は持ち合わせていませんが,前年も同程度だったように思います。
第30回の合格基準点は99点でした。30点近く開きがあります。
これでわかるように,本試験の方が模擬試験よりも点数が取れます。
しかしそうであっても国試は難しいです。それを覚えておきましょう。
「あれだけ勉強したのに」と思います。
それでも落ち着いて消去法で答えをあぶり出していけば,答えは見つけられます。
答えがすぐわかる問題が多くなれば,第30回国試のように合格基準点が上がってしまいます。
考えても解けない問題が多ければ,第25回国試のように合格基準点が下がります。
誰もがすぐ解ける問題が出題されないのは,こういった理由です。
今まで勉強してきた人は,国試問題に真摯に向き合えば,難しく見えた問題でも答えが見えてきます。
それが今の国試の姿です。
ソーシャルワーカーは,多くの場合は一人で活動します。誰かがそばにいてくれる場面は,ライブ・スーパービジョンのような場面でなければあまりないでしょう。
難しい問題にぶつかっても,自分で考えなければなりません。
現場で働く方はいつも行っていることです。
国試でもその力を発揮しましょう。
難しい問題だからといって,思考を止めてしまったらそれでおしまいです。
今まで勉強してきた人は,国試問題に真摯に向き合えば,難しく見えた問題でも答えが見えてきます。
大丈夫! あなたならきっとできます!!
最新の記事
障害者総合支援法に規定される障害福祉サービスの実施主体
障害者総合支援法に規定される障害福祉サービスの実施主体は,市町村です。 同法における都道府県の役割は,障害福祉計画の作成,地域生活支援事業の実施,障害福祉サービス事業者等の指定などに限られます。 なお,自立支援医療には,育成医療,更生医療,精神通院医療の3種類がありますが,このう...
過去一週間でよく読まれている記事
-
約3週間にわたって,「福祉行財政と福祉計画」に取り組んできました。 今回から科目は「社会保障」に移ります。 どの科目でも共通かもしれませんが,この科目は社会保障制度の骨組みを理解することが求められます。 社会保障は,何を財源とするかによって ①社会保険制度(社会保...
-
今回は,保護観察官と保護司です。 保護観察官 〈配置〉 地方更生保護委員会事務局及び保護観察所 〈業務〉 保護観察,調査,生活環境の調整その他犯罪をした者及び非行のある少年の更生保護並びに犯罪の予防に従事する。 ...
-
ホッブズ問題 とは,社会の人々が自分の利益のために行動する「万人の万人に対する闘争」の状態の時,どのように社会の秩序が保たれるのか,について問う命題です。 社会学者のパーソンズは,この命題に対して,人は社会のルールに従って行為するため,社会の秩序が保たれると考えました。これを「主...
-
今回のテーマは「ニーズのとらえ方と充足方法」です。 このように書くとソーシャルワークの話かと思う人もいると思いますが,福祉政策のニーズを考えてみたいと思います。 結局は一緒です。 ポイントは,以下の通りです。 ・バイオ(身体的) ...
-
今回は,保護観察官と保護司を学びましょう。 保護観察官と保護司は,お互いに協力し合い,保護観察などの業務に携わります。 保護観察官 保護司 保護観察、調査、生活環境の調整その他犯罪をした者及び...
-
ソーシャルワークは,慈善組織協会( COS )の活動が始まりだとされています。 ソーシャルワークに限らず,始まりは出題されやすいものです。 細かくいうと C OS はケースワーク(個別援助)の源流 セツルメントはグループワーク(集団援助)の源流で...
-
伝統的なソーシャルワークは, ケースワーク グループワーク コミュニティワーク として発展してきたことを学んだ人もいることでしょう。 この統合を図ったのは「ジェネリック」という考え方でした。 第 37 回から実施される新しい...
-
社会福祉士は,社会福祉士及び介護福祉士法に規定される国家資格です。 同法では以下のようなものが規定されています。 誠実義務 その担当する者が個人の尊厳を保持し,自立した日常生活を営むことができるよう,常にその者の立場に立って,誠実にその業務を行わなければならない。 ...
-
社会保険制度は,社会保険料を財源として運用されますが,日本の社会保険制度には,社会保険料だけではなく,税も財源としていることに特徴があります。 しかし,注意してほしいのは,財源割合では税が社会保険料を超えるようには制度設計はされないことです。 もし税財源の...
-
19世紀は,各国で産業革命が起こります。 この産業革命とは,工業化を意味しています。 大量の労働力を必要としましたが,現在と異なり,労働者を保護するような施策はほとんど行われることはありませんでした。 そこに風穴を開けたのがブース,ラウントリーらによって行われた貧困調査です。 こ...