2019年2月2日土曜日

アクション・リサーチの目的

社会福祉士の国試は,国が考える社会福祉士のあるべき姿に従って出題されます。
養成カリキュラムがそうなっているので,国試も当然そうなるでしょう。

そこが実は国試突破のために重要なポイントでもあります。

専門科目の「社会調査の基礎」や「福祉サービスの組織と経営」などは難しい科目ですが,どちらも現行カリキュラムで加わった科目です。

これらの科目は,社会福祉士として絶対に押さえておかなければならないものでしょう。
それでは今日もアクション・リサーチに関する問題を紹介します。


第28回・問題89 アクションリサーチに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。

1 研究対象について,非参与的に観察し研究を行うものである。

2 質的調査が用いられ,質問紙調査のような量的調査は用いられない。

3 目的は,科学的な因果関係の検証である。

4 計画,実施,事実発見の循環が,基本プロセスとして提唱されている。

5 調査を通じて得られた知見を実践活動と結び付けてはならない。


この問題は第28回のものなので,過去3年間の過去問で勉強してきた人でも何度も解いたものでしょう。

アクション・リサーチは,問題を改善するために,改善策を立てて実践することです。
たったこれだけの理解で多くの問題は解けます。


それでは解説です。


1 研究対象について,非参与的に観察し研究を行うものである。

これは間違いです。

研究対象について,非参与的に観察し研究を行うものは,「非参与観察」です。


2 質的調査が用いられ,質問紙調査のような量的調査は用いられない。

これも間違いです。

前回紹介したように,アクション・リサーチでは問題点を明らかにすることが欠かせません。

そのためにアンケートなどを実施することもあります。

「用いられない」という言い切り表現になっていることにも着目しましょう。


3 目的は,科学的な因果関係の検証である。

これも間違いです。

因果関係とは,「こうするとこうなる」ということです。
因果関係を調べるなら量的調査の縦断調査です。

縦断調査は複数回調査します。そのため因果関係を見出しやすくなります。

同じ量的調査でも,横断調査は1回きりの調査なので,相関関係は見出すことはできますが,因果関係を見出すことには限界があります。しっかり覚えておきましょう。


4 計画,実施,事実発見の循環が,基本プロセスとして提唱されている。

これが正解です。

アクション・リサーチは改善策を立てて実践します。そのためPDCAサイクルを用います。

PDCAサイクルは「福祉サービスの組織と経営」で出題されるものです。


5 調査を通じて得られた知見を実践活動と結び付けてはならない。

これは間違いです。

実践に活かしてこそアクション・リサーチです。


<今日の一言>

今日の問題では,「計画,実施,事実発見の循環が,基本プロセスとして提唱されている」という一風変わったものが正解になっています。

これをすぐ正解にすることはとても難しいものです。

今なら,参考書などにも書かれているので,全然難しく感じないことでしょう。

しかし,それはとても危険なことです。国試は,難しいです。

答えがすぐわかる問題はほとんどないと思っても良いでしょう。


模擬試験を受けた方は,模擬試験を受けた時のことを思い出しましょう。

とても難しかったのではないでしょうか。

それでも一生懸命に考えたら解けた問題もあったと思います。

模擬試験よりも本試験の方が明らかに点数が取りやすいです。

それは,模擬試験の受験者の得点分布を発表している団体の模擬試験の点数を見ればあきらかです。

第30回の国試の合格率は約30%でした。

例えばソ教連模試の得点を上位30%で区切ると,なんと70点程度のところに30%ラインが引かれます。

前年度のデータは今は持ち合わせていませんが,前年も同程度だったように思います。

第30回の合格基準点は99点でした。30点近く開きがあります。

これでわかるように,本試験の方が模擬試験よりも点数が取れます。

しかしそうであっても国試は難しいです。それを覚えておきましょう。

「あれだけ勉強したのに」と思います。

それでも落ち着いて消去法で答えをあぶり出していけば,答えは見つけられます。


答えがすぐわかる問題が多くなれば,第30回国試のように合格基準点が上がってしまいます。

考えても解けない問題が多ければ,第25回国試のように合格基準点が下がります。

誰もがすぐ解ける問題が出題されないのは,こういった理由です。

今まで勉強してきた人は,国試問題に真摯に向き合えば,難しく見えた問題でも答えが見えてきます。

それが今の国試の姿です。

ソーシャルワーカーは,多くの場合は一人で活動します。誰かがそばにいてくれる場面は,ライブ・スーパービジョンのような場面でなければあまりないでしょう。

難しい問題にぶつかっても,自分で考えなければなりません。

現場で働く方はいつも行っていることです。

国試でもその力を発揮しましょう。

難しい問題だからといって,思考を止めてしまったらそれでおしまいです。


今まで勉強してきた人は,国試問題に真摯に向き合えば,難しく見えた問題でも答えが見えてきます。


大丈夫! あなたならきっとできます!!


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