国家試験の問題は,すべて同じ難易度ではありません。
問題によって
①極めて難しい
②やや難しい
③普通
④比較的簡単
⑤簡単
に分類することができます。
これがアンケートによる調査の結果なら「順序尺度」となります。
傾向はみることはできます。
しかし,主観に基づくものなので,これによって国試の難易度自体を推測することはほとんどできません。
なぜなら,AさんとBさんとCさんでは,同じく「①極めて難しい」にチェックしても,それぞれ程度が違います。
試験後にSNSで飛び交う感想は,あくまでも個人の感想にすぎません。
試験センターが公表している情報は,受験者数(都道府県別),合格者数(都道府県別),合格率,合格基準点,年代別の合格者数だけです。
しかし試験センターは公表していない受験者に関する膨大な情報を蓄積しています。
その一つが国試の問題別正答率でしょう。
私たちが推測するのは,そのデータを参考にして,150問全体の平均正答率を60%程度になるように出題しているのではないかということです。
全員が正解できない問題があっても,全員が正解できる問題がそれと同数であれば,打ち消されます。
①を多く出題しても,⑤が同数あれば,良いということになります。
試験後の感想で言えば,
「今年は難しかった」という感想は,①に着目したもの
「今年は簡単だった」という感想は,⑤に着目したもの
とも言えるのではないでしょうか。
試験センターが今までの受験者のデータを分析した結果,①~⑤に振り分けて出題しても,それは試験センターの予測によるものなので,受験者の出来具合によって予測からずれます。想定と違う結果になることは,世の中ではよくある話です。
そのため,合格基準点を上下させることでバランスを取ることになります。
受験者側の視点から考えると,⑤が確実に正解できれば,①が正解できなくても問題はありません。
第31回国試で,「①極めて難しい」と受験者が感じた問題の一つには
以下の問題ではないでしょうか。
第31回・問題20 社会的行為の主観的意味を理解することを通して,その過程及び結果を説明しようとする考え方を表す用語として,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 合理的選択理論
2 主意主義的行為
3 理解社会学
4 コミュニケーション的行為
5 社会システム論
ナニコレ?
という感じでしょう。
社会的行為は,今までの国試では,ウェーバーとハーバマスが出題されてきました。しっかり勉強した人はその内容を覚えたことでしょう。
しかしまったく違う内容が出題されたことで驚きとともに勉強不足を感じたのではないでしょうか。
実は,この問題は,ウェーバーの理解社会学を述べたものです。
社会学を学んだことのある人は,理解社会学の内容はわからなくてもその言葉は聞いたことがあるものです。
しかし,多くの受験者はそうではありません。
この問題が出題されたことで,これから出版される参考書の中には,
ウェーバーは,理解社会学を提唱した。
ジンメルは,形式社会学を提唱した。
といった内容を付け加えるものもあるでしょう。
第32回以降に受験する人は念のために勉強しておくのが無難です。
しかし,忘れてはいけないのは,「①極めて難しい」は,解けなくてもよいと思って出題しているものです。
受験者が覚えておかなければならない本筋の部分から外れているものとは違います。
国試合格のために必要なことは,「①極めて難しい」が得点できることではなく,「③普通」「④やや簡単」の問題を確実に正解する確実性です。
<今日の一言>
第31回国試を受験された方は,国試問題は見たくもないと思います。
もし不合格になったら,その時は問題をぜひ振り返ってみると良いと思います。
多くの人は,よくよく問題を見てみたら正解できる問題があると思います。しかもそれが正解できたら合格できていたということもよくある話です。
問題の難易度は,5つの選択肢の相互作用によって生まれます。
知識をつけるだけでは,また同じトラップにはまってしまう可能性は高いです。
同じ勉強法をしていると同じ結果になります。
学習部屋では,マイナスのスパイラルをプラスのスパイラルに変えられるように問題の目の付けどころを提案していきたいと思います。
必要以上に知識を広げようと思うとあいまいな知識が増えるおそれがあります。
数は少なくても,確実な知識が必要です。
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