社会福祉調査の基礎は難しい
というイメージが一人歩きしていることもあり,受験生が尻込みすることが多いようです。
参考書には,統計学の知識が求められるものも掲載されているので,「こんな難しいことを覚えなければならないのか」と思ってしまうからです。
しかし,それは6問中,たった1問だけです。理解するのが難しければ捨ててもよい範囲だと言えます。
そのほかの部分で十二分にカバーできます。
社会福祉調査の基礎は難しくない
そう思って,勉強に取り掛かるととても気が楽になると思います。
試験センターは,「社会調査の基礎は難しい」というイメージを使って,うまく難易度を調整しているように思います。
すごいピッチャーは,すごい球を一球投げておいて,あとはバッターがいつその球が来るのかというイメージをもっているので,すごい球を投げなくても打ち取ることができます。
試験センターでは,受験者のデータは,受験者数,合格者数,年代別の合格者数,都道府県別の合格者数,そして合格基準点,合格率のみ発表しています。
平均点が発表されれば,この科目の平均点は確実に上がっていると考えられます。
しかし難しいイメージから勉強を敬遠した人は点数が取れないので,しっかり勉強した人との差が広がりやすいです。
さて,今日から質的調査に戻ります。
質的調査で用いられる主なものは
観察法,面接法,ドキュメント分析です。
そのうち面接法で出題される主なものは,
構造化面接法
非構造化面接法
半構造化面接法
フォーカス・グループインタビュー
ライフストーリー・インタビュー
本サイト内の過去記事を検索すると,たくさん出てきますので,まずは確認してみてください。
それは,今日の問題です。
第28回・問題88 グループインタビューに関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 対象者の選定は,有意標本抽出によって行われる場合が多い。
2 参加者間の相互作用が起こらないように,司会者が気をつける。
3 記録係は,参加者の非言語的反応について記録をする必要はない。
4 一度に参加する人数は,多いほど良い。
5 質問は,参加者が明確に回答できるように選択式を基本とする。
インタビューは,個人に行うものとグループ(集団)に対して行うものがあります。
それぞれにはそれぞれの意義があります。
それでは,解説です。
1 対象者の選定は,有意標本抽出によって行われる場合が多い。
この問題を見た人は,アッと思った人もいたでしょう。
うまい作問だと思います。
無作為抽出が必要なのは,母集団の性質を調べる量的調査です。
質的調査では,無作為抽出をする必要はほとんどありません。
例えば,学校を考えた場合,宿題を忘れてくる生徒に対して,担任の先生がインタビューを行う場合,無作為抽出をすることはまずないでしょう。
グループインタビューは,グループ間での気づきも期待します。
他の人がインタビューに答えることで,他の人の考え方がわかるからです。
ということで,グループインタビューは有意抽出を行うことが多いので,正解です。
2 参加者間の相互作用が起こらないように,司会者が気をつける。
これも間違いです。
相互作用を期待して,グループインタビューは実施されます。
3 記録係は,参加者の非言語的反応について記録をする必要はない。
これも間違いです。
非言語的(ノンバーバル)反応は,多くの情報が含まれます。
記録しないともったいないでしょう。
4 一度に参加する人数は,多いほど良い。
これも間違いです。
多いほど良いのだったら,地球人約75億人みんながそろったインタビューが良いことになります。
宇宙人も含めたらもっと良いことになります。
そんなことはありません。
何事も適切な規模があります。時には極端な例を思い浮かべるのも正解にたどりつくためには必要なテクニックです。
5 質問は,参加者が明確に回答できるように選択式を基本とする。
これも間違いです。
グループインタビューは,お互いの気づきを期待します。
他の人が答えることで,新しい発想などができます。
選択式の質問に答えるなら,グループインタビューの意味はまったくないと言えます。
<今日の一言>
今日から,次回の国試に向けて本格スタートしました。
国試は,あいまいな知識では,正解にたどり着くことは難しいです。
確実に覚えるためには,参考書と過去問を合わせて勉強することが良いです。