社会福祉士の国家試験は基本的に正しいものを1つ,あるいは2つ選ぶ問題で構成されています。
当然のことですが,正しいもの以外は誤りです。
間違っているものをいかにも正しいように思わせるのは決して簡単なことではありません。
試験委員が問題を作る時に,頭を悩ませる部分でしょう。
以前は,間違い選択肢をつくるときの常とう手段を使って(のみやすべてなど),問題が作られる傾向がありました。
しかし,そういったものを入れ込むと,知識がなくても勘の良い人は解けてしまうので,最近の問題にはほとんどみられません。
1つの選択肢に使える文字数は「約40字」です。
文字数に関する記事(合格できる扶養の知識(2/2)~いよいよまとめの段階)
https://fukufuku21.blogspot.com/2018/12/22.html
文字数が短くなっているため,以前にみられた「言い回しの難解さ」で受験生をけむに巻くような出題もできなくなっています。
あいまい表現に正解多し
https://fukufuku21.blogspot.com/2018/01/blog-post_19.html
というのも,以前よりも出現頻度は減ってきています。しかし使われる可能性は十分あるので,覚えていて決して損はありません。
その中で,今も高い頻度で使われるのは,
セット入れ替え作問法
です。
セット入れ替え作問法とは
例えば
人体の構造と機能及び疾病で出題される,平滑筋/横紋筋の内容を入れ替えるものです。
<出題例>
平滑筋は随意的に収縮できる。
答え
平滑筋は不随意筋なので,自分の意思で収縮させることができません。随意筋は横紋筋です。ただし横紋筋の中でも心筋は不随意筋です。
セット入れ替え作問法対策
出題例で分かるように,知識ゼロでは正解するのは難しいです。問題に不自然さがないので,正解にも間違いにも見えてくるからです。
これからの勉強では,平滑筋/横紋筋といったようなセットになるものは,その違いを押さえながらしっかり覚えることです。
これだけで得点力はかなり上がるはずです。
しっかり覚えないとあいまいになり,間違えます。
こういったところでのミスは極力避けたいです。
なお,セット入れ替作問法は,選択肢ごとに行われるもので,問題の中での入れ替えはほとんど行われることはありません。
具体的にいうと,横紋筋と平滑筋の2つを出題して,内容を入れ替えるといった手法はほとんどみられないということです。
2つとも出題してしまうと,勘の良い人は「入れ替えが行われているかもしれない」と思って2つとも消去できてしまうからです。そのため,セットになるものは2つとも出題しません。
ただし,精神保健福祉士の専門科目では,多用されています。
因みに,横紋筋でセット入れ替え手法を使うのは,ちょっと難しいです。なぜなら,先述のように,横紋筋のうちでも心筋は不随意筋だからです。
横紋筋で,間違い選択肢を作成すると
横紋筋は,心筋を含めて不随意筋である。
といった文章になりますが,これでは勘の良い人は「心筋を含めて」が間違いっぽいと気がついてしまいます。
第27回国試に出題されたセットもの(一部)
人体の構造と機能及び疾病
平滑筋/横紋筋
活動/参加
心理学理論と心理的支援
特性論/類型論
問題焦点型コーピング/情動焦点型コーピング
社会理論と社会システム
社会指標/経済指標
こんな感じです。そのあとの科目にもたくさんあるでしょう。
「あれはこれとセットになる」と思いつくものは数多くあるでしょう。そこがねらわれるのです。
これからの勉強では,今まで勉強してきた内容を確実に押さえることが大切です。新しい知識は追い求めることは絶対に必要ないです。
ネットやSNSなどでは,
新しく施行された●●法をチェック!!
とか
●●白書に目を通しておこう!!
など,さまざまな情報が飛び交っていることでしょう。
しかし,出るか出ないか分からないものを押さえても,本来押さえておかなければならないものがあいまいになって得点できないのでは意味がないので注意が必要です。
というか,そういった情報には耳を貸さないのが賢明です。
今まで学習してきた範囲をひたすら繰り返すことが大切です。その時にセット入れ替え手法対策を意識することが大切です。
昨今の国試問題は,難しい内容で受験生をけむに巻くものではありません。
一つひとつを確実に覚えて,合格をつかみ取りましょう!!
次回からは専門科目に取り組んていきたいと思います。
※今日の問題は休みます。
最新の記事
働者災害補償保険制度
日本の社会保険は,5種類あります。 年金保険制度と医療保険制度は,従来あった制度を利用して,国民皆保険・皆年金を構成しているため,制度が複雑です。 それに比べると,戦後にできた労働保険(労災保険と雇用保険)は,制度がシンブルです。 今回は,そのうちの労災保険(労働者災害補償保険...
過去一週間でよく読まれている記事
-
問題解決アプローチは,「ケースワークは死んだ」と述べたパールマンが提唱したものです。 問題解決アプローチとは, クライエント自身が問題解決者であると捉え,問題を解決できるように援助する方法です。 このアプローチで重要なのは,「ワーカビリティ」という概念です。 ワー...
-
ソーシャルワークは,ケースワーク,グループワーク,コミュニティワークとして発展していきます。 その統合化のきっかけとなったのは,1929年のミルフォード会議報告書です。 その後,全体像をとらえる視座から問題解決に向けたジェネラリスト・アプローチが生まれます。そしてシステム...
-
ホリスが提唱した「心理社会的アプローチ」は,「状況の中の人」という概念を用いて,クライエントの課題解決を図るものです。 その時に用いられるのがコミュニケーションです。 コミュニケーションを通してかかわっていくのが特徴です。 いかにも精神分析学に影響を受けている心理社会的ア...
-
まずは戦後の社会保障制度の変遷を考えてみたいと思います。 昭和 20 年代 は,国民全体が貧しく,救貧の時代です。救貧の中心的制度は,公的扶助です。 昭和 30 年代 に入ると,高度経済成長の時代になり,防貧の時代になります。防貧の中心的制度は,社会保険で...
-
今回から,質的調査のデータの整理と分析を取り上げます。 特にしっかり押さえておきたいのは,KJ法とグラウンデッド・セオリー・アプローチ(GTA)です。 どちらもとてもよく似たまとめ方をします。特徴は,最初に分析軸はもたないことです。 KJ法 川喜多二郎(かわきた・...
-
コミュニティはさまざまな人が定義していますが,ヒラリーの研究によって,それらに共通するものとして ・社会的相互作用 ・空間の限定 ・共通の絆 があることが示されました。 しかし,現代では,空間が限定されないコミュニティが広がっています。それをウェルマンは,「コミュニティ開放論」と...
-
イギリスCOSを起源とするケースワークは,アメリカで発展していきます。 1920年代にペンシルバニア州のミルフォードで,様々な団体が集まり,ケースワークについて毎年会議を行いました。この会議は通称「ミルフォード会議」と呼ばれます。 1929年に,会議のまとめとして「ミルフ...
-
システム理論は,「人と環境」を一体のものとしてとらえます。 それをさらにすすめたと言えるのが,「生活モデル」です。 エコロジカルアプローチを提唱したジャーメインとギッターマンが,エコロジカル(生態学)の視点をソーシャルワークに導入したものです。 生活モデルでは,クライエントの...
-
1990年(平成2年)の通称「福祉関係八法改正」は,「老人福祉法等の一部を改正する法律」によって,老人福祉法を含む法律を改正したことをいいます。 1989年(平成元年)に今後10年間の高齢者施策の数値目標が掲げたゴールドプランを推進するために改正されたものです。 主だった...
-
今回は,ベヴァリッジ報告を取り上げたいと思います。 ベヴァリッジは,5大巨悪(5つの巨人)を以下の方法で根絶することを考えました。 窮乏 ➡ 社会保険制度 疾病 ➡ 保健・医療制度 無知 ➡ 教育・科学制度 不潔 ➡ 住...