2019年1月10日木曜日

調査票の配布と回収(1/5)

量的調査で多く用いられる方法は,質問に答えてもらう質問紙調査ではないでしょうか。

国家試験の出題基準では

5)質問紙の作成方法と留意点
6)調査票の配布と回収

が示されています。

順番で言えば,「質問紙の作成方法と留意点」が先ですが,簡単であり,出題頻度の高い6)を先に紹介したいと思います。

国試に出題されたのは,第25回,第26回,第28回,第29回,第30回です。

3年連続の出題ですし,第27回に出題されていないことから,第31回には出題されない可能性は高いです。

しかしヤマを張らない主義を推し進める立場では,これ以上の高確率の出題頻度のものはそんなに多くはないので外すわけにはいかないのです。

これまでに出題されたもの

郵送調査法
個別面接調査法
RDD
集合調査法
留置調査法
インターネット調査
自記式(自計式)
他記式(他計式)

5回も出題されているのに,出題されているのは,たった7項目です。

つまり同じ内容が繰り返し出題されているのです。

間違うのはもったいないです。

それでは今日の問題です。

第25回・問題87社会調査におけるデータ収集方法に関する次の記述のうち,適切なものを2つ選びなさい。

1 郵送調査法においては,未回収の対象者に対して何度か督促を行うことを想定してあらかじめ督促状を準備する。

2 個別面接調査法は,個々の対象者に調査員が直接面接して行う自計式の調査である。

3 RDD(Random Digit Dialing)法を用いた電話調査では,対象とする調査地域の電話帳を用いる。 

4 集合調査法は,一種の集団効果が作用してバイアスが生じることがある。

5 留置調査法では,対象者を個別に訪問するため,対象者本人の回答であることを確認できるというメリットがある。


第25回国試から「2つ選ぶ」問題が出題されるようになりました。

2つ選ぶ問題の出題数(共通科目・専門科目合わせて)は以下の通りです

第25回 12問
第26回 16問
第27回 15問
第28回 20問
第29回 12問
第30回 11問


第28回の20問は多すぎたという反省があったのか分かりませんが,次の第29回から数が減っています。

2つ選ぶ問題の数が少ないということは,突然2つ選ぶ問題が出現することを意味します。うっかりミスも起きがちになりますので,十二分に気を付けましょう。

それでは解説です。


1 郵送調査法においては,未回収の対象者に対して何度か督促を行うことを想定してあらかじめ督促状を準備する。

これは正解です。

調査票の配布・回収の方法でよく使われるのが,郵送法です。

郵送調査法のメリットはコストがあまりかからないため,手軽に行える方法であるのがメリットです。しかしデメリットは回収率が低いことです。

突然調査票が送られてきたとしたら,あなたは協力しますか?

もちろん協力してくれる人がいるため,郵送調査法は成り立ちますが,一般的には協力してくれる人はそんなに多くはないと思います。

そこで回収率を高めるため,督促状を郵送するという方法を取ります。

督促状をあらかじめ準備するのは,時間を置かずに送付するためです。送付時期が遅くなると,督促状の効果が薄れるためです。


2 個別面接調査法は,個々の対象者に調査員が直接面接して行う自計式の調査である。

これは間違いです。

自計式(自記式)と他計式(他記式)は理解しにくいために,引っ掛けで何度も何度も出題されています。

自は,調査対象者が「自ら」記入することを指しています。

他は,調査者が調査対象者に代わって記入するため「他」と表現します。

個別面接調査法は,調査員が記入するので「他計式」です。

個別面接調査法は,直接面接して行うので,人には言いにくいことは答えにくいということを理解しておく必要があります。

質問したことが調査対象者の本音であるとは限らないということです。


3 RDD(Random Digit Dialing)法を用いた電話調査では,対象とする調査地域の電話帳を用いる。

これも間違いです。

RDDは,コンピュータでランダムに電話番号を発生させて電話をかけます。

電話帳を用いるのは伝統的な方法ですが,現代では電話帳の代わりにRDDを用いて電話調査を行います。


4 集合調査法は,一種の集団効果が作用してバイアスが生じることがある。

これは正解です。

集合調査法は,他の人もいるため,回答に影響を受ける可能性があります。


5 留置調査法では,対象者を個別に訪問するため,対象者本人の回答であることを確認できるというメリットがある。

これは間違いです。

留置調査法は,調査員が調査票を配布する方法です。郵送調査法に比べると回収率が高いのがメリットですが,コストがかかります。

またデメリットとしては,誰が回答したか分からないということもあります。

そこで,回収の時に「回答していただいたのは●●さんですか」と確認する方法もあります。本当は在宅高齢者に対する調査だったにもかかわらず,在宅高齢者の家族が変わりに回答しているということもあり得るからです。


<今日の一言>

調査票の配布・回収は,メリット・デメリットを整理しておくことが大切です。

おそらく,今まで国試に出題された内容を理解できれば,大丈夫だと思います。

今回も含めて,全5回ありますので,ぜひ参考にしてみてください。
次回から順に取り上げていきます。

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