2019年1月25日金曜日

質的調査の徹底理解(その1)~1点を底上げする解答テクニック

社会調査の基礎は,量的調査のイメージ強く,特にその中でもデータの集計が難しい,というイメージがある方が多いようです。

簡単ではないことは事実でしょう。

しかしそんな科目の中にも,食い込める領域はいくつかあります。

その一つが質的調査です。

量的調査が苦手なら,質的調査,特に観察法と面接法はしっかり勉強しておく必要があるでしょう。

覚えるべきポイントは少ないです。

しかも言葉的に解ける問題も出題されることがある領域でもあります。

今回は,そんな解答テクニックを紹介していきたいと思います。

それでは早速今日の問題です。


第22回・問題81 調査手法としての観察法に関する次の記述のうち,適切なものを一つ選びなさい。

1 観察法においては,文字により記録したデータが主たる分析対象となるので,写真や音声などは,分析対象とはならない。

2 観察法においては,マジックミラー(ワンウェイミラー)を使った観察を行ってはならない。

3 参与観察と非参与観察の違いは,観察に当たって,調査者が観察対象者に具体的な指示を出すか出さないかである。

4 観察中にメモをするなどして蓄積されるフィールドノーツは,非参与観察では大いに活用してよいが,参与観察では使用しない方が望ましい。

5 参与観察における調査者の立場は,観察に徹する「完全な観察者」と参加を重視する「完全な参加者」との間で行き来することがある。


第22回は,現行カリキュラムの1回目,つまり「社会調査の基礎」ができた時の1回目となります。

初めての出題だったためかとても張り切った内容となり,その結果,とても難しいものとなりました。

量的調査の部分が難しかったのです。それが今にもその部分が難しいというイメージとなって残ったように思います。


この当時は,今と違って文章が洗練されていないので,日本語的に解けてしまう問題は多かったのです。

今はそのような問題が少なくなってきたとは言え,この科目ではまだまだそのような問題があります。

解答テクニックを用いなくても,正解できると思いますが,知っていて決して損はないでしょう。

それでは解説です。


1 観察法においては,文字により記録したデータが主たる分析対象となるので,写真や音声などは,分析対象とはならない。

これは間違いです。

この選択肢は

●●は〇〇だが,●●は〇〇ではない

という文章です。

これが本当に正しい文章なら

観察法においては,写真や音声などは,分析対象とはならない。

でよいはずです。

おそらく今の国試なら,このように出題されるでしょう。

今年度の学習部屋ではほとんど書かなかったのですが,

いわゆる

人は嘘をつく時,饒舌になる

という解答テクニックです。

饒舌になった部分は,

文字により記録したデータが主たる分析対象となるので,

の部分です。

いずれにしても,写真や音声は重要な分析対象です。

今の国試問題は,だんだん短くなっていることもあり,饒舌に語ることはできなくくなってきていますが,覚えておきましょう。


2 観察法においては,マジックミラー(ワンウェイミラー)を使った観察を行ってはならない。

これも間違いです。

解答テクニック

言い切り表現に正解少なし

の文章です。

言い切りの部分は,「行ってはならない」です。

大きなお世話です。そう思いませんか?

マジックミラーを使って観察をしていることを告げないのであれば不適切ですが,倫理上の配慮がなされていれば不適切ではありません。


3 参与観察と非参与観察の違いは,観察に当たって,調査者が観察対象者に具体的な指示を出すか出さないかである。

これも間違いです。

これは解答テクニックが使えません。

参与観察と非参与観察は,しっかり覚えておかなければならないものです。何度も出題されています。

参与観察は,調査者が調査対象者と一緒に生活などを共にしながら観察する方法です。

非参与観察は,調査対象にはかかわらないで観察する方法です。

指示があるかないかではありません。


4 観察中にメモをするなどして蓄積されるフィールドノーツは,非参与観察では大いに活用してよいが,参与観察では使用しない方が望ましい。

これも間違いです。

望ましい,望ましくない,は正解になりにくいものです。最近は試験委員もそれがわかってきているのか,表現をそろえて出題するようになってきています。そうすると解答テクニック的に解けなくなるのです。

フィールドノーツは,記録です。参与観察でも,調査対象者に配慮すれば,使用するのは不適切なことはありません。


5 参与観察における調査者の立場は,観察に徹する「完全な観察者」と参加を重視する「完全な参加者」との間で行き来することがある。

これが正解です。

これも今年度の学習部屋ではあまり書きませんでしたが,

解答テクニック

あいまい表現に正解多し

です。

参与観察は先述のように,調査対象者と生活などを共にしながら観察する方法です。場面によって,調査者の立場は変わります。当然ですね。


<今日の一言>

第30回・問題89は,今日の問題と同じように解答テクニックで解ける選択肢で構成された問題です。

質問紙の作成に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。
1 「糖尿病予防のために食事や運動に気を付けていますか」というように,複数の事柄は一つの質問文で尋ねる方が望ましい。
2 前の質問の回答が次の質問の回答に影響を与えることを促すような質問の順番にすることが望ましい。
3 「家事は一般的に夫婦で平等に分担すべきですか」という質問文では,回答者が自分の家庭でそうすべきだと考えているかどうかは分からない。
4 意識調査の質問では,回答を明確にするために「どちらともいえない」という選択肢を設けてはならない。
5 調査票のレイアウトや色を工夫することは,回答をゆがめることになるので行うべきではない。

選択肢1と2は,「望ましい」。
選択肢3は,「あいまい表現に正解多し」。
選択肢4と5は,「言い切り表現に正解少なし」

この問題は,もともとそれほど難易度が高い問題ではありません。

しかし,こんな問題でも国試会場の独特な雰囲気の中では,正しく問題文が読めなくなってしまい,間違います。それは合格をつかみ取るには,避けたいことです。

こんなタイプの問題が出題されたら,「チームfukufuku21が言ってたものだ」と思いましょう。このことを思い出すことができたあなたは,落ち着きを取り戻しているはずです。


<おまけ>

国試が近づいてきた今は,緊張感が高まっているか,開き直っているか,どちらかでしょう。

もっと早くから勉強していればよかった,と後悔している人もいるでしょう。

否が応でもその日はやってきます。

せっかく受験するなら,陰鬱な気持ちで会場に向かうのではなく,心晴れやかに向かってほしいと思います。

周りにいる人はみんな勉強しているように思います。
7日間で合格できるといった本を買って勉強する人もいるかもしれません。
しかし,今新しい参考書などを買うのは絶対にNGです。

人がどうであれ,自分は自分。

国試会場に向かう電車の中では,おそらく参考書を一生懸命に読んでいる人もいるでしょう。
会場について,席に座ったら,隣の人は参考書にびっちりマーカーが引かれている参考書を開いていて,すごい!! と思ったりもするでしょう。

参考書にびっとりマーカーを引いている人は,大事なポイントが分かっていない人が多いです。マーカーを引くことで満足してしまっています。

人がどうであれ,自分は自分。

今の国試は,努力は絶対に裏切らないものになっています。

その理由・・・

問題の文字数が短くなっているため,言い回しで引っ掛けられることが少ないからです。

知識がそのまま得点になりやすいのです。

逆に勉強不足の人は全然得点できないということになります。

今までの努力はとても貴重です。

そんなあなたが輝くための舞台は用意されています。
素敵なステージで最高のパフォーマンスを発揮してくださいね。


昨年はうっかりして,試験当日の記事がコメントを入力できるようにしてしまいましたが,今年はコメント欄は開きません。

一方的な情報提供で申し訳なく思っていますが,それがチームfukufuku21のスタイルです。

双方向のコミュニケーションではありませんが,国試当日までより上質な情報を提供していきます。ぜひこの学習部屋にお越しください。

わからない時は,3か4をマークする

といった一般的なことは言いません。

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