2019年1月8日火曜日

標本調査の徹底理解(3/4)

今回は,標本調査の3回目です。

標本調査は,第23回,第25回,第29回,第30回に出題されています。

今更ですが,この4回の出題のうち,着目すべき並びは,第25回と第29回です。

第29回を受験する時,過去3年間の過去問は,第26・27・28回となります。

過去3回の過去問題を中心に勉強した人は,標本調査の問題を目にすることなく国試に臨むことになります。

これで分かるように,基礎力をつけるのは,参考書です。

実践力をつけるのが,過去問ということになります。

過去3年間の過去問を解くことの意味は,国試問題に慣れることです。

数年前までは,勘を養うことで解ける問題は数多くあったので,過去3年間の過去問に取り組む意味は今よりも高かったのですが,それでも国試問題に慣れるという意味は色あせることはありません。

かし間違ってほしくはないのは,過去3年間の過去問をいくら完璧に覚えたとしても,出題基準に示された内容はカバーしないので,国試で合格点に達するのは難しいということです。

基礎力をつけるのは参考書です。第32回国試以降を受験される方は,しっかり心に留めていただきたいと思います。

それでは,今日の問題です。

第29回・問題86 量的調査における標本抽出に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選びなさい。

1 単純無作為抽出法は,集団の規模にかかわらず作業時間が節約できる効率的な抽出法である。

2 系統抽出法では,抽出台帳に何らかの規則性がある場合,標本に偏りが生じる危険がある。

3 標本抽出では,男女別や年齢別の割合など,あらかじめ分かっている母集団の特性を利用してはならない。

4 用いる尺度の問題から測定上の誤差が生じることを標本誤差という。

5 機縁法は確率標本抽出の一種である。


第23回・第25回の国試と重なっている内容もありますが,そこに少し上乗せされています。

それでは解説です。


1 単純無作為抽出法は,集団の規模にかかわらず作業時間が節約できる効率的な抽出法である。

これは間違いです。

内容はさておき,「集団の規模にかかわらず」というところが余分だという感じがするかもしれません。

そこで正解ではないと思えそうですが,本当の間違いはそこにはありません。


「作業時間が節約できる効率的な抽出法」という部分が間違っています。

単純無作為抽出法は,集団の規模が小さくても手間がかかる抽出法です。

手間がかかっても最も抽出精度の高い方法です。集団の規模に応じて手間がかかるので,大きな集団には向かない抽出法です。


2 系統抽出法では,抽出台帳に何らかの規則性がある場合,標本に偏りが生じる危険がある。

これが正解です。

系統抽出法は,旧カリ時代も含めて,出題されたのはこの時が初めてです。

とは言っても,参考書には,カリキュラムが変わった時からずっと掲載されていたものです。

参考書で基礎力をつけていた人は知っていたはすです。

系統抽出法とは,最初に抽出するものだけ乱数表などを使って抽出し,そのあとは等間隔に抽出していくものです。

例えば













と並んでいて,最初に抽出するものを4番目として,そのあと4つごとに抽出したすれば,限りなく,「妹」「妹」「妹」「妹」・・・と抽出してしまうことがあり得ます。

知識がない場合は,無理せず,▲をつけておきます。


3 標本抽出では,男女別や年齢別の割合など,あらかじめ分かっている母集団の特性を利用してはならない。

これは間違いです。

内容はさておき,この科目では「●●ならない」といった表現がみられます。多くの場合は正解になりません。

話を戻しますが,男女別や年齢別の割合など,あらかじめ分かっている母集団の特性を利用して,抽出する「層化抽出法」というやり方があります。


4 用いる尺度の問題から測定上の誤差が生じることを標本誤差という。

これも間違いです。

標本誤差は,母集団の性質とのずれをいいます。標本調査を行う限り,標本誤差は生じます。

ご記入などの測定上の誤差は,測定誤差といいます。全数調査でも標本誤差でも測定誤差は生じます。


5 機縁法は確率標本抽出の一種である。

これも間違いです。

機縁法もこの時が初めての出題です。

機縁法は,有意抽出,つまり非確率抽出です。

機縁という言葉から分かるように,人づてに調査対象者を増やす方法です。

分からない場合は,無理せず▲をつけます。


▲をつけたのは

系統抽出法では,抽出台帳に何らかの規則性がある場合,標本に偏りが生じる危険がある。

機縁法は確率標本抽出の一種である。

の2つです。


系統抽出法では,抽出台帳に何らかの規則性がある場合,標本に偏りが生じる危険がある。

これは最近多用されなくなってきていますが,「あいまい表現に正解多し」です。

機縁法は確率標本抽出の一種である。

これは,「確率標本抽出」に着目すると,セットになるものとして「非確率標本抽出」があります。セット入れ替え作問法が使われている可能性があります。

答えに皆目見当がつかなかった場合は,2つを対比して,正解確率が高いものを選びます。

ということで,選択肢2ということになります。



<今日の一言>

点数が伸びない人の傾向として,難しい問題に出会った場合,焦ってしまうことがあるように思います。

国試会場で焦らないということはとても難しいことですが,どれだけ冷静になって問題に向き合うことができるかが,重要に感じています。

今日の問題のように,分からない問題があった場合は,焦ることなく,▲をつけます。
そのうえで答えを検討します。

ただし,後で考えようとしてはいけません。

その時に考えて必ず答えを出します。


時間がなくなったときに答えられなくなってしまいますし,マークがずれる可能性があるからです。

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